表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

第10章 花簪 四季姫 竜胆の君

気付いたら三ヶ月も経っていました。


今回は宗助は出ません。

桜吹雪の裏で起きた花簪の姉妹の一つのお話です。


これは花衣屋に桜のよく似合う看板娘が増えるほんの少し前のお話。


翡汪国(ひおうこく)の城下町である縁堰(えんせき)の町に仲のいい夫婦がいた。

夫の名前は佐藤 勘ノ助(さとう かんのすけ)。その妻の名前はお(しば)。二人は見合いでの婚約であったが仲が良く周囲を笑顔にする程に仲睦まじい夫婦だった。


勘之助の仕事は城にて働く文官でそこそこ稼ぎがよく穏やかな性格から人に好かれていた。

お柴も少々大人しい性格ではあるが何事にも一生懸命な性格で何より勘之助にとってうれしいのは彼女の飯が美味いことだ。


「お柴の飯は本当にうまいなぁ」

「あなたはいつもそれを言います…」

「本当に美味いんだよ」


家を守るは妻の役目という家訓がお柴の家にあるために彼女には家事の達人として母に仕込まれている。

そんな家事上手なお柴が作る美味い飯に勘之助はいつも感謝していた。

勘之助だけでなく彼の義母も家事を一生懸命頑張り、妻として勘之助を支えようとするお柴のことを感謝し大層可愛がっていた。又奉公人達からも評判はよく慕われていた。


というのも勘之助は実はお柴が初めての妻ではなかった。以前に妻がいたが浪費ばかりで家事は全くせず奉公人にもつらくあたり、気に入らない奉公人を虐めたり等をしていため勘之助とその親族が離縁を申し立てたことで追い出したのである。

そのあとに父方の祖父の勧めでお柴を嫁としてもらったのだがその嫁に比べるまでもない程によく働き近所付き合いもよいお柴に両親はすぐにお柴を気に入り、勘之助は胃袋を掴まれたこともあってかすっかり惚れ込んでいたのだ。



「………(近所の奥方達が言ってたけど本当に苦労してましたのね…)」

「あぁそうだ…実は少し仕事で家を空けることになってなぁ」

「まぁ大変…それはいつからですか?」

「七日後だよ、急に決まってね…清条国に行くんだ、土産は何がいいかい?」


朗らかに笑う勘之助にお柴は首を振り、空いた勘之助の茶碗におかわりの米をよそい彼に渡す。

お柴はその際に勘之助の手を握り微笑んだ。


「勘之助様が怪我無く帰ることが一番の土産ですよ」

「その答えが一番困るなぁ…」

「まぁひどい、本心ですのに」

「(お柴は物を欲しがらないからなぁ…そうだ!清条国には評判のいい店があると聞くしそこでお柴に合いそうなものを探そう)」


勘之助がにこやかに予定を決めてながらおかわりの米を食べていた中でお柴は昼に近所の奥方達と話していたことを思い出していた。

それは夫の前妻の事ではなく最近物騒な事が起きているということだった。


「最近物騒な事件が起きているそうですし…」

「あぁ…牟呂(むろ)屋のことか」

「えぇ、奥様とはよくお話してましたし和ノ太も可愛くていい子でした…」


お柴と仲のいい近所の奥方の一人に牟呂屋の女将さんがおり、牟呂屋は食べ物を扱う店のため買い物に行く際等に話をよくし、店の手伝いをするその息子 和ノ太(わのた)にも面識はあった。

その和ノ太がある日に店のお使いで店から五つ隣にある他の店に行ったきり帰って来なくなったのだ。

女将から行方を聞かれ、いなくなった話を聞いたお柴と勘之助だけでなく近隣の住民や店の者もその捜索に手伝い夜遅くまで探しみつからなかったのだが…五日後に和ノ太は無残な姿で遠く離れた町で発見された。


和ノ太の死に動揺し呆然とし泣き叫ぶ牟呂屋の夫婦に代わり同心から細かく事情を聴いた牟呂屋の重役の一人は他の重役達と近所に住む武士達に和ノ太が発見された時のことを伝えた。


・和ノ太はここから七つほど離れた町の河原で発見された

・和ノ太の体には無数の刀傷と切断がされていた

・子供があんなに離れた場所に一人で行くのは考えられない


このことから何者かに誘拐されたことが明白でありしかも惨殺されたのだと知り店の者は皆が怒りに震え犯人を探し出すと息巻くが近くにまだいるかもしれない、他の子供達を守るのが先決であると牟呂屋の店主が涙ながらに諭したため近隣では皆が目を光らせて子供達を守ることとなったのだ。



「…お柴も気をつけるんだぞ、子供だけ狙うとは限らないからな」

「大丈夫ですよ!ここには頼もしい方々がいますもの…清条国はあの月ヶ原様の国ですから大丈夫と思いますが…どうか本当に怪我無く帰ってきてくださいませ」

「あぁ、約束するよ」




勘之助が清条国に行った翌日、家事が一通り終わったお柴は義母と共にご近所の奥方達と話し込んでいた。

その中には牟呂屋の女将もおり、その姿は和ノ太が亡くなったことで疲弊しやつれているようだとお柴は気付いた。


「牟呂屋さん大丈夫かい…顔色悪いよぉ」

「いいの、皆とお話させて…皆と話してると少し元気になるから」

「そうかい…?ならいいんだけど」


お柴も心配げにみるが牟呂屋の女将は首を横に振り気丈に振る舞う。

にこりと儚げに笑う牟呂屋の女将はそれよりとお柴の方へ顔を向けた。


「お柴ちゃんは大丈夫なのかい?今日から勘之助さんいないんだって?」

「そうそう聞いたわ、清条国に行ってるんですって?大変ねぇ」

「でも清条国なら大丈夫よ、あの月ヶ原様のお膝元の国ですもの」

「そうねぇ…あ、そういえば清条国って今不思議な話があるのよ」


奥方達は勘之助の話から清条国の話へすぐに話を変えるこの話の流れが変わる速さにお柴はいつも早いと思いながらも今主人がいる場所の話に興味があるため少し前のめりになり聞く。

