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閑話 不思議ミステリー【戦国一奇才な職人 天野宗助の作品達】



毎週火曜日の夜19:00に放送される番組。

【不思議ミステリー】は世界の不思議な現象や事件をドラマ形式で紹介する人気番組である。


今夜は戦国時代のドラマには必ず名前だけでも出てくる職人 天野宗助の作品の起こした不思議な事件を紹介するのだ。


時間になり、チャンネルを回せば、番組が始まる。








≪今夜の不思議ミステリーは戦国一の奇才な職人こと天野宗助の作品達が起こした、あまり知られていない事件の数々を有名俳優、子役、芸人、声優のあの人がドラマで演じる超スペシャル回!天野宗助の作品達は一体何をしたのか!


現代で子供がお留守番中に強盗が!しかし家の中に侍!?


明治時代、婚約破棄されたある令嬢…そんな令嬢の危機に現れたのは絶世の美男子!?


ある日、子供が山で迷子になった、迎えに来たのは鬼だった!?


嫁いだ家でひどい目にあった娘、そんな娘を助けたのは…狸達?≫


≪今夜の不思議ミステリー!!戦国一奇才な職人 天野宗助の作品達≫




タイトルが流れスタジオに出演する芸能人達がそれぞれがカメラの向こうの視聴者達に挨拶をするように手を振る。

そして司会の二人にカメラが向けられると二人はお辞儀をして紹介テロップが下に添えられた。


≪司会者 大山 幸次≫

「さぁ今日も始まりました、今夜の不思議ミステリー」


≪助手アナウンサー 野山 美代子≫

「今夜はあの天野宗助の作品達が起こした戦国時代以降の事件を超豪華キャストにより再現を致します!」



二人の進行の言葉に出演者達は拍手をする。テロップから歴史好きタレント、大河ドラマ経験俳優などの天野宗助に関して多少の差はあれど知識のある面々が前の列に並ぶ。

その中の一人に大山は話しかけた。


「さぁ、番組レギュラーの歴史大好き芸人な宇崎さんは今回は解説役ですよ」


≪歴史大好き芸人  金剛操山(こんごうそうざん) 宇崎 昌平≫

「よろしくお願いします!今日めっちゃ楽しみにしてたんですよ!!あの天野宗助の作品ですからね!」


ワクワクとこらえられないように笑顔で話す宇崎に同じく解説役として出演する歴史専門の教授も同感だと頷いた。


≪汐永大学教授 笹本 亮太朗≫

「我々も戦国時代以降では時たま彼の作品の名が出ると、今度は何をしたのかとワクワクしながら調べますよ。最近では隕石から作られた『星海宗助』が月ヶ原義晴の玄孫に今でいうプラネタリウムのようなことをして天文学の勉強させていたと明らかになったんです」


笹本からの情報にスタジオの面々は驚きと感嘆の声が上がる中で宇崎は「ほら!これが天野宗助の作品達の面白い所!」と興奮したように話し出す。

そんな宇崎を見て、大山は微笑ましそうに優しく笑った


「今のもそうですけど!他にもすごい事してるんですよ!」


早く見たい!と子供の様に笑う宇崎にディレクター達も流れ的にそろそろだと大山にGOサインを送ると大山は頷いた。


「なら早速行きましょう!まずは現代にて起きた事件です、子供達が留守番中になんと家の中に強盗が侵入してきました…が、強盗が見たのは子供達だけではなかったんです」




≪平成○○年8月。東京都内のある一軒家に住む、五反田さん家の小学5年生のかいとくんはその日二歳下の妹 るりちゃんとかいとくんの友人であるりゅうくんと一緒に夏休みの宿題をしていた≫


「かいとー、母さんスーパーに買い物に出かけてくるからお留守番お願いねー、ピンポンなっても出ちゃダメよー!」

「はーい」

「俺もいるから大丈夫ですよー」

「りゅうくんもお願い~!暑いからエアコンつけてね~!アイスも食べていいから~!」


子供達の紹介テロップが入り、かいとくんを演じるのが今人気の子役である太良内 心(たらうち こころ)君であるためスタジオはおぉ!と声が上がっている。


子供達は机を囲んでそれぞれ宿題をしており、その様子を見ていた母親が買い物に出ると声をかけて家を出た。

その様子を遠くから見ていた不審な男が現れる。


≪母親が夕飯の買い物の為スーパーに買い物に出かけて子供達だけで留守番になり、数分経った時だった。…家の中から物音がしたのだ≫


突然、がたごとと物音がしてかいとくんとりゅうくんは顔を宿題から上げて顔を見合わせる。

妹のるりちゃんも音が聞こえたのか首を傾げた。


「なんの音?」

「物音…って感じだよな」

「お外からしなかったよ」


≪三人はまたも物音がすると隠れるように身をかがめて廊下を歩き、音がする部屋の襖を少し開けてこっそりと物音がする部屋をのぞくと…小さくガラスが割られ開けられた窓と部屋の棚を漁る見知らぬ男がそこにいた…強盗だ≫


恐る恐ると音がした部屋をのぞく三人、部屋の中の棚を漁る怪しい男がいて顔を見合わせている。


≪強盗だと分かった三人は静かに距離を取ろうと部屋から離れるが…≫


るりちゃんが飾られていた絵の額縁にあたり、絵が落ちてしまう。


「あ!」

「バカ!」


≪るりちゃんが絵にあたって絵を落としてしまい、大きな音がしたため気づいた強盗が部屋から飛び出してきて子供達の存在に気付いてしまった。しかも最悪なことに強盗の手にはナイフが握られていたのだ≫


「ガキがいたのか!」


大きな音に強盗が部屋から飛び出してきたため、三人は慌てて逃げ出した。

かいとくんとりゅうくんはるりちゃんの手を引き逃げるが、大人の男にかなうはずなくどこかの部屋の中に追いつめられる。


≪三人はすぐに部屋に追いつめられてしまい絶対絶命のピンチ、しかしここで三人を救うものが現れる≫


「このガキ共をなんとかしないとな」

「いやっ、怖い!」

「るりちゃん、後ろに!」

「来るな!!」


必死にるりちゃんを後ろに匿おうとするりゅうくんと、果敢にも二人の前に立ち守ろうとするかいとくん。

そんなかいとくんに強盗はあざ笑うが、その強盗の首筋に後ろから刃が当てられ、肩を掴まれた。


「貴様、ここは五反田家と知っての狼藉か?」


≪突然現れた強盗よりも大きな体の男。鎧を着ており、何より目につくのはきらめく刃を持つ大きな刀であった、刀を持つ銀髪の男が強盗の首に刃を当てていたのだ≫


ここでワイプの中で宇崎が「はぁ!?」という顔をしており、その様子に大山はにやりと笑う。

何故ならこの侍を演じるのは宇崎の相方で、テロップにも《金剛操山 利木(りぼく)》と書かれていたからだ。


突然の相方の登場に驚く宇崎に他のタレントもあらっ!という顔で宇崎の方を見ていた。

そんな騒がしいワイプの画面を他所に侍はかいとに優しい笑みを向ける。


≪この侍を見たかいとくんはなぜか助かったと安堵の息をついた、まったく知らない男なのにだ≫


「かいと坊ちゃん、るりのお姫さんを連れて居間の電話から警察に通報をしてきてください、俺はこれをすぐに縛り上げますからね」


子供達に優しい笑みを向けながらも刃を当てつつ強盗を後ろに下がらせて子供達から距離を離す鎧姿の男。

強盗の顔は真っ青でナイフを握る手には力が入ってないのか何度かぐらつかせるように動かすと床に落しながら侍を振り払い逃げる。


しかし、鎧姿の男はそのまま大太刀を振り上げ、強盗を追いかけていった。


「なんで、かいととるりちゃんの名前知って」

「いこう、りゅう」


≪かいとくんはりゅうくんとるりちゃんの腕を引き、強盗のいる部屋から鎧姿の男に言われた通り、居間に向かい電話をかける≫


電話をかける最中、強盗が必死に鎧姿の男から家の中で逃げ惑い、子供達のいる部屋に向かおうとするも何故かたどり着けず何処かの部屋に追いつめられ、最後は鎧姿の男に刀を振り下ろされた所で場面が変わる。



