第1章 戦国一の職人誕生の始まり
今回から作った作品と主要人物が出てきます。
パラレルワールドの戦国時代にやってきて早五年の月日が経った……。
ここでの年齢が十三歳となってから俺は村……楚那村から離れた場所に家を建てて暮らしている。
******
最初は怪我が治るまでの約束であったため、怪我が治りすぐに村を出て行こうとすると村長の虎八須さんが止めた。
何も知らない子供を放り出す村など滅んじまえと村長としては大変過激な発言をして、元服である十三の年になるまでは許可しないと言われてしまい、村長に逆らえず言うことを聞いて十三の歳になるまで村にいた。
村長だけが村を出ることを止めたのではなく、助けてくれたお爺さんとお婆さん……およだの夫妻が心配して泣きついてきたこともある。村の多くの者も出るには早すぎると止めたことも大きい。
しかし、俺は戦国と聞いてあまりいいイメージが無い。故に俺は山奥にでも家を作って静かに暮らしたいのだ。群雄割拠、弱肉強食……戦に巻き込まれるのは避けたいのが理由でもあるが、何より現代暮らしの俺が戦国の空気になじめないのが大きな理由だ。
とにかく戦に巻き込まれるのは嫌だと伝え、山奥にて暮らすことを虎八須さんに伝えると殴られて反対されたが、どうも俺のことをどこかの領主や大名の息子が戦のせいで家を失い、尚且つ山賊に襲われた子供と思っているらしく、戦に巻き込まれたくないという意志だけは伝わった。
翌日には、ここから少し離れているが廃村になった村を教えられ、そこに住めばいいと提案される。
勿論、俺は虎八須さんに飛びついてその提案を受け入れ、早速その廃村を見に行ったが……
「荒れてますね」
「敵国にやられたそうじゃ。うちの村は月ヶ原様の一族が来てくれたから生き残ったそうじゃがな……もう数十年前も前のことじゃよ」
「……なるほど」
村は焼け跡と刀等の切り傷の出来た建物が倒れていたりとボロボロだった。これは修理のしがいがある村だった。
「儂が言ったのじゃが本当に此処でいいのか?元服に間に合うように村のもんも協力するが……」
「材料を準備していただくだけで十分ですよ」
「村のことを手伝いながらじゃぞ?出来るのか?」
「やらねばならぬのです」
虎八須さんは俺の頭をぐしゃぐしゃに撫でて「分かった」と了承してくれた。
更に翌日から、村の稲刈りやら薪割りをしながら家作りを始めた。材料は村の男衆が協力してくれるとのことで、まずいらない木板と墨をもらって設計図を描いた。
古き良き日本の建物をイメージして作るが、村の家と比べるとだいぶ豪華なつくりになってしまう……。これは俺のイメージが豪華と言うより村の家が貧相なせいで、耐震や衝撃への弱さが怖い。俺はお礼の意味もかねて村の建物の建て替えを行うことにした。
設計図を書きながら村の建築も始めると村長に伝え、まずは倉庫を建てて俺が作ろうとしている丈夫な建物を見てもらう。村の男衆は俺の作業を見て覚え、自分の家の建築を始めた。
俺が村の家に必要と思うものは二つ。
一つ目、家全体の補強。
倉庫の壁をみた村人が壁、柱や天井の丈夫な家を村に広めて村の家を丈夫なつくりにする。
これは早くも成功した。村人も丈夫な家は欲しいのですぐに建築され、多少の危険から身は守れるようになったはずだ。
二つ目、瓦屋根などの防水機能のいい屋根を付ける。
これは俺が建設予定地の畑から粘土を持ってきて粘土瓦を作成して村長の家に勝手につけて見せた。
勿論勝手にするなと怒られたが、家の屋根が立派になったので気に入っているらしく、村の連中に自慢していたのを稲刈り仲間のおゆきと太郎から聞いた。
おゆき達に、あれは雨風がしっかりしのげて丈夫だと伝えると、すぐに村の者が真似して作り方を聞きに来る。
足りなかった分の粘土は村のはずれの地面から拝借して作ったが……意外と広まるのは早かった。
これだけでもかなり補強になるので、お礼代わりになるだろう。