そんなお柴に近所の奥方達は最年少の奥方を可愛く思いながら話続ける。


「不思議な鏡の話なの」

「やだ怪談?私苦手よ」

「違うわよ、なんでもね?ある大きなお店にいる次男のところに農民の娘が嫁入りしたそうなの、次男が惚れ込んだそうよ」

「よくある話じゃない…あ、もしかして花衣屋のことかしら?私聞いたことあるわ」

「そう!その花衣屋っていう店の話なの!」


曰く清条国の花衣屋に嫁いだ娘は大人しく姑と小姑に虐められていたらしいのだがある鏡を手にした時から人が変わったように美しくなりその町一番の稼ぎを生む女商人になったのだと。

その立ち振る舞いに男女だけでなく月ヶ原家の姫君も惚れ込む程だとか。


その話にお柴はまるで物語のようだが素敵な話だと思っていた中で牟呂屋の女将がその話を確かに主人もしていたと言うと奥方達はまぁ!と口を揃えて驚く、何故なら牟呂屋の主人は冗談を言う人ではないのでこの話をしたということは本当のことなのだと皆確信したのだ。


「不思議な話ねぇ」

「でも女の人生を変える鏡なんて素敵ね」

「不思議といえば…京の都の四神の像の話聞いた?」

「あぁ、あれね…不吉だわぁ」


清条国の話から京の都の話に変わりお柴はまた内心驚くがお柴はこれは知っている!と口に出した。


「確か東西南北に置かれていて京の都を守っていると言われてる像…ですよね?」

「えぇ、神聖なものとして祀られているのよ…でも何者かに壊されてしまったとか」

「しかも壊され方が四つとも違うそうなのよ


朱雀は黒く塗られて削られるように壊されて、玄武は甲羅を粉々にして壊されて、青龍は手足と角を切られて、白虎はとくにひどくて見る影もないそうなのよ


…悪意しかないわ」

「本当に…誰がそんな罰当たりなことをしたのかしら…」


この話にお柴は顔をしかめてしまうが他の奥方達も顔をしかめて嫌だわぁと話し合う中で突然牟呂屋の女将は少し顔を青くさせてお柴を抱き寄せた。


「!?むろやさ」

「しっ!…皆ちょっと体寄せて頂戴」

「?…っ、そういうことね、お柴ちゃんは静かにしてて」

「え?」


義母も何かに気付き牟呂屋の女将…正確にはお柴を隠すように動き、他の奥方達もそっと同じ所を向いて動くので誰かいるのかと身動ぐが牟呂屋の女将がさらに強く抱きしめて後ろへ下がっていく。

するとお柴には聞いたことのない声が聞こえてきた。


「あらぁお母上様じゃないですかぁ!お久しぶりですぅ」


若い女の声だ。しかしなんだか嫌な感じがして思わず牟呂屋の女将の服を握ってしまうお柴に牟呂屋の女将はさらに隠すように後ろへ下がった。


「そう呼ばれることはもうありません、何しにきたのかしら」

「冷たいわぁ…嫁入りした娘に向かってぇ…」

「あなたと息子はもう他人です、なので私の娘ではありません」

「…勘之助さんどこかしら?会いに来たんだけどいる?」


お柴はこの声の女は話に聞いていた前妻だとすぐに理解した、そして義母と奥方達はこの女から私を守っているのだとも理解する。

…そして恐らくこうせねばならない程の女であるということも。


「息子はいませんし会わせません、消えなさい」

「お金貸して欲しくってぇ、いるかしら?」

「お消えなさい」

「…ちっ、頭の固いばばあが」


お柴はなんだこの女は!義母様に向かってなんてこと言うんだ!と女の前に飛び出そうになるが牟呂屋の女将とその間に収まる奥方の一人がぐっとお柴を押さえたため動けず、拳をぎりぎりと握り怒りを耐える。