≪その後、通報を受けて警察が駆けつけると…そこには簀巻きにされた強盗が、部屋の中央で震えていたのだ≫

≪警察を見るなり泣きながら自首をし、その後、買い物から帰ってきた母親も事件を聞き子供達の無事に安堵した≫


「母さん、俺らを侍の兄ちゃんが助けてくれたんだ」


≪強盗も侍が刀を向けてきたと証言し、子供達も口をそろえて侍がいたと話す光景に警察も母親も首を傾げる中で隣の家に住むかいとくんの祖父が騒ぎを聞いてやってきて、事情を聴くと祖父は笑ってかいとくんを祖父の家へ連れていった≫


かいとくんの祖父がからからと笑いながらかいとくんを家の一室へ連れてきた。

そこには大きな刀がかけられていて、かいとくんは目を大きく見開いた。


≪そこにはあの侍が持っていた刀と同じ刀があった、なぜか鞘が抜かれていたその刀はキラキラとした刃がとても美しく、かいとくんには刀に星が閉じ込められているようにも見えた≫


「あれはお前のご先祖様の侍が持っておった刀なんじゃ」


《この刀の名前は、『流星宗助』…かの有名な月ヶ原義晴の家臣として有名な武将、五反田黄十郎の愛刀として知られる刀である》


≪実はかいとくんの家はその五反田黄十郎を先祖に持つ家で、その末裔であるかいとくんの祖父が五反田 黄十郎の愛刀である『流星宗助』を所持していたのだ≫


≪『流星宗助』は五反田黄十郎の愛刀でその大きさや隕石から作られた特徴が有名な刀。切れ味が抜群で熊や大岩を一刀両断した逸話を持つ刀である。のにも関わらず五反田黄十郎の子供が遊んで刃に触れたが、全く傷つかなかったという逸話もある不思議な刀であった≫


「侍?あんな大きいのを持ってたの?」

「あれは『流星宗助』という刀でな、星から作られておるんじゃよ…この刀はご先祖様が大事にしていた刀で今もこの家の事を守ってくれているんじゃよ」


空の星?と聞いたかいとくんに祖父は微笑みながら頷き、流星宗助を鞘に戻すと優しく撫でた。


「優しい刀でなぁ……子供が好きなんじゃ。そうだ、きっとお前たちの危険に気づいて、守りに行ってくれたんだな」


≪『流星宗助』はかいとくん達の危機に駆け付けたのだという祖父、その言葉にあの侍が『流星宗助』なのだ、とかいとくんはそう思った≫


「そっか、助けてくれてありがとう」


かいとくんの言葉に反応するように鍔がキラリと光り、画面はスタジオに戻る。

「ここでVTR終了!」というテロップと共に、番組おなじみのジングルが流れる。


出演者達が拍手する姿に大山はニコニコと見ながら口を開いた。


「さぁ、いかがでしたか?これが『流星宗助』の現代で起きた話ですね」

「すいません、すごいいい話なんですけどぉ…『流星宗助』を演じてるのって…」

「はい、宇崎さんの相方の利木さんです!」


宇崎は「やっぱりかい!!」と絶叫しスタジオは笑いに包まれる。

画面下には映像に出た『流星宗助』姿での利木がピースする画像と「相方には内緒にしてました♡ by利木」というテロップが流れる。


「でも大きい人ですから、鎧姿が似合いますよねぇ」

「あの『流星宗助』は優しそうでいいですよ」

「あいつ、教えてくれへんかった!!俺が一番『星刀剣シリーズ』好きなの知ってるのに!」


またも現れた『流星宗助』姿の利木が大太刀を担いだ画像と共に「ええサプライズやろ by利木」とテロップが流れる。

くすくすと笑う大山は助手の野山に目をやると彼女は頷き補足を入れる。


「えー、ちなみにこの『流星宗助』なのですが、実は他にも子供を守ったという逸話が多くあり、そのうちの一つにある年の五反田家の当主が間違った道に進みかけた際に夢に現れて性根を叩きなおした、という逸話もあったりと五反田家に尽くす刀だと言われています」


スタジオの観覧席の客達のへぇ~という声が響く中で、相方のサプライズから立ち直った宇崎はそうそうと頷きながらさらに補足する。


「江戸の後期に、五反田家の娘さんがある男と婚姻されそうになったんですよ!その男は隠れて悪い事してるやつで娘さんはそれを知って婚姻を嫌がるんですけど、家族は男の外面が良かったことから信じてくれなかったんです」


それでどうなったんだと他のゲストが聞けば宇崎は楽し気に笑いながら続きを話した。


「そこで!流星宗助が悪い男と娘さんの間に割り込むように飛んできて、床にぐさっ!!っと刺さるんですよ!それを見た娘さんが『流星が反対してるからこの婚姻は駄目だ!』って言って、五反田家もその婚姻に難色を示し始めて…で、調べたら男の罪状が出てきて縁談が破談になるんですよ!」

「え、刀が飛んできたってこと!?」

「そうなんです!幽霊より物騒ですよねぇ!」


スタジオは笑いに包まれる。

画面では宇崎が語る場面をアニメーションで視聴者へ分かりやすく説明されおり、ぐさりと男と娘の間に割り込むように刺さる大きな刀を見て、娘さんが「流星が反対してる!」と言っている場面がイラストになっていた。


「その話もすきなんですよ、だって『流星宗助』が反対してるってだけで、すぐに相手に疑心を持つんですよ?五反田家に尽くしてきたからこそ、流星宗助への信頼が厚いエピソードです」


わかりますわぁ~!と宇崎と笹本は二人で話す様子に大山含めスタジオは苦笑いだがADからそろそろ次に進めてほしいとカンペを出され野山に目配せするとこほんと咳ばらいをして話し合う二人を止めた。



「さて次にいきましょう、次のお話は明治時代のあるご令嬢がパーティで婚約破棄をされてしまいます、しかしご令嬢を辱めるためと大勢の場で行われたことにある作品が怒り、活躍します」




≪明治の〇〇年の秋、ある大きな家の生まれである紗雪は婚約者にパーティに誘われて楽しみに向かっていた。しかしそのパーティで彼女は涙を流すことになる≫

≪パーティに出席していた友人と歓談を楽しんでいた時婚約者である伯野は突然見知らぬ女性と壇上にあがり紗雪に向かい叫んだ≫


紗雪のテロップには今、放送中の朝ドラ女優の西牧恵子(にしまきけいこ)が演じていると出ている。


「紗雪!俺はこの啓子と結婚する!!お前とは婚約破棄だ!!」

「…突然、何を言うのですか」

「お前みたいな静かでつまらぬ女よりも啓子の方が美しいからな!お前よりも啓子がいい女なのは見ればわかるだろう!いつも地味な色の着物で顔がよくないお前はこの俺と釣り合わないんだ!」


