第3章 星の刀(短刀 星海宗助)
遅れて申し訳ありません。
まさかのPCが壊れるというアクシデントが発生してしまいようやく直ったので投稿いたしました。
また前回までに評価やブックマークをしていただきありがとうございます。
頑張って参りますのでよろしくお願い致します。
一月前にお酒を領主様に取られた俺はもう少し美味しくしようと改良しながらもあの作りかけの刀を作り上げた。
季節は今は7月に当たる、夏と秋に冬への蓄えをする準備をしたかったのでいい具合に終わっただろう。
作り終えた刀は短刀と大太刀、鞘は朱と蒼で対になるようにして鍔もよく似ているが中の模様は鍔を重ねると繋がり同じ形のものになるようにした。
他にもいろいろと対になるようにしてあるが細かく言っても皆さんもどこの部分がどうなっているとか興味ないと思われるのでここでやめておきます。
この二振りはお互いが対になっている刀であると分かっていただければ俺は満足です。
そして、このことを村長とおゆき、太郎に伝えると何故か村の者が全員で見に来た。
どうも俺がこんなに時間をかけているのも珍しく、どんなすごい刀なのかと見に来たらしい。
が、残念だが普通の刀だ。
「また、とんでもないの作ったんじゃのう…」
「宗助、なんかこの刀の刃光ってるぞ」
「綺麗…お星さまみたい…」
…まぁ珍しいと言えば隕石を使ったぐらいだろう。
以前に内緒で拝借した隕石を混ぜるのはスカイツリーに隕石で作られた刀が展示されていたことを思い出し、何より面白そうだと作ったが、意外と上手くいった。勿論およだの爺さんに怒られた…まぁ、危険なところに行くなという説教だったのでまだ軽いが。
処理としては柔らかい隕鉄を取り除いて石鉄を取り出し、金槌で少しずつ砕いて粉にする。
実はこの作業に時間がかかった、隕石はどうやらギベオン隕石だったようなのだ。
ギベオン隕石の石鉄はダイヤモンドカッターでなければ切断できない程に固い。
なのでこの石を砕くのに大半の時間を使った。
砂鉄に砕いた隕石の粉を入れて溶かしながら混ぜる、しかしこの作業にて俺は大きなドジをやらかした。
最初は様子見で短刀の量で作り、次に少し多めに量を増やし脇差を作ろうとしたところ。
転んでしまい持っていた砂鉄の中に全部ぶちまけたのだ。
俺は慌てて隕石の粉末を取り出そうとしたが、悲しいことに粉は砂鉄の中に綺麗に広がっていて、回収不可となった。
そうこの事件からあの大太刀が出来たのである。
もう仕方ないと開き直りその時持っていた砂鉄を全部使って、作ったということだ。
が、作ったところで大きな問題が出来た。
大きすぎてこの大太刀を振るえないのだ。
「短刀はいいとして、こいつの貰い手を探さないとなぁ…太郎いるか?」
「ごめんよ宗助…確かに俺なら持てるかもしれないけど…俺が使うの槍だから…」
「知ってる、聞いてみただけだ」
太郎は村一番の長身だ。現代で言えば190はあるだろう。力も強いので渡すのもいいかと思ったが太郎は刀よりも狩猟用の槍を好んでいる。
いつか太郎の大きさに合う槍を作ってやろうと考えてはいるがどうせなら特別なものをやりたいものだ。
「仕方ないこの家で飾るか…」
「えっ、こんなにきれいなのに飾るだけなの?」
「宗助…断った俺が言うのもなんだが、もったいないぞ」
大太刀をこのままこの家に置いてやるのもいいが刀として生まれたのならば武士の手に渡って大事に使われて欲しいのは俺の親心みたいなものだ。が、こんなに大きい刀を使える奴はそういないだろう。
短刀は村の強いやつに渡してもいいし、村長から商人に渡して貰うのもいい。いや、村長の知り合いに武士がいたからそこにお嫁に出すのもいいかもなぁ。
「…宗助、お前月ヶ原様にこれ言ったんじゃろうな?」
「?、刀を製作中とは言ったぞ」
「違う、出来た事とこの刀に作った《材料》じゃ
言わねばまた来るぞ、義晴様はお前に興味を示しとる。あの鍔の刀も酒も持って行ったのがその証拠じゃ」
村長の言葉に太郎とおゆきも頷く、俺は変わり者の若と思っているが違うらしい。
俺が知っている月ヶ原義晴はこの清条の国の領主の息子であり次期領主。