「まぁいいわ、…私の後に嫁入れたらしいけど私の方が綺麗だしいい女ですもの、勘之助もそう思うわ」

「お柴はあなたより可愛らしくいい子です、勘之助はべた惚れなのでご心配なく」

「そうよ、勘之助さんあなたと居た時より幸せそうだもの」

「いつもお仕事頑張って真っすぐお柴ちゃんの元に帰ってるわね、本当に仲の良い夫婦だわ…あなたと居た頃と違って」


奥方達からの支援攻撃に女は苛立ちを隠さずに舌打ちすると勘之助は馬鹿だ、今に見ていろと捨て台詞を吐いて消えた。

しばらくして牟呂屋の女将が腕を緩めたことでお柴は自由になる。

全員がホッと安堵する顔にお柴は義母の傍に寄り声をかける。


「…義母様、今の方が例の前妻ですか」

「えぇ、我が家にとって最悪の嫁でした…ごめんなさいお柴さん、怖かったでしょう…」

「いいえそんな!それより義母様に向かってあんなこと許せません!それに勘之助様に対してあんな言い方を!」

「…ありがとう、本当に貴方が息子の嫁に来てくれてよかった」


お柴を抱きしめ、しみじみと言う義母と微笑ましそうに見る近所の奥方達にお柴はこれ以上何も言わずに義母が離れるまでそのまま黙っていた。




この日から佐藤家周辺で異変が起こる。

ごみは荒らされ、壁に落書きされる等の小さなことから夜に突然大きな石を投げ込まれたり怖そうな男達がどんどんと門の戸を叩く等しているのだ。

最初は静かに奉公人や近所の奥方達と落書きを消したりごみを片づけたりと対処していたのだが、後半に関してはご近所の侍達や話を聞いた同心達が見回りを強化してくれたことで対応してくれたがどんどん事態はひどくなっていった。



そして勘之助が清条国に行き七日目のこと、予定では明日に帰ってくるためその日の晩は美味しいものを作ろうと店を回る。共に来た奉公人にお米の事を頼むとお柴は野菜を求め振売が店を構えていた場所に向かっていた。

その途中の路地裏にお柴は突然引っ張り込まれ口をふさがれる。

何事かとお柴が状況を把握しようとすると見知らぬ男が二人がお柴を拘束し口を押えていたのだ。


「おいお(まさ)が言ってたのこいつだよな?」

「あぁ、しかしお雅に比べると貧相だが…可愛い顔じゃねぇか」

「…あんたも可哀そうにあの家に嫁に行ったからこうなるんだぜ、お雅は執念深いからなぁ」


お雅?話を聞くにもしやあの前妻の名前なのだろうかと考える間に刀を抜く音がし、お柴は目を瞑った瞬間。


「悪者だー!!」

「であえー!!」

「お柴になにするんだー!!」


子供達と男の悲鳴が聞こえ目を開けたお柴が見たのは長い竹の棒を振り回し男達を叩く近所の子供達と遠くで大人を呼ぶそれより幼い子供達の姿があった。


「っ、この餓鬼!」

「おいそこで何してるんだ!!」

「!、お柴ちゃん大丈夫かい!?」


逃げる男達に呼ばれてきた男性陣達が追いかけ、騒ぎを聞いてきた近所の奥方達と奉公人の一人(お柴に頼まれ他の店に行っていた)が駆けつける。

特に共に買い物に来ていた奉公人は顔を青ざめてすぐさま駆けつけた。


「奥方様…!私が離れたばかりに…!!」

「ううん、あなたにはお米頼んだもの…それより皆、助けてくれてありがとう」


えぐえぐと泣く奉公人を慰めながらお柴が助けてくれた子供達に礼を言えば子供達は笑顔を返した。

いの一番に男達に襲い掛かった最年長の愛助(あいすけ)が竹の棒を肩に担ぎながらお柴の無事を確認する。


「お柴が無事ならいいよ!…それに俺らも見回りしてたからさ」

「見回り?」

「和ノ太のこと…俺らも悔しくてさ、だから見回りしてたんだ」


お柴は確か和ノ太と愛助は仲が良く和ノ太が空いた時間があればよく遊んでいたことを思い出した。

そんな友があんな姿で亡くなったことを愛助は許せず、和ノ太の様にさせないようにと同様に思った子供達と見回りしていたらしい。


そんなことを知らなかった大人達は危ないことをするなと言うが内心感動していた。

子供は知らない所で大きくなるのだと、なにより愛助がつらいだろうにと思ったがきっと和ノ太とは本当に仲が良かったからこそ、二人がこの近辺では年が上の方で近隣の子供達の兄貴分であったからこそ愛助は他の子を守ろうとしているのだろうと。



お柴も感動している中で愛助は少し顔を近づけ周りを警戒するように小声で話す。


「牟呂屋に来てくれ、話がある」







近所の奥方達と子供達と共に牟呂屋に来たお柴、突然来た大勢の人間に牟呂屋の主人は不思議そうな顔でどうしたと聞くが愛助が何か言うと牟呂屋の主人は驚いた顔をして奥に皆を案内した。