その言葉に彼女の友人が一瞬で顔を怒りの顔に変え伯野に怒鳴り紗雪と伯野の前に立つ。

美しい顔を能面のように表情がないがその額には血管が浮き出て怒りに震えているのがわかる。


「お黙りなさい!」


≪とんでもない事をいう伯野に紗雪が何か言う前に彼女の友人が怒りをあらわにして伯野の前に立つ、そして紗雪の友人達は彼女を囲み抱きしめ伯野と啓子を睨みつけた≫


ここでワイプの中の宇崎が目を見開かせて驚く顔をし、笹本は楽し気にVTRを見ている。

それは彼女の友人達に対してだ。


「なんてこと言うの!!」

「この勘違い男!!あんたが紗雪に釣り合わないのよ!!」

「そこのドブス、連れて帰りなさいな」

「そこの女性の方もこの場でそんな恥じらいのない服を着て略奪愛を誇るなど、程度がしれますわ」


桜、向日葵、竜胆、梅の簪をつけた紗雪の友人達は伯野を囲み守るように立つ姿は美しく。

その顔はそれぞれ怒りの色に染まるがまるでそんなものは気にならぬ程に絵になる姿であった。


美しい女性達に怒鳴られ伯野は後ずさりをするが啓子は梅の簪をつけた紗雪の友人の言葉に言い返そうと口を開こうとするがその場に新緑の葉が舞い落ちる。


≪混沌としだしたこの場に新緑の葉が落ちると紗雪はその葉に目を見開き驚いた、なぜならその葉をよく知っているからだ≫


「ドレスを着ても女性は強い。どの時代も、女性は強いものだな……。だが、我が家の姫を貶されては、俺も黙ってはおれぬぞ」


美しい美声と共に増える舞い落ちる新緑の葉。

何故かその場にいる人間は動けず、また喋れずにいる静かな場で布のこすれる音がその場に響く。


≪不思議な何かにより辺りから音が消えるとそれは新緑の葉を紗雪にまとわせて現れた≫


「我が家自慢の姫ぞ、器量もいいうちの姫よりもそんな見目だけのがらんどうに惹かれるとは見る目がないな」


新緑の葉が紗雪の周りに集まると葉の中から手が現れて優しく紗雪の肩に触れると手、腕、体と形が現れる。


≪新緑の中から現れたのは平安の貴族のような着物をきた大変見目の麗しい男であり、現れた男は紗雪に優しく微笑むと伯野へ冷たい目を向けた≫

≪その冷たい目ですら美しい姿に会場の女性達は虜になる中で現れた男は紗雪の手を取る≫


「姫さんのような女性はそういないというのに…見せかけの女に魅入られた哀れな男よ、お前に姫さんはもったいない」

「青葉…、どうしてここに」


青葉と呼ばれた男はにこりとまた紗雪に微笑むと「姫さんが泣いてる気がしたから」と優しい手付きで紗雪の頬に流れる涙を袖で拭う。

ワイプ画面にて宇崎は来たー!と言わんばかりの顔で声を出さないように笑う。


「うちの大事な姫さんが男に泣かされているのだ、俺が動くに決まっているだろう」


青葉が優しく紗雪の涙を袖で拭い、優しい笑みを彼女へ見せた。

青葉を演じているのが今一番の人気俳優であり、美しい顔で有名な乃小宮 将星(のこみや しょうせい)であることからスタジオの女性陣から黄色い悲鳴があがる。


《突然の美男子の登場に伯野は驚くも、部外者が立ち居るなやら、変な格好のやつがと叫ぶも青葉は歯にもかけない。それどころか、隣にいる啓子は青葉の美貌に甘い声で声をかけるので顔をしかめていた》


「ずいぶん節操がないようだな……姫さん、もうこんな宴から帰ろう。家でゆっくりと茶でもどうだい?」

「そうね、青葉のお茶を飲みたいわ…ここにいたくない」

「ふふっ、兎の姉さんから練り切りを貰ったからそれを茶菓子にしような」

「おい!話を無視するな!!そもそも誰なんだお前は!」


和やかな二人の会話に水を差した伯野に青葉は扇を仰ぎ、紗雪の肩を抱く。

一つ一つの仕草が美しいため、スタジオにいる女性達は黄色い歓声と感嘆の息が上げていた。


「ただの掛け軸さ、俺はずっと姫さんのことを見守ってきたんだから、姫さんがいい女だってのは知っている」


《そう、この青葉の正体は…天野宗助が描いた作品の一つ、『掛け軸 渓谷の窓』》

《この作品は始まりの三作と呼ばれる三つの掛け軸の一つであり、青々とした美しい渓谷が描かれた掛け軸である》

《青葉は渓谷の主であり、雲江家にて多くの手助けをしているとされている掛け軸なのだ》


掛け軸の説明で画面に三つ現れた掛け軸は、二羽の兎が月を背にススキの原っぱで餅をついている掛け軸。

日の当たっているのであろう暖かな縁側で老婆が優しく微笑んでいる掛け軸。

そして、青々とした渓谷の山が描かれている掛け軸。


この中で渓谷の掛け軸が中央で大きく表示されると会場に場面は戻り、青葉が映された。


「雲江家の姫さんを傷つけようなんざ、俺が許すわけないのさ」

「ば、馬鹿なことを言うな!お前が掛け軸など……!」

「掛け軸なのは本当だとも」

「うるさい!変な格好のやつが!!」


なんとも子供じみた言葉に呆れる紗雪であるが、青葉はふむと一度考えるとパチリと手に持つ扇子を閉じた。

すると青葉をまた新緑の葉が包み込む。


「格好の問題ならば、それを変えればいいことだな」


そう言って、新緑の葉が消えると青葉の恰好は平安貴族のような着物から黒い背広姿に髪を後ろに流した姿となる。

黒いスーツには緑の線が入っており、おしゃれだ。


その姿はまさに美男子であり、周囲の女性達は黄色い歓声と感嘆の息を漏らした。


「これならば文句はあるまい、そうだろう?」

「ぐ、ぬぬぬ…」

「では、失礼するよ」


青葉はそういうと紗雪を抱き上げる、そうお姫様だっこである。

ここでワイプ画面の女性人達はまたも黄色い歓声をあげた。


突然の事に目をぱちくりとさせる紗雪を抱きながら、悠々とした歩みで会場を出ようとする青葉に啓子が声をかける。

が、眼中にないと青葉は無視をして会場を出ると紗雪を抱き上げたまま、つま先でトントンと地面を叩くと二人の目の前に新録の葉が集まり、馬が現れる。


「帰るよ、姫さん」


青葉はそう言ってそのまま馬に軽々と乗ると馬を走らせた。

その後ろ姿を伯野と啓子は唖然と見送るのであった。




ここでカメラはスタジオに戻った。

ぱちぱちと拍手が響く中で女性達はかっこよすぎだと感想が飛び交う。

その感想に男性タレントも頷く中で宇崎が笑いながら「これ、公式設定です」といった。


「渓谷の窓の青葉は昔からめっちゃ男前とか美男子って言われてるんですわ!ほんまにいろんなところで言われてて、歌舞伎の舞台でも男前がやるのがルールになってるくらいに顔がいいって言われてるんです」


宇崎の補足にスタジオからへぇー…と声が漏れる。

そこに青葉のいい男エピソードはまだあると笹本は続く。


「この青葉という男、本当に“いい男”なんですよ」

「歴史学者からもお墨付きですか」

「やってきた行動もイケメンですね。実はこれと似た事が江戸の時代にも起きましてねぇ、その時は雲江の次男がこっぴどく振られたんです…、その振られ方がその次男を貶すものだったので青葉が動いたんです」