見た目十五歳の俺より三つほど年が上で太郎ほどではないが背も高い、顔はイケメンで村の者にも好かれている。
端からみてもいい人物だろう。珍しい物を集める趣味があるのだろうか俺の作った物を持っていくしな。
「宗ちゃん…月ヶ原義晴様はね、物に執着はない人よ」
「ん?」
「位とかも気にしないからよく農民に混じって稲刈りとか収穫をしてはいたが、物を欲しがったりすることは無かったそうなんだ、生まれてから一度もな。」
太郎とおゆきが真剣な顔で、どこか表情を強張らせている。
俺は何故かわからないが背筋を冷たい汗が通る。何だか嫌な予感がする。
「義晴様は今まで父君の義虎様から様々なものをもらったが何一つ興味を示さなかったんじゃ。行動は奇抜な事は多かったがの
しかしお前の作ったあの刀を持っておるのを見た時、儂はおどろいたぞ…あの物に執着の無い義晴様が楽しそうに刀を見ていたのだからな」
あの刀…月ヶ原義晴が《刃龍》と名付けた刀だ。
だがあの刀は失敗作だ。どこを気にいったのかさっぱりわからない。
何より…
「楽しそうだなぁ…!俺も混ぜてくれ」
「「「(ビクゥ!!!)」」」
ここにその本人がいるのかが分からない…。仕事はどうした。
…そしてあの忍者もいる。忍者なら忍べよ。
「よう宗助!刀が出来たと聞いて来たぞ!早速見せてくれ。」
「出来たのは三日程前なのですが…」
「ん?それはお前の作品が楽しみでな、忍を付けて出来たら知らせるようにしていたのだ。」
おい、忍者をそんな私情で使うなよ。隣の忍者…三九郎さん見ろ、目が死んでるぞ。よく見たら泣いてるじゃねぇか。
村長達はいきなり現れた話の本人に驚いているが…話を聞かれていたかもしれないなぁ…。
とりあえず逃がそう。
「村長、もう日が落ち始めている村に帰った方がいい。月ヶ原様は「義晴だ」つき「義晴」……義晴様はいかがなされますか?客室ならありますが布団はいいとは言えませぬ…なので本日はお帰りになったほ「なんだ客室があるのではないか!!問題ない!野戦の時は木の下で寝るときがあるからな固い床には慣れている!!」…わかりました用意致します。」
俺が遠回しに逃げるように言えば村長はすぐに二人を連れて村へ戻った。
急に名前を呼び、名前を呼ばせる義晴様を泊まらせることになったが刀を見せるだけだ。
問題は無いだろうし初めての客人だ、もてなすことを楽しもう。
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もてなすことを楽しもうとは言ったが食事の段階で俺はやらかした。
「美味い!!こんな料理は初めてだ!!なぁ三九郎!!」
「…このような食感、味は初めてにございます」
そりゃあ揚げ物は初めて食べたんだもの。
そう、俺はやっぱ天ぷらだろうと思ったが、卵はこの時代では高級で食べないので野菜の素揚げと白米、味噌汁を用意したが二人が食べ始めてから気づいた。
この時代まだ揚げ物がなかったと。
俺は菜の花を油にして普通に使っていたがこの時代は食品を油で揚げることはない。
油で揚げる際に二人が刀を構えて警戒する姿を見た時に気づくべきだった。
揚げる音が大きかったかと呑気なことを考えていたがあれは油の音に驚いていたのだと。
「揚げるという方法がこんなに美味いとはな…!!三九郎、帰ったら早速作らせるぞ!」
「御意、天野殿…よければ油の製造方法を教えていただきたいのですが…」
「三九郎さん、宗助で構いません。えと…後で作り方を書いたものがあるので写されてゆかれますか?」
「感謝する」
流石に油で揚げるのはまずかったかなぁ…。
次は気を付けよう…。
悩む俺を置いて二人はすぐにすべての皿の中身を綺麗に平らげた。
義晴様は満腹になったのか腹を摩っている…それはそうだろう。俺の分の素揚げも食べて、米と味噌汁を三杯もおかわりしたのだから。
三九郎さんは何だか恥ずかしそうに腹を摩る。まだ腹が減っているかと聞けば逆に満杯で忍としては食べすぎてしまったと少し反省していたらしい。ちなみに三九郎さんも共に食べていたのは俺が勝手に用意してしまったことで、義晴様に共に食べろと命令されたのだ。