中に入り子供の一人が警戒するように戸を閉めると愛助はお柴に向かいあうように座り漸く用件を話した。


「お柴、あんた狙われてるぜ」

「え?」


突然のことにお柴は驚くが愛助はそのまま続けた。

その顔が真剣であったため周りの大人達も只事ではないと感じる。


「前の勘之助の嫁さんいただろ、そいつが前にお柴達の家に落書きさせてるの見た」

「させてる?してたじゃなくて?」

「あぁ、子供に落書きさせてた…でもここらじゃ見ないやつだったけどな」

「…お柴様、確かにあの落書きは高さが妙に低い所にありました」


奉公人に言われ確かにそうだと思い出す、お柴の腰より少し高い所に書かれた落書きは大人にしては低かった。

二人の会話に近所の奥方の一人もそういえばと声に出す。


「朝に物音すると思って見たら知らない女の子が重たそうに何か運んでたわ…、そうよ!その日にお柴ちゃんの家の周りにごみが撒かれてたんだわ!!」

「それって…最近の佐藤家の事は全部お雅がやってたってこと!?」

「それだけじゃねぇよ、自分はやらずに小さい女の子にやらせてたんだ…今日のもお雅があの男達に何か言ってるの見たから追いかけたらあんな事になってたんだ」

「そうだったの…」


それだけじゃなく愛助達はお雅が佐藤家の周りで何度もうろちょろしている所を見かけていたらしく警戒してくれていたのだという。

子供達の行動力に大人達は驚くがそれよりも心配が先に出るため牟呂屋の主人は愛助に向かって口を開いた。


「何で大人に言わなかったんだ、子供達でやるには危険すぎるだろう」

「言っても信じてくれなかったから、俺らで証拠集めることにしたんだ」

「…なるほど同心や岡っ引き達は子供の言う事と取り合ってくれなかったのね」

「それに…」


愛助は膝に置いていた拳を握り、少し沈黙すると意を決したように口を開いた。


「さっき言った女の子と和ノ太が何か話してるのを和ノ太がいなくなる前の日に見たんだ」

「何ですって…それ、どういう…」

「お前落ち着きなさい…愛助君続けられるかい?」


和ノ太の名前が出たことで牟呂屋の夫婦は動揺するが主人はこらえるように落ち着いて愛助に聞けば彼も顔を強張らせていた。

それはお柴も周りにいた子供も大人も同様に。


「和ノ太がボロボロの女の子見つけて同い年くらいだから気になるって声かけたんだ…俺は遠くから見てただけだけど二人が話して少ししたら女の子の方が何かに怯えるみたいに逃げたんだ…追いかけようとした和ノ太に来ちゃダメって言ってて…それが気になるんだよ」

「もしかしたらそれが和ノ太が行方不明になったことにつながるかもしれないの?」

「多分だけどな…あんな怯えるなんておかしいし、なんでお雅の言うこと聞いてるかわかんねぇし…」


確かにそうだ、しかしそこからどのようにして和ノ太の件につながるのか分からないとお柴も頭を捻るがわからない。

愛助は和ノ太の件もあるからあの場所では話せないのでここにお柴を連れてきたらしい何よりここの警備は中々に良いことは知ってると言えば牟呂屋の主人は少し嬉しそうに微笑んだ。


「愛助、和ノ太のこと考えてくれてありがとう」

「和ノ太の父ちゃんそれは犯人捕まえてからにしてくれ、今はまだその時じゃねぇぜ」

「あぁ、でもうれしいんだ…和ノ太の死を悲しむだけじゃなくそこから他の子を守ろうと動いてくれる君が…」

「もし逆だったとしても和ノ太もきっと同じことしてるぜ」


その愛助の言葉に牟呂屋の女将は涙を流すがうんうんと同意する様に頷き息子も同じことをしてただろうと笑った。

二人に笑顔を返した愛助はお柴に向き直ると本当に気をつけてくれと念を押す。

恐らくまだあのお雅は何かしてくるはずだと。


お柴がこくりと頷いた時どたばたと足音がし、お柴の名前が呼ばれると同時に襖が大きな音を立てて開かれるとそこには汗だくのお柴の旦那である勘之助がいた。

お柴を目に入れた勘之助は彼女を強く抱きしめ、存在を確かめるようによかったと繰り返し安堵の言葉をつぶやいた。


「お柴、よかった…!無事でよかった…!」

「勘之助様…どうしてここに、お帰りは明日の夜だと聞いて…」

「君が襲われたと知らせがきて…急いで馬を走らせて戻ってきたんだ……あいつが来たんだって?」

「お雅さんのこと、ですか?」


お雅の名前に勘之助は目を吊り上げ、怒りの表情を露わにした。

お柴は勘之助の頬に手を当てて落ち着かせると冷静に返す。


「あなた、今回の騒動の件は我が佐藤家の問題だけではすまないかもしれませぬ」

「どういうことだい?」

「義父様達にも意見をお聞きしたいのでお集り頂きたいのです、愛助今日はありがとう本当に助かったわ」

「なんかあったら言ってくれよ、俺等もまだ見回り続けるから」


今回は勘之助も帰ってきたこともあるのでお柴は休ませるためにも家に戻ることにした、勘之助はその間に奉公人から今までの経緯を聞き事態を把握をするがまたも怒りの顔に戻るがハッと荷物に触れると顔を穏やかな顔に戻した。

その光景にお柴も奉公人も首を傾げるが勘之助の表情から何かあったのかと顔を見合わせるのであった。



家に戻るとすぐに義父母が来てお柴は今日の事を報告する。

二人も和ノ太の行方不明の際に共に捜索をしていた為に関係があるかもしれないと告げられると顔を鬼の様に目を吊り上げるが、証拠がないと動けないだろうの言葉に義父は畳殴りつけ悔しさを露わにした。