話を聞いていた女タレントは「どの時代でもそんなひどい人がいるのねぇ」と零す。その隣にいたタレントやアイドルも同感だと頷いた。


「で、青葉がしたのは…その次男を徹底的に磨き上げて町一番の男前にした、ということでしてねぇ。外面だけでなく内面も磨き上げた性格のいいイケメン、…で、他にも様々な技量を身に着けさせたのだからお勤めの仕事もどんどんと昇格して次男は高給取りになったんです」

「ちなむと元々次男はそんな顔は悪くなかった…ちょっと大人しい性格であったくらいらしいですわ」

「ダイヤの原石を磨き上げて、さらに高級なアクセサリーにまで加工してるみたい…そこまでいくと…」


アイドルの例えに宇崎は「青葉ならそれくらいやる」と青葉の献身は相当のものだと頷いた。


「面白いのここからなんですよ、そんな男前でさらに性格も器量も良く、仕事も上手くいっている男を周りの女性は放っておくはずがないですよね?で、振った相手も勿論声をかけてくるんですけども既に嫁がいるんですよ…その次男の嫁はある老中から「君を気に入った!うちの孫娘を嫁にどうだ!」と声をかけられて嫁いで来た嫁なんですよ、孫娘の方もいい男の嫁になれるならと喜んできたそうです」

「自分の孫をあげていいって言われるくらいって相当惚れこむようないい男なんですね!私もそんな人に会いたいですよ!私も孫を紹介したい!」


司会者の大山がそういえばスタジオは笑いにつつまれる。

しかし、老中に気に入られるほどの男に成長した次男を磨いたのは青葉の功績だろう。


「で、結果的にその“こっぴどく振った女”は……逃した魚が大きすぎたと、後悔したわけです」

「一人しか不幸にならないええ話!」

「一人は不幸になってるよ!元凶だからいいんだけど!」


スタジオはまたも笑いにつつまれる。

大山も笑うがADからのカンペにそろそろ次のVTRに進んでほしいと指示があり、大山は「さて」と声を出して空気を変える。



「次のお話はある日、子供のメグくんが山に遊びに行って迷子になってしまいました…夜も更けてしまった山の中でメグくんを迎えに来たある作品がいたんです」



《平成○○年の夏、10歳の少年、メグくんは夏休みの自由研究に夏の山で採れるものをテーマにしようと一人で山に入ったのでした》


太陽がサンサンと照らし、日差しがあつい山の中に麦わら帽子をかぶり、虫取り網と籠を手にした少年が山の中を歩いている。

しかも、切り開かれた山道ではなく、草が生い茂る道を行くので見てる側は危なかっしいと思わず思ってしまう。


麦わら帽子の下に隠れていた顔が見えると少年役は現在人気の昼ドラ『竜胆のお柴』にて愛助を演じている子役、田原国彦(たはらくにひこ)君だ。


「自由研究で、みんなをびっくり、させてやる…!」


そう言って坂道を上るメグくん。

しかし、彼から少し離れた所に『熊、出没注意!』と書かれた看板が写り、ワイプの中の女タレントが思わず悲鳴が出そうになったのか口を手で覆って押さえるが、心配そうな顔をしているのが見える。


《メグくんは自由研究に使えそうな虫を捕まえていたのだが…気づけば夕方で日が落ちかけていた。急いで家に帰らないと母親に怒られると帰ろうとするが、…道の無い茂みを歩いて来たために何処から来たのか分からなくなっていた》


薄暗い森の中でメグくんがキョロキョロと辺りを見回しながら立ち尽くしている。


「やばい…どっから来たのかわかんなくなっちゃった、……ひっ!!」


そう零すメグくんの上でガサガサと木が揺れる。

メグくんは驚いて悲鳴をあげると、走り出してしまった。


《日が暮れてきたためにどんどんと暗くなる山の中、メグくんは不安になって木々を揺らす風の音にも怖くなり、とりあえず走ってしまった》


ワイプの中で男性タレントが「ダメダメダメ…!」と首を小さく横に振っており、山で遭難した時にやってはいけないと言っていた。


《闇雲に走るメグくんだったが木の根元に足をひっかけて転んでしまう、その時に足をひねってしまって動けなくなってしまった…動けなくなり、日が完全に沈んだ山の中でメグくんは泣きながら木の根元に座り込んでいた》

《月明りも届きにくい森の中で暗闇と遠くから聞こえる何かが草木をかき分ける音が聞こえて、メグくんは恐怖から縮こまる》


「ぐすっ…おうち帰りたい…」


涙をぬぐいながら膝を丸めて木の根元に座るメグくん。

そんなメグくんに猛スピードで近づく何か。

その何かはメグくんの前に降り立った。


《怯えるメグくんの前に何かが降りてきた。それは黒い肌と黒い髪をした人だった》


長い黒髪に褐色な肌の長身な男はよくみると二本の角が生えており、手にはこん棒を持っていた。

テロップには演じた人間が同じく『竜胆のお柴』にて佐藤勘之助を演じた若手俳優の近藤 硫二(こうどう りゅうじ)であるため、同じドラマにて共演する役者が揃ったのでワイプ内でタレントが喜んでいる。



「(むすっとした顔をしている)」

「え、だ、誰…いたっ!?」


ゆっくりと拳骨をした男にメグくんは目をぱちくりとさせていた。

痛がるメグくんに男はため息をつくと片手でメグくんを抱き上げる。


《男はメグくんに拳骨をすると片手で抱き上げて、森の中を走り出した。抱えられたことでメグくんは男の頭に角が生えていることに気付いた》


「角…鬼、なの?」


鬼は何も言わず、ただ森の中を走る。

どこ連れて行くのだろうと不安そうなメグくんだが、森の中から出て山を降りていることに気付くとこの鬼は山の中から連れ出してくれたのだと理解した。


「メグー!!どこにいったのー!!」

「!、おかあさーん!!」


遠くから母の声が聞こえ、メグくんは母を呼ぶ。

鬼はメグくんを抱えたままメグくんの母の前にどすんと音を立てて降り立った。


《鬼は山を抜けて走ると、村の中をかけていく…メグくんが母の声を聞いて呼ぶと鬼はその声の先に向かっていった》

《鬼はメグくんを抱えたままメグくんの母の前に現れた》


「メグくん!?」

「おがあざん…!!」


鬼がメグくんを下ろすと母に飛び込むメグくんに、鬼はやれやれという顔で見ていた。

メグくんの母だけでなく祖父や近所の人達も集まる中で傍にいる鬼に気付いた祖父は鬼に深々と頭を下げ、近所の人々も「ありがたや」と手を合わせた。


「黒鬼様…!孫を見つけて下さったのですね…!本当に、ありがとうございます…!」

「黒鬼様がメグくんを連れてきてくれたということは…まさか、山にいたのか!」

「そりゃあ見つからん訳だ…」

「じいちゃん、この鬼さんを知ってるの?」


《鬼に村の人間は頭を下げ、メグくんの祖父は深々と頭を下げて感謝した。その姿にメグくんはみんながこの鬼を知っているのかと聞くと、祖父はこの村で一番大きな屋敷を指差した》