「さて、腹を満たしたのだから早速目的の刀を見せてくれ」
「わかりました。少し時間がかかりますのでお待ちください」
「?、分かったぞ」
義晴様が首を傾げるが仕方ないことなのだ、あれを運ぶのに時間がかかるのだから。
アトリエに向かい出来た短刀と大太刀を持ち出してすぐに居間へ向かう。
そう馬鹿でかい大太刀を少し引き擦りながら。
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宗助が居間から出た後の居間では義晴と三九郎が座ったままで話していた。
「時間がかかるとはどういうことだ刀を持ってくるだけだろう」
「おそらく大きい太刀を運んでいるのではないかと…あれは途中までしか見ておりませんがかなりの大きさかと」
「ふむ…しかし、あの揚げた野菜もそうだったが米も味噌汁も美味かったなぁ」
義晴は先ほど食べた夕食を思い出して思わずまた腹を撫でる。
胃は満杯のため食べる気にはなれないが、また食べたいと思っていた。
「しかし益々気に入った、絶対に外には出すなよ。
宗助は俺のにする。俺が飼っていると知れればそうそう手を出されんだろうさ」
「…ひどい言い方をされる、素直に他の国にやりたくないと言えばよろしいでしょう。」
義晴は鼻を鳴らして笑うと刃龍を腰から外して鍔を見る。
鍔の龍は目を開き義晴を見ていた。しかし、その手は今まで触れなかった中心…刀身に手をかざしている。
「そう警戒するな刃龍、お主の父親には手を出さぬよ
だが宗助を外の奴等が狙うのは確かだろうなぁ…守るためにここに宗助を縛り付けねばならない
そのためには…」
カタカタと動く刃龍は鍔だけではなくガチャガチャと刀自体を動かした。鍔の龍の目は鋭く睨みつけて中心の刀身を握っている。
まるで手を出すなと牽制するように。
「大丈夫だって、この山から出にくくしてやろうと思ったが、すでにここに引き籠っているからなぁ…宗助は絶対に俺専属の職人にすると嫌がるだろうし…どうすればいいのか実のところ俺はまだ考えてないのさ」
「…父親思いの子供のようで」
「娘も父親が好きみたいだからな、おそらく今運んでいるのも…って、あいつ遅いな」
義晴が刃龍を手にしたまま立ち上がり、三九郎が居間から出ようとすると奇妙な音に気づき二人は止まる。
ズリズリと引き擦る音に宗助が来たかと思えば大きな音と共に倒れる音がした。その際に聞いた小さな宗助のうめき声に二人は居間を飛び出した。
「「宗助!?」」
二人は居間から出れば…そこには大きな刀に潰されている宗助の姿があった。
二人は慌てて宗助を救出して居間に入れたのだった。
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「いやぁ…面目ない」
「肝を冷やさせるな…にしてもやけにでかい刀だな」
「作った本人が潰されるほどに」
宗助を救出した義晴と三九郎は宗助を潰していた大太刀を見て驚いた。
その大きさもさることながら宗助の持つ短刀と対になる刀装は美しい。
「では見させてもらうぞ」
宗助が返事をする前に義晴は床に置いた大太刀を抜いた。
そして突然掴んでいた柄を思わず手から離すが、三九郎がすぐさま受け止めた。
「ちょ重っ、い…若?」
三九郎は義晴を呼ぶがその目線は大太刀から動かない。彼は何があったのかと大太刀を見て、柄を取り落としそうになるのを耐えた。
義晴が見る先には刀の形をした星があったのだ。
銀色の刀身は美しく、部屋を照らす炎の光に照らされ反射する刃はきらきらと自ら光る星のようであった。
鞘の黒味がかった紺色がまるで夜の色にて眩い星を封じていたかのようである。
「美しい…美しいぞ宗助!!まるで星を間近で見ているようだ…!」
「そんな大袈裟な…」
「大袈裟ではない!!俺はこんなに美しい刀を見たことはない!!是非欲しいぞこの刀…っ!?」
義晴は大太刀を持とうとしたが大太刀の重さに持ち上げようと踏ん張っていた腰を落としてしまう。宗助はそんな義晴を見て首を横に振った。