「あの女…!まさかこんなことまでするとは…!!」

「でも本当にお柴さんが無事でよかった…あなたに何かあったら私は…」

「義母様…」

「母上、俺も戻りましたのでこれからは安心して下さい…そうだ!お柴に土産があるんだ!」


雰囲気を変えようと勘之助は傍に置いていた袋から小さな箱を取り出すとお柴に差し出した。

お柴は恐る恐る受け取り勘之助から開けてくれと言われたことと義父母からの興味津々な眼差しに箱を開けると花の香りが部屋を包んだ。


薄紫の花弁が舞い全身を包み込まれたお柴は感嘆の息を吐くと声が聞こえた気がした。


《末永くよろしくお願い致しますわ》


その声が美しい声だと思った瞬間に体を揺さぶられたことで正気に戻ったお柴を勘之助と義父母が心配そうに覗き込むんでいる。

どうやら箱を開けたまま固まっていたらしく声を掛けられていたらしい。義母は正気に戻ったお柴の額に手を当てて安堵の息をついた。


「お柴大丈夫か?」

「急に動かなくなって…驚かせないでちょうだい…」

「今日の事もあって疲れたのか?…にしても勘之助にしては中々いいものを買ったなぁ」

「本当になんて美しい簪かしら」


箱の中にあったのは布で作られた竜胆の美しい簪だった。

四輪の花が美しく咲き誇っている簪を手に取ったお柴は勘之助に頭を下げる。


「勘之助様、こんな素敵な物を頂きありがとうございます」

「いいんだ、お柴はいつも美味い飯を用意してくれて家のこともよくしてくれる…これを店で見た時に君の髪によく似合うと思ったんだ」


簪を手に取りお柴の髪にあてる勘之助はうんうんと頷いてやはり似合うと微笑む、お柴ははにかむ様に笑う。そんな仲睦まじい二人に義父母はやはりお柴が嫁に来てくれて良かったと互いに顔を見合わせて頷き合っていた。



翌日に勘之助からの頼みもあり早速簪をつけたお柴に奉公人達から称賛の言葉の嵐を受けるのであった。

美しい簪であるのもあるが髪色が少し青みがかっているお柴に薄紫の竜胆の簪はよく映えており美しいと。何よりもここ最近の出来事も相まって張りつめていた空気にほのぼのとした二人の出来事と空気に奉公人達は癒されたのもあったため余計に簪とお柴が美しく見えたのだ。


お柴はその言葉に照れながら礼をいい、そんな姿を見た義母がうちの義娘が可愛いと機嫌良く近所の奥方達との井戸端会議の場に連れ出すと奥方達はまぁ!と黄色い声を上げて出迎えた。


「お柴ちゃんその簪もしかして!」

「うちの息子がお柴さんに似合うからって土産に買ってきたのよ!繫盛目に見なくても可愛いの!」

「髪色とよく合うわぁ!それにしても本当に布なのに美しい作りだこと…!腕がいい職人の作品かしら」

「流石商人の奥方、目の付け所が違うわね…」


きゃっきゃっと少女のようにはしゃぎながらお柴を構う奥方達に先日の件もありついてきた旦那達(一部)は苦笑い。

そして同様についてきた非番の勘之助を肘でつついていた。


「お前さんあんないいもの贈って大丈夫なのか?」

「お柴にはいつも世話になってるから…それに本当に似合うと思ったんだ」

「でも勘之助が洒落たもの贈るとは…いい嫁さんもらったな、本当に前と全然違うよ…いい顔だ」

「…あぁ、お柴のおかげだ」


男衆達も前妻の事は知っているためお柴が来た当初は警戒していたが奥方達の評判と前は家に帰りたがらなかった勘之助が真っすぐに帰る様からいい嫁が来たようだと安堵したのだ。

そのため今回の件にも目を光らせてくれて対応していたのである。


「あ!お柴が綺麗になってる!」

「違うよ簪つけてるんだよ、でもよく似合うね」


話し込んでいた中で子供達が昨日のこともありお柴の様子を見に来たが竜胆の簪を付けたお柴を見て子供達も似合うと褒めるのでお柴も笑顔を返した。

その中で愛助がいないことに気付き所在を聞けば、子供達は今日は見ていないと返した。

昨日の事もあり大丈夫かと心配した。



その時、お柴はとてつもない悪寒が体に走り、竜胆の花弁が視界を舞った。




花弁に包まれた視界の中でお柴の目にはここではない場所で愛助と少女が手を繋いで走り、何者かに追いかけられているのが見えた。

お柴はこれはまずいと花弁が晴れるとすぐさま走りだした。


「二人があぶないっ!!」

「お柴!?」


突然走り出したお柴に勘之助は追いつくが彼女の表情から足は止めさせず並走すると突然どうしたと聞けば、愛助が危ない!と顔を青くさせたお柴が返す。後ろから先ほどいた面々が追いかけてくるのが見えると共に今のお柴の声が聞こえたのか顔つきが変わるのが勘之助には見えた。

まるで場所が分かるように走るお柴に勘之助は抱き上げると何処に行けばいいと聞くとお柴は行き先を指さした。



少しすると愛助と少女が前から来るのが見え、勘之助はお柴を地面に降ろすと刀を抜き愛助と少女の後ろにいる者達の前に立ちふさがった。


「お前達何をしているか!」

「っ、お前は佐藤家の!!」


お柴は走り込んできた二人を抱き寄せると守るように立ち、後ろから追いついた面々は事態をすぐに把握すると男衆は勘之助の加勢に入るように立ち、奥方達はお柴達の前に守るように立った。子供達はすぐに近くの大人達を呼び集める。


この状況に愛助を追いかけていた者達は焦り逃げようとするが子供達の声に集まった大人達がすぐに事態を察し男達を逃がさない様に囲み、騒ぎを聞きつけた同心達が来た事で観念してお縄についた。