メグくんは祖父が指さした家はこの村に古くからある家だ。


「あの家にはな、鬼瓦があるんだ…黒鬼様は何百年もこの村を守ってくれてる鬼瓦の鬼様なんだよ」



《そう、この鬼の正体は…楚那村の村長の家に代々受け継がれている鬼瓦》

《この鬼瓦は天野宗助が作った最初の作品と言われている作品であり、この村を守ってきた鬼である》


黒鬼から鬼瓦へと場面は変わり、屋根の上にある鬼瓦、古い本の写真などの資料が並ぶ。

中には水彩画で描かれた黒い鬼の絵もあった。


「お前を黒鬼様が助けてくれたんだよ」

「(口をへの字にして、手を動かして何かを言っている)」

「…あ!?コラァ、メグ!!山の立ち入り禁止の所に入ったらダメだろうが!!!」


メグくんは「なんで分かるの!?」と言うが、メグくんの祖父は「黒鬼様がそう言っておるんじゃ!!」と怒った。


「この村に長くいるとね、鬼様の言う事が分かるわよ…で、捻ったのはどっちの足なの?」

「…右、それも言ってたの?」

「黒鬼様が熊のうろついている奥の方にいて、足をひねったのか動かなかったって言ってるわよ」


黒鬼はやれやれといった顔をするとメグくんの眉間に指をぐっと押し当てるとまた飛び去った。


「え、なに…?」

「…“わんぱくもいい加減にしろ”だってさ」

「う…」

「しばらくお外遊び禁止よ、怪我が治るまで駄目」

「そんなぁ…」


肩を落とすメグくんと周りの大人達は反省しなさいと叱ったりする様子を屋根の上から黒鬼は見守りながら、苦笑しているのであった。





スタジオに場面は戻り、タレント達が拍手している中で大山が「いやぁ~」と言いながら話し始めた。


「かっこいい黒鬼の話でしたねぇ、宇崎さん、いかがでしたか?」

「鬼瓦の話が出るのは珍しいんで、わくわくしてました!」

「え、珍しいんですか?」

「鬼瓦の黒鬼に関する記述はあんまりないんですよ、天野宗助を引き取った楚那村の村長の家にある記録に一番多く書かれてるくらいっすねぇ」


スタジオは「へぇ~」と観覧している客人の声が上がる中で笹本も頷いていた。

野山も「宇崎さんの言う通りなんです」と補足情報を伝え始める。


「この鬼瓦は代々楚那村の村長の家に引き継がれており、鬼瓦の黒鬼との交流もその子孫の家族がメインでしているのだそうです、そのため必然的に鬼瓦の黒鬼についても村長の家の者が多い、ということなんです」

「で、この村長さんが実は神社の家系の人なんですわ!だから霊感が強くて見える人やったっていうことで、天野宗助の特異な力も最初に認識してたのもこの村長なんです」

「実は、その関連でこの鬼が実は元は良くないものだった事が近年で判明していましてね」


笹本がそういうと画面はイラストに変わる。

村の中が荒廃しており、畑の中に黒い靄のような何かが立っている。


「当時の村長の記録に、元々は黒い靄の姿をした何かという記載がありまして、その靄が村の…そうですね、大地のエネルギーっていえばわかりやすいですかね?そのエネルギーを吸い取って、緑や作物を枯らしていたそうです、これが見えるから村長に任命されたと記載もありますね」

「それが、黒い鬼になったんですか?」

「えぇ、村長は村の未来ある若者を外に逃がして、滅びてしまう村でもここで終わりたいという老人や幼すぎて移動が出来ない子供がいる家族のみで暮らしていたんですが…ここで天野宗助が村にやってくるんです」


泣く泣く村を離れる若者と見送る村長達から、老人が小さな子供を連れてきた場面に変わる。

子供はぶかぶかで奇抜な格好をしており、怪我をしていたのかボロボロだ。


「天野宗助は当時は恐らく6歳から10歳の間位の年齢で、一人で山の中を歩いていたところを村の者に保護されたんです…その恰好はなんとも不思議な服で、大きさがあっていなかったとか」

「では、村の滅びそうな時に、天野宗助はやって来たということですか?」

「はい、その後は村長が今でいう保護者として村に住まわせたのですが、天野宗助が山で暮らすまで共に住んでいましたね」


天野宗助であろう子供と共にご飯を食べる村長のイラストに画面は変わるが、画面の端には未だに黒い靄がいた。

少々ホラーな演出だが、これは仕様らしく。次の笹本の説明で判明する。


「この黒い靄は天野宗助の傍によくいたそうでしてね、村長は黒い靄が天野宗助に手を出しませんようにと思っていたんですが…ある日、天野宗助が村の家の耐久を気にしだして丈夫な家の建て方を村の大人達に教え始め、その後にその当時から大きかった村長の家に瓦をつけ始めたそうです」

「これ、天野宗助が勝手にやったんですよ、村長は見栄えが良くなったって喜んでますけど」

「勝手に!?一人でやったんですか!?」


宇崎と笹本がうーん…となんともいえない返答をした。

画面では少年が屋根によじ登って瓦を取り付けており、老人が目が飛び出るほどに驚いているイラストが映る。


「多分、地守太郎助が手伝ったんだとは思いますけどねぇ…」

「そこは明確に記載は無いんですよ、でも有力なのは地守太郎助が手伝ったから村長が気づかないうちに出来たんじゃないかって言われてます」

「天野宗助と地守太郎助はこのころから一緒にいますからね…天野宗助のやることをよくついてまわって手伝ってたらしいんで、恐らくこれにも手を貸してますよ」


天野宗助よりも体格がいい少年が瓦を運ぶのを手伝っており、恐らくこの少年が地守太郎助である。

あと、楚那村の雪女と名高い女傑のお雪であろう少女もいる。


「で、瓦をつけた後に鬼瓦の制作をしている天野宗助を黒い靄が見ていて、いきなり話しだすんですよ」

「喋べるんですか!?」

「喋りますね、厄除けに鬼が使われていることに首を傾げているので村長が代わりに天野宗助に聞くんです。で、鬼瓦は鬼が睨むことで厄を退けてくれるものだと天野宗助が言うと、『ならば、その鬼になる』と姿を今の黒鬼の姿に変えたそうです」


黒鬼が黒い鬼に変わり、屋根の上にて村を見守る黒い鬼へイラストが変わる。

スタジオでは「へぇ~」という声が聞こえる中で、宇崎は「だから、天野宗助が一番最初に作った不思議な道具はこの鬼瓦だとされてるんですよ」と補足もいれた。


「元は良くないものでしたが、良い物になった黒い鬼を村長はお酒をお供えしたりなどして供養するようになり、手入れをよくしていました…楚那村の年に一度、この鬼瓦を綺麗に掃除する祭りもここから作られたんです」

「実は前に、ロケでその祭に行かさせてもらったんですわ…黒鬼様もこの目で見られたんです」

「うわぁ、いいなぁ…すごく運がいい!」


宇崎はえへへ…と笑う中で笹本が羨ましいと声を出した。

その時のものであろう写真が出され、鬼瓦を掃除する村人達の手伝いで水を運ぶ宇崎と先程『流星宗助』を演じていた相方の利木の姿を写した写真だ。


「黒鬼様の写真は流石にないんですけど…村長の家の小さい子が色々教えてくれたんですよ、仲良くなったんで」

「相変わらず子供達に好かれますねぇ~」

「えと、昔から面倒をよく見てくれる一番上の兄ちゃんみたいな感じにみんな思ってるらしくて、ある年に授業参観に両親が行けなくなった時に代わりに来たとか言ってましたよ」