「残念ですが、義晴様とはいえこいつを持ち上げられないのであれば差し上げることは出来ません…俺はこの大太刀を振るうことができる方にこの大太刀を託します。」
「むむむ…持ち上げられぬのであれば仕方ない…今回は諦めるとする、が短刀は貰うぞ。
こんなに美しい大太刀の兄弟なのだからな」
宗助の前にあった短刀を掴んで懐に入れてしまう義晴を見た宗助は諦めたように肩を落とす。
その姿を見た三九郎は労わる様に背中を撫でたのであった。そして、呆れたような目で持ち主を見る刃龍の姿もあったのである。
三つの呆れた目を気にせず義晴は満足そうに笑うのであった。
その夜、客間に通された義晴は編み込まれた布の敷布団と試作品の畳の枕と麻で編んだ掛布団の寝具で眠っていたが、目に光が入りその眩さに思わず目を覚ます。
が、わずかに覗く障子の戸の隙間から見える景色は暗く月の光が入りこんでいるだけであり義晴は眉を顰める。
「なんだまだ夜か…?」
義晴は寝ぼけていた目ですぐそばに置いてあった短刀を見ると僅かに鞘から抜けて刃が見える。
僅かに見える刃に光が当たり反射した光は何故か義晴にあたりまだら模様の光を作っていた。
その光は義晴の顔や体を照らす、彼を起こしたのはこの光であった。
「刀…?」
それはほんの小さな好奇心だった。この刀を抜いたらこの光はどうなるのだろう。
義晴は好奇心から寝ぼけた目で刀を掴み鞘から抜いた。
その時、義晴の完全に目は覚めた。刀から放たれた眩い光によって。
眩い光に目眩ませて短刀を離し、仰向けに倒れてしまうがすぐに視界は戻る。
そして視力の戻った目で見えたのは星空だった。
「何っ!?」
義晴は起き上がり上を見る。
家財や戸板が存在するので部屋の中であると把握するが上を向けばまるで屋根を取り外したかのような満天の星空がそこにはあった。
義晴はゆっくりと先ほど手にした短刀の方へ向けば月の光を受けて美しい光を放っていた。
またゆっくりとした動作で短刀に四つん這いに歩み寄ると先ほどのように顔や体にまばらな光が当たる。
義晴は短刀を鞘に戻したり、出したりと繰り返す。その動きに合わせ天井に星空が消えては現れた。
義晴は確信した、この星空はこの短刀が作り出したものなのだと。
「なんてものを作るのだあいつは…」
月の光を受けることで刃が反射する。その反射された光は天井に当たり星空を作っていたのだ。
「くくく…くははははは…!!」
「若、どうしたので…若?」
「ははははっ…!!やはり睨んだ通りよ!この短刀も素晴らしかった!!宗助が作るものはこの世のものではない!」
義晴が短刀を抜くと天井に星空が現れる。初めて天井の星空をみた三九郎は言葉を失った。
三九郎は星空に魅了されると共に顔が青くなる。それは義晴の顔が楽しげに歪み、目を爛々とさせていたからだ。
「(初めてだ、この方がここまで《もの》に感情を露わにするとは…)」
「三九郎決めたぞ。俺は天下を取ったあと、あいつに作らせる」
「…自分の刀をですか?」
「違う!!自由にだ!あいつが作りたいものを作らせるのさ、馬鹿げたことと笑われようとそれはこの国の歴史を変える!!この国に新しい風を吹かせるのだ!源平合戦の《鋤奈田 藤次》のようにな!!!」
《鋤奈田 藤次》の名に三九郎は思わず顔を強張らせた。
「源氏の武将において最強の名を欲しいままにし、その後将軍へと上り詰めた者…宗助が同等とお考えですか?」
「見よこの星空を!刀一本で作り出したのだぞ!?このような刀を作る男を歴史の影に埋らせるなど愚かなことよ!!あいつはこの国に降りてきた《神の国の者》だ!」
「またも鋤奈田藤次の呼び名を使われるのか…しかし、この技術や様々な分野での幅広い知識。確かに素晴らしいものです…彼の畑や楚那村の畑は異常な成長と実りと豊かさがあります。彼の知識があればこの国も豊かにはなるでしょう」
義晴は短刀を手に立ち上がるとバンッと音をさせて戸板を開く、その顔はやる気に満ち溢れ、爛々と輝いていた。
「刃龍、水精酒、光輝く短刀と大太刀…たったこの4つでここまでの奇跡を起こしたのだぞ?