愛助の無事をお柴は安堵するが愛助は少女の喉を布で押さえながら泣きそうな顔をしている…よく見ると少女の服に血がついており何処を怪我したかと聞けば愛助は少女の喉から手を離した。

そこには締め上げたのであろう痕と傷があった。


「誰かお医者様を!!この子怪我してるわ!」

「なっ、これはひどい…絞められた痕がある」

「お柴、こいつおかしいんだよ…!」


愛助は震えながら少女の手を強く握るが少女は虚ろで握られている手をぼんやりと見つめている。

愛助は涙目で少女の手を握ったままお柴に叫ぶ。


「こいつ何も話さねぇんだよ!!前はこんなぼんやりしてなかったのに…!」

「お医者様が来たぞ!」

「みんなお退きなさい…っ!なんだこれは…どういう状況かね?」


町人の騒ぎに駆けつけた医者は少女の首の痕と傷に驚きながら診療所に連れていくと少女を勘之助に運ばせながらお柴と愛助に事情を聞く。

診療所につくと早々に首の傷を治療と診断をして紙に少女の状態についてまとめ始めた。

その中で愛助はあの状況になった経緯を話す。


愛助は朝の見回りを一人でしていた際に町の外れで少女がぼんやり立っていて男達に引きずられているのを見つけたので後をつけたそうだ、すると突然男達が少女に向けて刀を向けたので慌てて石を投げて注意を引き、少女の手を掴んで逃げたのだという。

しかし少女が何も反応がなく手を引かれるままに動いたので不思議に思ったのだが詳しく確認出来る状況ではなかったらしい。


「…なるほど愛助はこの女の子が捕まった男達に襲われていたから助けたんだね」

「あぁ、少し撒いたと思って話しかけたら何も言わないし首があんなことなってるから驚いて…でもあいつらに見つかったからまた逃げてたらお柴達が来てくれて助かったんだ」


愛助は本当に助かったとお柴達に言えば勘之助はお柴のおかげだと返した。

お柴は何故あの時二人の場所と状況が分かったのか分からないが二人が無事でよかったと安堵の息をついた。


「なるほど………今の段階で分かるこの子の状態だが…まずこの子は首を絞められた、この痕からして手で絞められたみたいだな」

「そして傷も…これは刃物ではないですね」

「爪だな、この傷の形からするに恐らくだが捕まえようとした時にひっかいたのだろうか……だが何よりひどいのは喉だな」


喉?と全員が問えば医者は眉間に皺を寄せ今は眠っている少女を見た。

つられてお柴も少女を見れば、寝ているのだがなんだか苦しそうに息をしている。

勘之助もそれに気づき、まさかと言葉を零す。


「…喉を焼かれている」

「え?」

「この子は声を出せないように喉を焼かれたようだ…本当に惨いことをする…」


診療所にいた大人達は全員喉を焼かれているという事実に言葉を失う。

お柴は信じられないという目で少女を見ていると大きな音が隣から聞こえ視線を向ければ愛助が木の壁を殴っている音だった。その表情は顔面蒼白でありながらも怒りに満ちておりすぐに勘之助は落ち着けとすぐに愛助の背を摩った。


「なんでだよっ!こいつ確かに悪いことしたけどお雅の奴に言われてしただけじゃんか!」

「…そうかこの子が件の少女か」

「…手が細くてそれに傷だらけなのに声も出なくなるなんて」


少女は体が細く手も傷だらけで儚い印象を与える少女であった。

お柴はこの少女が最近の佐藤家の嫌がらせに対してお雅からの指示で動いていたと聞き、こんな細い体で夜遅くや朝早くにあんなことをしていたのかと驚くがそれをさせていたお雅に怒りが湧いた。

何よりなぜお雅はこの少女にそんなことをさせたのかと。


「…この子はここで預かろう、元気になったら色々聞きなさい」

「お願いします」


診療所を後にしたお柴と勘之助は集まっていた近所の面々と別れ、愛助を送ると義母と共に家路についた。家の前には義父の姿があり騒ぎを奉公人達から聞いて心配だったのでここで待っていたという。

怪我がないことに安心したが今日の事もあり不安なため義母と共に今日は二人の家に泊まることになった。


お柴が用意した食事の席で義父に駆けつけた同心達には近所の奥方から粗方説明はされているが愛助と共に事情を聞きたいと告げられたので明日は役所に向かう事となったと告げると、心配だから明日は奉行所近くで仕事があるので自分が終わった後に迎えにいくよ、だから義母には休んでなさいと告げた。


義母は不安そうにしていたが義父もいるならばと明日は自分が食事を準備するわ!と笑いながらと力こぶを作る義母はそうだとお柴に顔を向けた。


「お柴は明日食べたい物はあるかしら?」

「あの…もしいいなら…」

「なんでもいいのよ?…高級なのは出来ないけど」

「いいえ!?そんな…!そのここに嫁いできて初めて食べさせてくれた大根の煮付けが…また食べたいです」


顔を赤くしながらそう言ったお柴に義母は彼女を抱きしめる。

何故なら大根の煮付けは義母の得意料理で義母も義父の母から受け継いだ味だったからだ。


「とびっきり美味しいの作るわ!」


義母は満面の笑みで声高々に宣言した。

そんな義母に勘之助と義父は微笑ましそうに見ながらお柴が嫁に来てよかったと思うのだった。

嫁姑問題はこの家にはない、それどころかお柴が嫁に来て以来義母はこんなにも楽しそうに笑っているのだから。



その翌日、二人は事情聴取のため愛助を連れ役所へ向かおうと大通りを歩いていた。お柴は今日もあの竜胆の簪をつけて。

愛助は少し不安そうだが二人は昨日のあの子について話を聞くだけだそうだから不安にならなくていいと愛助を元気付ける。しかし愛助はそのことについてだけではなく昨日の少女のことを考えていたと零した。