「授業参観に!?」


イメージ図です。と書かれたイラストに黒い着物の黒鬼が教室の後ろに立っているというなんとも不思議な図が画面に出た。


「いつもよりちょっと綺麗な黒い着物で教室にいたそうで、ちゃんと授業が終わるまでいたらしいです…それを話してくれた時に「余計な事を言うな」って、その子のほっぺを引っ張りに来て、それで俺ら黒鬼様を見れたんですよ」

「ど、どんな感じでした!?」

「いや、でも…今のVTRみたいな感じでしたよ、イケメンでしたね…こう、褐色のイケメンというか男前というか…なんて言葉が合うのかなぁ~」


宇崎はのけ反る程に言葉を悩む姿に女性陣はそんなにイケメンなの…!?と目が輝く。

笹本はそんな宇崎に理解をするように頷いた。


「天野宗助の作る物の多くはかなりイケメンが多いですし、美女も多いですよ…先ほどの青葉もそうですし、四季の花の簪などは特にこの世の者とは思えない美女がいた、なんてよく書かれてますね、他の簪などもそうですけど」

「美男美女だらけだ…」


宇崎と笹本は確かにその通りだと頷いた。

そんな二人を見ていた大山はカンペで次に進んでという指示が出たので「もっと聞きたいですが…」と前置きをして、次のVTRに進むために話を終わらせる。



「そろそろ次のお話に行きましょう………舞台は昭和の時代。お嫁にいったとある家のお嬢さんが嫁入り先の家にてひどい嫁いびりをされてしまい、泣いていました…そのお嬢さんを助けたのは…三匹の狸達です」





《時は昭和の時代、陸奥川家のご令嬢である陸奥川撫子は14歳という若さで嫁入りをしたのだが…その嫁ぎ先の家にて嫁いびりをされていた》


「撫子さん!!ここが汚れているわよ!!」

「撫子!!嫁にきたらうちの家のために身を粉にして働くのが役目よ!ちんたらしてないで動きな!!」

「おい撫子!酒がないぞ!!」

「撫子!!」

「撫子さん!!」


家中で撫子を呼びまくる人達。

身なりや家の中の物からかなり裕福な家なのに召使はいないのか撫子に命令しているようだった。


そんな中で少々地味な服で水を運び、床の掃除をするまだ幼さが残る娘がいる。

テロップには陸奥川撫子役、東坂凪子(とうさか なぎこ)とあり、三年前に大河ドラマにて幼い頃の黄奈姫を演じた子役の子だ。

あの頃よりも成長し、少々大人っぽさがあるがまだ幼さがあるのはまだ中学生の年だからだろう。

撫子の手はあかぎれであろうか傷ついており、見るからに痛々しい手をしている。


「痛い…」


小さく他の人に聞こえないようにしているのか呟くようにそう零した撫子。


《撫子が嫁いだ白川家は三代ほど前に白川平次郎が所有している銀鉱山で一山当てて築いた家である。しかし、そんな家であるからか家柄にかなり拘り、名家の家の出である撫子を嫁に欲しかったのは撫子の家柄の血を欲しかっただけでその後、撫子をどうしようともいいと思っていた家だった》


撫子は痛々しい手で涙をぬぐっている。

そんな様子を影から何かが見ていた。

金色の目の何かは『コーン』と一鳴きすると消えた。



《翌日、見知らぬ男が白川家を訪れた…男は”南天”と名乗った、撫子の家から届け物を預かったと言って撫子に会いたいと言うが姑はあまり会わせたくないと渡しておくからと言うが、男は引き下がらない》


ワイプの小さな画面の中で宇崎は目を輝かせる。

そんな宇崎を画面の端にして、南天と名乗る男は「本人に会って渡すように言われている」と一点張りだった。

姑はにこやかにしようとしているが、怒りから顔が引き攣っている。


「ですから、撫子さんは今忙しいので、私が代わりに渡すと…」

「忙しいのはお前達がこきつかってるからだろう?」

「…な、なにをいって」

「酒を買いに、わざわざ歩かせて…可哀そうにここからかなり距離があるのになぁ」


男は金色の目を輝かせ、笑う。

そんな男に姑は気味が悪くなったのか一歩下がるが、南天は一歩詰めた。


「そもそも、でかい家の割には人を雇ってないのは…借金があるからだろう?で、見栄えは良くしたいから撫子の嬢ちゃんを家に入れるために結納金を頑張ったみたいだなぁ…で、頑張って嫁に来てもらったのに、金を使わせた嫌がらせにと親族総出で嫁いびり…はっ、やることがみみっちいなぁ?」


けたけたと笑う南天。

どこか見ているこちらまでもがぞくりとする声だ。


《南天と名乗る男はどこで知ったのかわからないが、白川家の事情を知っていた。姑は反論しようにも男の雰囲気が黙らせた》


「…お、帰ったねぇ」

「今、戻りました…お客さんでしょうか?」

「こんにちは、撫子の嬢ちゃん…じゃあ、帰ろうか」

「え?」


酒瓶を抱えて帰ってきた撫子は客人が来ているのなら早めに隠れないとまた叩かれると、足早に去ろうとするが南天が撫子の名前を呼んだ。

南天が撫子の腕を掴むと景色は変わる。


撫子は気づけば、実家の庭にいた。

目をぱちくりとさせる撫子に両親が彼女を抱きしめて、労わるように頭や背を撫でる。

南天が手を離すと交代するようにふわふわの手が傷だらけの手を包んだ。

が、足元から悲鳴が聞こえて撫子は目を丸くさせた。


「いやあああああ!!!撫子お嬢様の手が、白魚のような綺麗な手がこんなに傷だらけに…!!」

「手だけじゃないわ…!お顔もやつれてしまって…!」

「顔色も青く…、あぁっ、お労しいお姿に…!」


《気づけば懐かしい実家の庭にいた撫子の手をふわふわの柔らかい手が包み、撫子の足元で悲鳴をあげていた…それは三匹の雌の狸であった。狸達はボロボロな撫子の姿に悲鳴を上げたのだった》


いやあぁぁぁぁ!!と悲鳴を上げるのは割烹着や着物を着た狸。口を大きく開けて、サイレンのような悲鳴を上げているので少々面白い姿だ。

ワイプの中では可愛らしい狸達に笑みがこぼれている女性タレントが映るのを端に見ながら、狸達の三匹の声が国民的アニメのお母さんキャラな声であるので、SNSでも番組に関する投稿で「声優豪華すぎだろ」と呟かれているのを確認する。


《この狸の正体は…月ヶ原義晴の家臣であり、智将として名高い”陸奥川鼓太郎”の所有していた和箪笥、狸の箪笥である。この作品は同じく月ヶ原義晴の家臣である五反田黄十郎が生活能力が乏しすぎた陸奥川鼓太郎を心配して天野宗助にせめて収納だけでもするようにと箪笥を依頼したことで生まれたという箪笥だ》