一年半の月日を使い、村全体の建築が終えるころには俺の家の設計も完了しており、とりあえず村の避難場所になれるように当初の計画より少し大きく設計を変更した。
もともとは俺一人で行う家の建築は行う計画だったので、まずは材料から揃えねばと設計の調整のために建築予定地に行けば、なんと村の者達が木材や屋根などの建築材料を用意してそこで待っていたのだ。
どうも設計図を書いていると知っていた村長が、書き始めの頃の夜から俺の目を盗んでは設計図の内容を盗み書きして、村の者達に俺に内緒で作らせていたらしい。村の者達も、俺が村のために建築していたことや稲刈りや薪割りを頑張っているからと作ってくれたそうで……。
俺は泣いた。泣かずにはいられなかった。
村の者達から泣くなと笑われながら、抱き上げられて赤子のようにあやされながらも、俺はその日は声を上げて泣いた。
俺のやったことは無駄ではなかった。自分のためであったが村のためにちゃんとなったのが、それが伝わったことが嬉しかったのだ。
建築を始めると村の者達が色々と生活する上での助言をしてくれ、設計図を修正したり、追加したりとしながらも元服の少し前に家は完成した。
村の者達の協力により、俺が思っていたものよりも素敵な、住み心地の良さそうな家ができたのである。
主な居住区となる大きな母屋は、どこの屋敷かといえるほど立派な玄関だが、足腰の悪いご老人にも優しい低めの段差の階段が隅に設置されている。中は雨が浸水して来ても大丈夫なように床を高くして、居間となる場所には囲炉裏と、少し離れた場所に調理場とかまど、裏口がある。
寝床は木の床だが、いずれ畳を作って置く予定なので少し床が低い。
母屋から外れたところには鍛冶場と俺のこだわりのアトリエがある。ここで色々作る予定だ。
畑は女性達が整備してくれたらしく、すぐに色々植えられる。というよりすでに植えられていた。
何を植えたかと聞けば稲と、俺が食べられると教えた芋である。
おゆきと太郎が毎年、収穫の時は手伝いに来ると約束してくれた。そのときは俺がとっておきの料理を二人にご馳走すると心に決めている。
こうして俺は家を完成させて、日常の必需品をそろえながらも十三になるまで村で過ごした。
*****
十三になり村を出て一人で家に住み始めるが、頻繁に村長やおゆき達が遊びに来たので寂しくはなかった。
最近何故か商人や旅人が村に来始めたらしいが、俺は村の者以外とは関わりたくなかったのであまり村に行かず、山に篭って刀や茶器を作っていた。商人や旅人がいないときはおゆきや太郎が知らせに来てくれるので、その時に山を下りている。
住み始めて分かったが、この山は資源がすごく豊かだった。
砂鉄や鉱石も多く、水は澄んでいる。木々も程よく生い茂るので、動物たちにとっても住み心地がいい。
が、熊や猪の被害がないのは廃村に理由にあるらしく、村が焼かれた際の焦げ臭さがまだ近くの木々に移っているせいで、その匂いが獣を遠ざけているそうだ。
また、この山に隕石が落ちたのも原因らしい。およだの爺さんが幼い頃山に星が落ちたのを見たらしく、
その衝撃で動物たちが逃げたそうだ。
その落ちた場所を聞いて行ってみると大きなクレーターの中に隕石と思われる大きな石があったので、少し拝借したのは爺さんには内緒にしている。
一つ困ったことと言えば、刀や茶器を作り始めると没頭してしまって話を聞かなくなるので、村の者がよく頭を殴ってくることだ。
なんでも大きい声で呼んでも気づかないので頭を殴る方がすぐ気づくと、子供からご老人まで頭を殴る。特に村長の拳が痛くすぐにたん瘤ができる。たん瘤が後ろに二つあったときは寝苦しかったものだ。
半年前に刀を集中して作りたいと前もって言っておいたので今は誰も頭を殴らないが、居間におすそ分けの魚が置かれていたりはしていた。
銘切りまで終えたのでそろそろ柄や鞘の準備でもするかと山の中で柄糸の色に良さそうなものを探しており、山奥に足を延ばす。青もいいが銀も捨てがたい、赤もいいなと頭で色を決めながら歩いていた。