「昨日のあいつ絶対におかしかった…だって何も反応しないんだ」

「…それもお医者様に見てもらおう、きっと何か原因があるはずだ」

「勘之助様の言う通りきっと原因があるわ…病気ならばお医者様もわかるもの」

「…だといいな」


愛助は一度頷くと早く行こうぜと二人の腕を引いた。

が、すぐに足を止めることになる。

なぜならば…



「やっと会えたわぁ勘之助様ぁ」



お雅が立ち塞がる様に前に立っていたのだから。



「お前は…!!」

「お雅…!!」

「(この人がお雅…勘之助様の前妻…)」


お柴は声は聞いたことがあるが姿を見るのは初めてだった。

お雅は派手だが美しい顔で化粧もお柴に比べるとしっかりと施されており、体つきもお柴よりも凹凸がはっきりとしていた。がその顔の表情を見たお柴は背中が凍る様な感覚になり思わず勘之助の袖を握る。


その顔は完全にお柴に対して悪意を向けていたからだった。

何よりお柴を見て勝ち誇ったように鼻で笑う。


「何のようだ、お前とはもう他人だが?」

「お母上様みたいなこと言わないで?私達夫婦でしょ?」

「元だ、今はこのお柴と夫婦だ…それに俺はお柴を心から愛しているからな」

「っ、私より貧相なのにですかぁ?それに私の方が美しくて妻として相応しいはずだわ」

「金払いがいい男にでも行け、俺達は忙しいんだ…行くぞお柴、愛助」


徹底的にお雅に対して冷たい態度を取る勘之助はお柴の手を引くと傍から離れない様について来させた愛助と共にお雅を避けて通る。

冷たくあしらわれたお雅は怒りに顔を歪め勘之助が握る手と反対のお柴の手を掴んだ。


「いたっ!」

「あ、お柴!!」

「な、お前…!お柴を離せ!!」


お柴は離させようともがくがお雅の力が強いのか離すことが出来ず痛みに耐える。

お雅はぶつぶつと何か呟くと懐から錐を取り出すと振りかぶった。


「お前みたいな貧相で美しくない女が…私より幸せになるなんて許せない!お前さえいなければ!!私はあの家に戻れるのにぃぃぃぃ!!」

「いやっ!!」

「お柴!!」


勘之助はお柴を守る様に抱きしめる中で愛助はお雅の腹に蹴りをいれる。

子供といえど男の愛助の蹴りに耐えきれずお雅はお柴から手を離し後ろに転ぶがすぐに起き上がり未だ持っていた錐で今度は愛助を狙おうと襲いかかった。



「駄目!!」


お柴は咄嗟に勘之助を突き飛ばして離れ、愛助を守ろうとお雅の前に出てしまう。

愛助を抱きしめ守る体勢となったお柴にお雅はニタリと笑いながら錐を振り下ろした。







その瞬間、辺りは薄紫の花弁に包まれた。



《幼子を守ろうとするその心、天晴です!やはり我が主にふさわしい!!》


お柴は簪の箱を開けた時に聞いた声に顔を上げた。

薄紫の花弁の中から竜胆色の長い髪を高く結い上げ、紫の布地に竜胆の花の柄を散りばめられた着物を着た涼やかな美しい顔の女がお柴の頬に手を添えた。


《我が竜胆の花は正義の花、悪を許さず罪を許さぬ花にございます》

《その力を貴女に授けましょうぞ》


ふわりとお柴の背に回った竜胆の着物の女が肩に手を置いた。

するとお柴の姿が変わる。


髪が一人でに解け高く結われ竜胆の簪が差され、少女のあどけなさがあったお柴の顔は薄紫の化粧が施され凛とした女の顔になり、地味な無地の着物は鮮やかな紫に美しい竜胆の花が描かれた美しい着物へ姿を変えた。