画面には箪笥と三匹の狸が一人の男の世話を焼く場面をイラストで説明している。


《三匹の狸の姿で持ち主に献身的に尽くし、三匹の狸達は陸奥川鼓太郎の生活面を支えたとされている》



「撫子お嬢様、今までよく頑張りましたね…さぁさぁ、お風呂を沸かしていますから、まずはあったまりましょうねぇ、その後に軟膏を塗りましょう」

「お松ばぁや…」


「私の弟が作った軟膏ですから、すぐにこの傷は治りますよ…今日はお嬢様の好きな煮物を作りましたから好きなだけ、お腹いっぱい食べてくださいな」

「お竹ばぁや…」


「お風呂に入って、たくさん食べて、そして、たっぷり寝ましょうねぇ。お嬢様の部屋はいつでも戻ってこれるようにと整えていましたからすぐに眠れますよ」

「お梅ばぁや…」


狸達の姿を見て、ゆっくりと膝から崩れ落ちる撫子。

そんな撫子に狸達は傷だらけの手を包み、頬を撫で、頭を撫でて優しい声で語りかける。


《優しく撫子に声をかける狸達に、撫子はずっと張っていた緊張の糸が切れて、涙があふれて出た…白川家にて殴られないようにするために必死だったからだ》


はらはらと涙を流す撫子をお梅と呼ばれた狸が抱きしめながら、ゆっくりと撫子の母親と共に風呂場に連れていく。

その光景を見守っていた南天が人から狐の姿に変わる。

狸の和箪笥といえばの作品にワイプの中で宇崎が「来たー!」と興奮しており、SNSでも歴史オタク達が狐の登場に同様の声を上げている。


《撫子を見送った南天は狐の姿へ変わる、…そう、南天も天野宗助の作品の一つ》

《南天の正体は「狐の薬入れ」、河原家にて木像の「河童横綱」と共に河原家を守ってきた作品である。狐の薬入れは邪気や呪いを払うことが出来たとされるもので、南天と呼ばれる狐が代々の持ち主を守ってきた逸話が多く残る作品》


画面にはイラストで狐が黒い影から持ち主の女性を守る場面が描かれている。

そんな南天は狐の姿で煙管を片手に持ちながら、お松とお竹と呼ばれた狸を見た。


「で、姉上達はあの家の奴らをどうしたい?俺が直接見てもあれは手を出さなくても、勝手に消えそうではあるけどねぇ」

「南天、分かっているでしょう…」

「私達の可愛いお嬢様を傷だらけにしたのよ…許せないわ」


グルルルル…と小さく唸る狸達。

そんな姉の姿に南天は「ですよねー」といった様に肩をすくめ、くるりと煙管を器用に指で回すとにんまりと笑みを浮かべた。この狐の声も有名な声優であるのでいい声である。


「俺らだけじゃ、力が不安だし…丁度あの時期で集まるんだ、兄弟達の力を借りようぜぇ」

「そうね、今回は少々私達も怒り心頭ですので…お力を借りましょうか」

「南天、悪いのだけどお声をかけてきてくれる?」

「いいぜ、撫子の嬢ちゃん…もとい、陸奥川家には皆も協力するだろうしな」


狐がにやりと怪しく笑う。

対して狸達はごぉぉぉ…!と炎を背負い、怒りを静かに滾らせていた。

そんな狸達の姿を見ていた撫子の父親は一番怖い人を怒らせたなという顔をしながらも、ぐっと拳を握り、気合を入れていた。




翌日、とテロップが出る。

どんどんと不躾に門の扉が叩かれ、がちゃがちゃと無理矢理開こうとする白川家の者達がいた。

扉を開けたこの家の使用人が冷たく入るように言うが…白川家の者達が通り過ぎた後ににやりと笑う。


《翌日、白川家の者達が家に押しかけ、使用人が中に入れた…使用人は怪しく笑うとそっと姿を消したのだった》


「おい撫子!!勝手に帰るなんざ非常識だ!早く帰って掃除しろ!!」

「撫子!あんた何をしたのか知らないけど早く帰ってきな!!」

「全く!とんだ女だよ!!家事掃除しか出来ないのにいっちょ前に逃げ足があるなんてね!!」


撫子の姿は見えないのに撫子の名を呼び、堂々と撫子の家で彼女の悪口を言う。

しかし、家の中に入った途端に…扉は大きな音を立てて締められ、ガチャリと外から鍵をかけられる。

異変に気づいた白川家の者達は慌てて扉を開けようとするが、びくともしないどころか…。


「ひ、ひぃぃぃぃ!?」

「な、なんだ!?」


玄関の窓の影に人ではないものの影が映る。

大きな耳や翼に見える影、中には小さなものの集まりに見える影が姿は見えず、影のみ映っている。

大変にホラーな演出で白川家の者達だけではなくとも怖いだろう。


《中に入った白川家を閉じ込めるように扉は締まり、怖がる人間の姿を見るように外から何かが窓に張り付いていた…、この光景に白川家の者達は悲鳴を上げて中に逃げるように駆けこめば…そこには大きな狼が唸り声をあげて待っていた》


ぐるる…と唸る大きな狼。

天野宗助の作品で大きな狼と言えばあの屏風しかない、ワイプの中では宇崎もあの作品であると知っているので「うひひっ」と楽しそうに笑っていた。

リビングの扉も入った途端に閉められてしまったので、玄関にも戻れなくなったので白川家の者達は腰を抜かして怯えるしかない。


「お、狼…!?」

「待っていたぞ、愚か者共め…!!」

「な、なんだここは外にも中にも化け物だらけじゃないか!?」

「ふんっ、その化け物達に今からあんたらは説教されるんだよ!!」


そう言って白川家の者達の前に立つのは狸達。しかし、手にはお玉やめん棒などを手にしていた。

リビングには狼や狸だけでなく、狐や蛙、猿に犬など多彩に集まっていた。


天野宗助の作品の中でも動物系の作品の大集合に歴史オタク達はSNSで大歓喜の声が上がる。


「せ、説教…?」

「そうだよ、撫子お嬢様の旦那さん…あんたはあたしらがみっちり説教だよ!」

「わからせるまで帰さないからねぇ!!」

「覚悟をしなさい!!」


《狸達はそういうと自分の担当をするだろう人間を捕まえて、正座させるとこんこんと説教をしだした…それを隣の部屋から眺めていた撫子は目をぱちくりとさせるが、そんな撫子に赤毛の猫が話しかける》


狸達が撫子の旦那を、姑を狼が、舅は蛙が首根っこを捕まえて説教をはじめ、他の動物達もそれぞれが説教をする中でそっと扉を覗く撫子がいた。

そんな撫子の足元に赤毛の猫がやってきて、隣の部屋に入ると扉を閉めさせた。


「今は奥の部屋にいな、あいつらに顔を見られると良くないぜ」

「ね、猫さん…どうして、みんなはこんなに集まって…」

「この時期は俺らは集まって近況報告をすることにしてるのよ、そこに撫子の嬢ちゃんの事を助けてと妹達が声をかけたのさ」

「でも、それだけで集まるなんて…こんな私を助けるためになんて」

「自分を卑下しないことだ、あんたは妹の可愛いお嬢さんってのもあるが…陸奥川家は親父がお世話になった家だからな、恩返しもあるのさ」


《陸奥川鼓太郎は月ヶ原義晴の家臣であるため、天野宗助とも親交があり、和箪笥が切っ掛けで天野宗助に関しての支援をしていたとされている…その支援の中には遠方から天野宗助を訪ねてきた大名の家との繋ぎや連絡、立ち合いもしていたという記録がある》


陸奥川鼓太郎のやってきたことが紹介されている。

清条国、もとい月ヶ原義晴の家臣の中でも頭脳担当であったという陸奥川鼓太郎は外交でもその力を発揮していたとされ、現代での沖縄から北海道までと正に日本中に散らばった天野宗助の作品達の活躍によって謝礼をしたい、一目お会いしたいと清条国に文を送る大名達の相手をほぼ一人で捌いていたという記録がある。