そんなことを考え事をしながら歩いていたからなのか、俺は足元を全く見ていなかった。
「ぐえ」
「ん?」
よそ見をしていた俺の足元から変な感触と声がした気がする、ゆっくりと歩いていた方を振り向けば……
「…………」
侍が倒れていた。
「いぃ!?大丈夫か!?」
明らかに踏んでしまったので安否を確かめるが、息はしている。死んではいない。とどめはさしていないようだ。若い侍であるが、こんな山奥にいるなど遭難でもしたのだろうか。歳は先日十五になった俺よりも年上に見え、背もかなり大きくなかなか整った顔をしている。
俺は踏んでしまった詫びもかねて村まで運び、村長達に侍をお願いした。なんかいい布の着物と袴着てたし会うと絶対面倒くさいだろうしな。なんか村長が叫んでいたが無視して俺は家に帰った。
これでもう会うことはないだろうと心の中で「さらばだ、侍」と別れを告げた。
はずだったのだが……
「お、遅かったな勝手に上がっているぞ」
「…………」
翌日、俺が昼を食べようとアトリエから戻るとその侍は居間に上がり座っていた。
俺は思わず戸を閉め、背を向けて頭を気のせいだと己の頭に暗示をかけてアトリエに足を戻す。
「よし、あの侍は気のせいだ。鞘の装飾を考えよう」
「何をしている、早く入れ」
「ぐえっ」
……俺は気のせいだと思い込もうとした侍の手により家の中に入れられた。侍に首根っこをつままれた俺はまるで猫のようだ。
いつの間に俺お手製の藁座布団を見つけたのかそこに俺を降ろすと、侍はもう一つ見つけてきて俺の目の前に座る。
「お前が俺を助けてくれたんだってな?感謝する」
「頭上げてください……。お侍さま」
「ん?俺を知らぬのか?」
頭を下げる侍に頭を上げてくれと言ったが侍は俺を見て首をかしげていた。
あ、何かまずいことしたか……?どっかの偉い人だったかぁ……。知らないとまずいかなんて誤魔化そう……。
「あー……申し訳ありません。俺は他所から来たものなので、あまり領主様やお侍様の顔を知らぬのです」
「なんと、そうだったか」
嘘はついてない。知らないのは本当だからな。
しかし、ちょいちょい若者と話すような話し方してるなぁ……パラレルワールドであるから文化も少し違うのかもなぁ……。
「まぁ、座って話をしよう!!お前に色々聞きたいことがあるからな」
此処俺ん家。って今は俺が歳が下だからか。農民と同じような位だしなぁ……。これが嫌で村の人以外と話すのもっと嫌になりそう……。
「はぁ……、どのようなことをお尋ねで?」
「まず、お前の名前を聞きたい。お前なんて呼び方はあまり良くないからな」
まぁ確かにな。でも俺は侍さんの名前知らないからね。
「あ、俺は月ヶ原 義晴《ツキガハラ ヨシハル 》だ。で、お前の名前は?」
「……天野 宗助です」
先手を打たれたので名乗り返すと片眉が一瞬ピクリと動いた気がしたが、たぶん気のせいだろう。
ん?待て……月ヶ原?月ヶ原ってこの国を治めてる領主じゃないか!!!俺は急いで頭を下げる。
「りょ、領主様でございましたか……!これはご無礼を致しました……!!」
「よい、頭を上げろ。さて次の質問だ。
天野 宗助、お前があの村の建物の造り方を教えたものだな?」
「(ビクゥッ!!!)」
顔を上げれば、そこにはまるで獲物を見つけた獅子のような目で俺を見ている月ヶ原様がいた。
その目は嘘は許さない、沈黙は許さないと語っている。俺は背中がぐっしょりと汗で濡れるのを感じながら、なんとか返答した。
「そう、です……」
「…………そうか!」
「っ、!」
へらりと笑う月ヶ原様に俺は体の力が抜けて思わず床に手をついて足を崩してしまうが、月ヶ原様が俺の両肩を支えた。しかしこれで俺はこの人から距離を開けれなくなってしまったことにすぐに気づいた。
ゆっくりと前を向けばそこには整った顔の月ヶ原様の笑顔があった。女子であれば嬉しいだろうが、今の俺には悪魔の笑顔だ。
「最後だが、この刀らを作ったのはお前か?」