あいつの作品は日ノ本にとどまることは無い!!もし今の時代に評価されずとも、遠くの世には最高の職人として名をはせておるわ
俺はその作品をすべて見たい!できるならば所持したいのだ!」
「だから彼の作品を欲するのですか?」
「あぁ、だが宗助にも職人の思いがあるのだろう…あの大太刀のようにな
三九郎、あの大太刀に見合う者を探せ」
「作品が行く先まで見たいと…?」
「当たり前だ、宗助の作品をどこの馬の骨に渡すか。三下の大名や武士のもとに渡るなど宝の価値が無くなる」
三九郎はどこまでも無茶を言うと溜息をつくが、ここまで執着を見せるのも珍しいと感心もしていた。
宗助の作品によって見えて、生まれた主の執着心はこれからも膨らむであろうと。
「そうだ、この刀に名前を付けてやらないとな。そうだな…星の、川、泉、空…なんかいまいちだな」
「最後に宗助の名前を入れては如何でしょう?」
「おぉ、それはいい!あの名刀と誇り高い三日月宗近も三条宗近の名があるからな!あとはその前に入れる名だな…
そうだ、星の海、《星海宗助》としよう!早速宗助を叩き起こして銘を」
「やめてあげてください」
三九郎が朝まで待てと説得する中、宗助は…
夢の中にいた。
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宗助は気が付くと見たことのない少年が目の前で頭を下げていた。
美しい銀髪に赤い着物を着た美しい顔の少年だ。
その少年の後ろには同じ銀髪に紺色の着物を着た大きな体の青年が泣きそうな顔で少年を見ている。
「父上、早くに父上の元を離れることをお許しください。新たな主 月ヶ原義晴公の元で刀としての役目を全う致しまする
まだ名を与えられておらぬ弟よ、兄らしいことをしてやれずに済まない。しかし義晴公は父上の元をよく訪れるようだ、おそらくまた会えるだろう。
どうかお前がよき主に出会えることを祈っているぞ」
「兄上…」
「では行って参りまする」
少年はにこりと笑ってもう一度頭を下げた。
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「宗助起きろ!!朝だ!!!」
「若!!」
宗助は布団をひっくり返されて目を覚ました。
布団を持っていた義晴は布団を部屋の隅に投げて短刀を宗助の前に掲げる。
「宗助、早速で悪いが銘を刻んでくれ。この短刀の名は《星海宗助》だ」
「星海…」
「まだこいつ寝ぼけておるな、よし頭をはたくか」
「おやめください」
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天野宗助Wiki 関連作品
星刀剣シリーズ
短刀 星海宗助
天野宗助が生み出した刀剣。
隕石を使った星刀剣シリーズの一つ。
補足:星を使ったと記録されているため20〇〇年に没後450年を記念した大規模な調査が行われた際に他の星刀剣シリーズと共に材質を調べるとギベオンが含まれていたことから真の星の刀として注目を集める。
始めに作られた星刀剣シリーズであり、一番初めに名前が付いた。
月の光を当てると星を浮かび上がらせるという不思議な力を持つ。
ある年に星海宗助を見せて自慢していた月ヶ原義晴はある海軍の武将から北斗七星があると言われ、他にも昴星などの方角を示す星が見つかったことから天野宗助は星空を正確にこの刀に映したと評し、後日、褒美と酒を天野宗助に送ったという。
義晴の部下 三九郎の手記によると最初は弟刀の流星宗助を欲しがっていたが持てなかったのでやめて代わりに星海宗助を譲って貰ったという。
また流星宗助の行方に己の手がかかるものを所望していたという記載がある。
Wikiの方であの刀の名前が先に出ていますけれど次回は違います。伏線みたいなものだと思って下さい。
目次欄に名前が出た際にあの作品の話かと思っていただけたり、楽しんで頂けるとと嬉しいです。