そのため恩があるというのはそのことだろう。

もし、彼がいなければ天野宗助は突然他国の大名達に押しかけられてしまい、大変なことになっていただろうとされているのだ。


「それに今回は説教し甲斐の有るお馬鹿達だしな、俺らも気合が入るってもんよ」

「説教のし甲斐…」

「おう、旦那の方は狸達がやるとして…姑は狼の妹が根性叩きのめすだろ、蛙の弟が舅は経営者目線での駄目だしがあるそうだから気合入れていたぞ」


猫はからからと笑いながらそう言うが、閉めた扉の向こうからは動物達の怒号が聞こえているのでかなり激しい説教のようだ。

大人しく奥の部屋に引っ込んだ撫子は猫やお菓子の入ったお盆を担いで来た鼠と共にお茶をしていると狐が「終わったぞ」と呼びに来た。


《狐に呼ばれてリビングに戻った撫子の目に並んで正座して、涙でぐしゃぐしゃな白川家の者達が入る…彼らは撫子を見るなり土下座して謝罪をし始めた》


「な、撫子…!俺が不甲斐なくてすまなかった…!!これからは、心を入れ替えてお前の旦那にふさわしくなります!!」

「撫子さん!!私が愚かな女なばかりに貴女にひどいことをして申し訳ございませんでした…!!」

「私達は心も器も何もかも小さいばかりに君にひどい事をしてしまい、申し訳ございません!!」


顔から出るものをたれ流しながら土下座する光景に撫子は一歩後ろへ後ずさる。

この光景にドン引きな撫子だが、狸達はふんっと鼻を鳴らして手に持つお玉やめん棒を手でぱしぱしと音をさせていた。


「二度と馬鹿な事をするんじゃないよ!」

「もししたら説教だけじゃすまないからね!」


狸達がグルルルル…!!と唸れば、白川家の者達はびくっ!と体を跳ねさせて、小さく悲鳴を上げる。

特に撫子の旦那は泣きそうな顔をしているので彼女達の説教が恐ろしく、またよく効いたのだと分かった撫子は少し気合を入れるように静かに一呼吸をすると旦那に紙を見せつけた。


「私、妻を守ってくれない旦那様はいりません。なので離縁してください」

「なっ」

「勿論、そちらの結納金は返金しますし私の家に返金もいらないのでお金のことであーだこーだと言うのはおやめくださいね」

「いや、そうじゃなく!!」

「そちらのご親族の皆様もそういうことなので」

「ちょ、まっ」

「これで話は終わりです…あぁ、離縁の手続きはこちらでしますからお手はおかけしませんわ」

「待ってくれ、撫子ぉ!!」

「では、そういうことでお引き取りを」


撫子がそういえば狼や熊などの大きな動物が待ってましたと白川家の者達を家の外に放り出した。

撫子の旦那であった男は謝罪と許しを請う言葉、そして撫子の名前を叫び続けていたが…使用人が呼んだ警察が来て、彼らを連れて行ったのだった。


《白川家の者達を外に放り出した後、ソファーに撫子は力が抜けたように座れば…彼女の元に狸達がにこやかに駆け寄った》


「お疲れ様でしたねぇ、撫子お嬢様…さっ、あったかいお茶を飲んで休みましょうね」

「おはぎもありますよぉ、甘い物を食べて疲れを取りましょうねぇ」

「今日もゆっくりとお風呂に入って休みましょうね」

「…ありがとう、ばぁや達」


狸達は撫子を労わるとお竹が「そうだわ!」と肉球をぽんっと叩く。


「離縁が終えたなら…うちの姉妹に縁結びの子がいるからいい縁を結びに行きましょうか!」

「そうですねぇ、今度はいい旦那様を見つけましょう!」

「もしくは兄弟に紹介してもらいましょう!南天、良い人がいたら教えて頂戴ね!」

「げぇ!?また俺が見つけてくるのかよ!」

「あんたが一番人探しが上手いじゃないの、美味しいお揚げを作ったげるから頑張りな」


名前を呼ばれた南天は苦い物を食べたかのように顔を歪ませるが狸達はお揚げで釣ろうとしているので南天は「ふざけんなよ、馬鹿姉貴共!!」と怒るも周りの兄弟に宥められるのであった。




場面はスタジオに戻り、拍手するタレント達が映る。

宇崎は最後の南天に「どの時代でも姉の狸に勝てないようだ」と言うと大山がそうなのですか?と返した。


「実は狸達の初代の持ち主である陸奥川鼓太郎のお相手を探したのは狐の南天なんですよ」

「えっ、そうなんですか!」

「えぇ、陸奥川鼓太郎は生活能力がないってのは有名な話なんですけど…それが原因で縁談が結構破談になってますね」

「その生活能力のなさに彼と友人である五反田黄十郎が心配になって天野宗助に棚の制作を依頼したという記録がありますよ…大事なお金や家紋の入った印籠とかもその辺に置きっぱなしにしてたのでせめて仕舞うことをしてくれることを願ったのだとかで」


イラストで部屋がぐちゃぐちゃなことに驚く五反田黄十郎が天野宗助へ棚を制作を依頼する場面が描かれている。

その後、狸達によって綺麗にされていくイラストもあった。


「そんなこともあってか陸奥川鼓太郎は結婚の意欲が低くて狸達が心配になったので南天にお嫁さんになりそうな人を探させたんですよ…その後、良い人と縁がつながって婚姻してますね」

「なるほど、最後のはその事を言ってたんですね」

「南天は作品の中でも自由に行動出来る力を持っていますからそれも買われているようですよ、江戸の時代には持ち主の奥さんにおつかいを頼まれて隣町まで魚を買いに行ってたりしてたので」

「おつかいをさせてたんですか!?」

「させてますねぇ」


笹本がにこやかにそういうとスタジオは驚きの声が上がる。

そんな中で野山が補足する。


「このあと、撫子さんはしっかりと白川家と離縁して、その後再婚しています。再婚後は子宝にも恵まれて三男二女の子をもうけたのだそうです、その子育てにも狸達がしっかりとサポートし、撫子さんは享年93歳まで生きて、子供と孫に囲まれて大往生だったと」

「その時代だと珍しいですね」

「えぇ、その後は長男夫婦の家に所有されているのだとか」


スタジオに「へぇ~」と観客の声が上がる。

狸達もいるから健康には生きたはずだと言った。


「狸達の作る食事は健康的なバランスの良い食事らしいんで、長生きも狸達のいる家だと珍しくはないと思いますわ…江戸の後期に確か百歳を超えた人もいましたし」

「江戸の時代に百は長生きですねぇ!」

「献身的に支えてきた証でもありますよ、その人は最後まで狸の棚に感謝していたと記録もありますね」

「えぇ、話でしょ?」


宇崎がそういえば大山は頷き、他のタレント達も笑みを浮かべた。

大山は狸達だけでなく、他の作品もそうだと番組の締めに入る。


「可愛らしい狸だけでなく、天野宗助の作った作品はずっと人のためと動いています…今もそうです、もしかしたら今も持ち主のためと頑張っているのでしょう…今宵はここまでになりますが、また機会があれば他の作品の事も知りたいですねぇ」


大山がそういって画面の向こうの視聴者に手を振れば、他の出演者も手を振って、番組は終った。









現代編での全ての視点主は博物館で宗助の展示を見てる人物と同一人物です。

軽い設定ですが、視点主はかなりの歴史オタクで特に天野宗助が好きであり、天野宗助関連の展示は必ず遠方でも見に行き、特番は必ず視聴、漫画やドラマにも目を通しています。

とだけ覚えてくれると嬉しいです。


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