「はい、そうです……」
「ほう……よくできているな……試し切りいいか?」
俺でですか?と思わず聞かなかった俺を褒めてほしい。
月ヶ原様は俺の返事を待たずに壁に掛けた作ってきた刀の一つ……打刀を持ち出すと調理場においてある薪を宙に投げて刀を振り落とした。
その薪は綺麗に真っ二つに切れている……。よほど腕前がいいのだろう。
月ヶ原様は刀を見てニヤァと、俺にとっては悪い顔をしながらこちらに振り向き歩いてくる。
あぁ、次は俺の番かと覚悟を決めたが、逆にぐしゃぐしゃと頭を撫でられる。何が起きたと目を丸くさせれば月ヶ原様は満足そうに笑っていた。まるで玩具を見つけた子供のような、いややめようこの状況だと玩具は俺のことだ。
「この刀気に入った!貰っていいか?」
「あ、はい、どうぞ・・・」
「うむ!」
しかし素人が作った刀のどこを気に入ったのやら……まぁ命が助かるなら一本くらいいいか。
月ヶ原様はそのあと昼を共に食べて、本当に刀を持って帰られた。
……嵐のような人だった。
月ヶ原様が帰られた後に俺はあの人の相手をしたことで変に疲れたので寝ていたがおゆきと太郎の泣き出す声に飛び起きた。
訳を聞くと月ヶ原様はおゆきと太郎に案内させて来たらしく、戻ってきた月ヶ原様が俺の作った刀を持っていたので二人は俺が斬り殺されたのではと急いで来れば俺が倒れていたので、月ヶ原様を連れてきた己のせいで死んでしまったと泣いていたらしい。
とりあえず二人を泣き止ませた俺は釣った魚を分けてやり、二人を村に帰した。
清浄国、楚那村近辺の道にて……
刀を宗助から貰った月ヶ原義晴は城への帰りの途中に木の陰で休むと、木の根本に黒い影が落ちる。
「三九郎、彼はどうだ?」
「……正体不明にございます。七年前に山賊に襲われたらしく楚那村の村長が保護したとの情報しかございませぬ」
「ほう、何処の国の者かはわからない、か」
「さようです」
月ヶ原義晴は忍……名を三九郎と共に宗助を調べに来ていたのだ。
忍びから報告を聞いた月ヶ原義晴は貰った刀を抜いて製作者である宗助の家を思い出す。
しっかりとした木造の家に、壁にかけられていた刀を。
「木材のみではあるがしっかりとしていた。刀も見たことのない造りのものや面白い刃の刀があったな……ただの武家の落胤が逃げてきたと思ったが何か訳ありか……」
「ほかにも茶器がありました……若、こちらが形を写したものですが……」
「なんだこの妙ちくりんな器は?」
三九郎は宗助が月ヶ原義晴の相手をしている隙にアトリエを調査していた。現物を持っていく訳には行かないため紙に写していたのだが……
そこに描かれていたものは普通の茶器から義晴が見たこともないものまであった。
ちなみに義晴が見たものはマグカップとワンプレートの皿である。
「この蛇みたいなものがくっついている器はなんだ?これで何を飲むのか?こっちは皿か?変なくぼみがあるぞ」
「ほかにも作りかけの刀にやけに大きい刀と短刀がございました。」
「そういえばあの村の娘が今は刀造りに集中していると言っていたな……その二振りという訳か、村の者には嘘を言ってはいない、と……」
三九郎は懐から巻物を取り出すと月ヶ原義晴に渡す。巻物を開けば中には宗助の近辺の関係者と主な一日の行動が書かれていた。
「ふむ。接触しているのは村人のみ……商人や旅人がいない時だけ山から下りて村に来ているな。刀や茶器の材料集めに山を歩いているが、山に引き籠っている……と」
「職人は山に入り何かを作りますが、ここまで引き籠ることはしません。調査を続けたいのですが……」
「許す、いや待て、俺が度々行けば何かわかるかもなぁ!!」
「…………」
三九郎は絶対に訓練をさぼる口実であると察し、口実を与えてしまったと内心愚痴りお腹を摩るのであった。
「それに……宗助は面白そうだからなぁ。知識もあり技術もある。
三九郎、宗助をこの国から逃がすなよ」
「御意。それにしましてもなぜそのような刀を……その刀は普通の刀に見えますが……」
「に見えるが……よく鍔を見ていろ」
宗助から貰った刀の鍔の中には龍がおり、ぐるりと刀を己の体を使って囲い、尾を咥えてしがみついているように見える。中々に凝った作りの鍔である。
月ヶ原義晴は刀を三九郎に構えさせえて鍔をぶつけるように斬りかかる。三九郎は長年月ヶ原義晴に仕えた忍、すぐに主が怪我をしないように態勢を変えた。
「何をなさいますか!?」
「鍔を見ろ」
主人に再度言われ鍔を見た三九郎の目は、信じられないと何度も月ヶ原義晴と鍔に目線を動かす。
月ヶ原義晴は鍔を見て口角が上がるのを抑えられなかった。そして、驚愕し口を開けている三九郎の様子を見てさらにくっくっくっと笑いもこらえきれず口から漏らす。
「どうだ?面白いだろう?」
「面白いも何もこれはありえないことです!!鍔の中の龍が動いているではありませんか!!」
そう月ヶ原義晴が刀を欲した理由はこの鍔にあったのだ。
三九郎が見た時の鍔は、尾を咥えて丸まるように刀にしがみつく龍だった。しかし今の鍔の龍は尾から口を離し、今まさに鍔から飛び出さんと構えているような姿勢を取っている。先ほどと姿が違うのだ。
月ヶ原義晴は刀を鞘に納めると鍔を見て笑みを深める。鞘に入ると鍔の龍は先ほどのように丸まり、目を閉ざして眠りについたのだ。まるで興ざめだと言わんばかりに。
「若はこの鍔についていつ……」
「薪で試し斬りした時だ。俺が最初に見た時は目を閉じて眠っていたが薪を切った時に目を開けてこちらを見ていたからな……俺を見極めてるのかと思ったよ」
「信じられません……しかし、目の前で起こったことが何よりの真実……あの者について調べねばならぬことが増えましたな……」
「だからこの国から逃がすなと言っている。こんな面白い刀を作るんだ。他のも見たい」
「(やれやれ若の面白いもの好きが始まったか……また俺の仕事増えるなぁ……)」
「三九郎、部下に宗助を見張らせて作りかけの刀が出来たら報告しろ。次も見に行くぞ」
「……御意」
鍔を日の光に透かすように見る月ヶ原義晴。
刀を空に掲げて楽しげに笑うその姿は、まるで狩りを楽しむ獅子のようであると三九郎は見張り対象である宗助に心の中で合掌した。
「俺を楽しませろよ、天野宗助」
宗助は知らなかった。組み込み式の鍔失敗したわーと思っていた刀がとんでもない評価を受けてしまっていたことに。
そして少し違うが異世界トリップをしていたことにより、変な能力を身に付けていたことに。
------------------------------------------------
未来_20×△年現在
Wiki 天野 宗助 関連
星落ノ山
天野宗助が活動の中心とした工房がある山。隕石が落下したことから名がついたとされる。(元 火牟呂山)
楚那村から歩いて三十分で山の入口に着くが、工房に行くまでは二時間程時間がかかる。ただしこれは観光用に用意された道の時間であり、天野宗助と関係者は別の裏道を通っていたため約三十分程度の距離であった。(現在は崩落により復旧不可とされている)
元からであったのか、隕石の影響かは不明であるが、資源が豊富であったため天野宗助は作品の製作時に資源に困ることはそう無かったと記録がある。
また、彼と深く親交があった月ヶ原家8代目当主 月ヶ原義晴との出会いはこの山である。
出会った経緯は天野宗助 月ヶ原義晴を参照。
水が澄んで綺麗であったため天野宗助は山の水を使い清酒を造っていたが、月ヶ原義晴によく盗られていたという有名な話がある。
※実は彼が住む数十年に隕石が落下した記録があるが、その遥かに前(現在は平安時代前と推測されている)に巨大な隕石が落下した記録が発見され、星刀剣とよばれる彼の作品はその隕石が使われたのではという説がある。
彼は一般人の皮を被った逸般人である。(大事なことなので二回言いましょう。)
次回から彼の周りがにぎやかになります。天野宗助は静かに暮らせないのである。