《さぁ、この女の悪事を暴いてしまいましょう!》





薄紫の花弁が晴れると愛助を守らんと抱きしめる美しい女がそこにいた。お雅は花弁に驚き後ろへ下がり呆然とお柴を見ている。

勘之助はその女が自分の妻であるとすぐに気づいた。何故なら愛しの妻であるのだが何より頭につけた簪が己は贈ったものなのだから。


「お柴、お前何が…」

「え?…え?なにこれ…私どうなって…」

「お柴だよな…?なんか綺麗になった…」

「どういうことなの…?」


お柴は勘之助と愛助の言葉に自分に何が起きたのか分からなかったが自分の服が変わっていることに気付き驚く。

勘之助はお柴とお雅の前に立ちながらもお柴が無事であるか確認し喜んだ。


「よくわからないがお前が無事ならいい…おいお雅、俺の妻を傷つけようとしたな」

「っ訳わかんないけど、どきなさいよ!!」


お雅は気を持ち直し錐を構えるがこんだけ騒げば周りも勿論気付き悲鳴と怒声が辺りに響く。


「誰か同心呼んでぇ!!事件よぉ!!」

「おいお前!今そこのお嬢さんに危ないもん突き付けてたろ!!」

「子供も傷つけようとしたよなぁ!?流石にこんだけのもんが見てるんやから言い逃れ出来へんぞ!!」


周りの男達がお雅を囲み、女達が愛助を守る様に立つ中でお雅はまたもぶつぶつと何か呟くとお柴を睨みつけた。

それに気づいた勘之助はお柴を後ろに隠すがお柴は竜胆の花の香りに気付くと何故か隠れてはいけないと何かが語りかけてくるからか体は自然とお雅の前に立った。



「あんたのせいであいつが、あのガキが見つからなければ…私は家に戻れたのに…」

「ガキ…?まさかあの女の子のことなの?」

「邪魔だから喉もつぶして始末もさせようとしたのに…今まで隠せてたのに見つかったのはあんたのせいだ、邪魔されたのはあんたのせいだ、あたしが愛されないのはあんたのせいだ!!!」


お柴はお雅の発言に驚き、怒りが湧いた。

あの少女はこの女に喉をつぶされたのだという真実。そして自分の悪事も己に起きた不幸も全て自分のせいにしているということ。

これまで湧いたことのない怒りと、このお雅に対しての呆れがお柴の中で湧いた。


そしてお雅の言葉に気付き考える。

今まで隠せていたのに見つかった?あの少女が見つかることはなかったのに?それはつまりあの子を隠していた?なぜ?この女にとって邪魔…それはいたら都合が悪いもの?つまり…お雅とあの少女は。


「あなた、あの子の母親…なの?」

「…それがなに?あいつがいるせいで私は家に戻れない邪魔なものよ?」

「…だから喉を?あんなに細いのは邪魔だから碌にご飯をあげなかったというの?」


お雅は何をいうの?という様に首を傾げた。

まるで子供が大人に質問されて素直に答えるようにお柴の質問に答えた。


「あげたことないわよ、でもあいつどこかしらで食いつないでたみたいだからしぶとく生きてたわ」

「ふざけんなよ!!子供を何だと思ってんだ!!」


愛助が怒鳴る中でお雅はニタリと笑っていた。

もう彼女は正気ではなかった。この逃げられない状況に気が狂ったのか彼女は笑う。

その笑顔にお柴は背筋に寒気が来て、愛助を隠すように前に立った。無意識に子供に見せてはいけないと思ったのだ。


「邪魔なのにしぶとく生きてたの…あぁそういえばあのガキに話しかけたガキもいたわ、なんか賢そうだから勘づかれる前に始末させたんだっけ」

「それ、まさか…」


ケタケタと笑いながら話すお雅に愛助は力が抜け涙を流す。そのガキというのは彼はよく知っている。

和ノ太のことだ。愛助が涙を流しながら零した名前にあぁそんな名前と笑うお雅にお柴はぶつりと頭の中で何かが切れる音がした。

あの元気で優しい少年の命をこの女が奪ったのだ。それも自分の過去を暴くかもしれないという推測だけで。


「ふざけないで…」

「ん?」

「ふざけないで!!命をなんだと思ってるの!!」


お柴がそう叫びお雅へ足を一歩踏み出したと共に竜胆の花の香が辺りを包み、お柴の足元から竜胆の花が咲き乱れていった。

お柴の足が一歩進む毎に竜胆の花は咲いていき花の道を作っていく。そして少しするとお柴が通った後の竜胆の花は枯れるのではなく花弁を散らして消えていき、散った花弁は風も吹いていないのに空へ舞い上がっていった。


「お柴…?」

「花…?」

「綺麗…」


周囲の人達は突然咲いた竜胆の美しさに驚くが空へ舞い上がる竜胆の花弁の美しさに見とれ、勘之助は妻に異変が起きたとすぐに察知し向かおうと足をするが彼の足元に邪魔をする様に竜胆が咲く。


《心配なされないで主の旦那様、私がお柴様に危害はくわえさせませぬ》


突然聞こえた女の声に勘之助は足を止め、誰だと探そうとした時に彼は見た。

今お柴が着ている竜胆の着物によく似た着物を着た女がお柴の背後から肩に手を乗せて宙に浮いていた。

その顔は自身に満ち溢れたように笑い、女はお柴の頬を背後から優しく撫でるとお雅へ指をさす。


《さぁ我が主に、竜胆の花に罪を告白なさい…我が主 お柴様の前に罪を吐き償いを誓いなさい》


女に指さされたお雅が竜胆の花弁に包まれる。お雅は突然動きを止めて固まり、少しすると涙を流し始め、膝をついて号泣し始めた。




「私が、私が全てやりましたぁぁぁぁぁ!!」



……………………。

…………。

……。



「…………え?」



お柴は突然顔から出るもの全て出しながら懺悔するお雅に驚き足を止める。

勘之助も愛助も周囲の人達も先ほどまで狂っていると思っていた女が突然号泣し懺悔する光景に思考を停止した。


「わた私があなたへの嫌がらせも!子供の殺すように男に頼んだのも!あの子の喉も焼いたんですぅ…!!」

「え、これ…なにが…」


突然の自供にお柴は勘之助を見るが勘之助もどうすればいいのかと困った顔を返す。

愛助も周囲の人達も突然の状況に呆然とする中でお柴と勘之助の知る声が聞こえた。


「なるほどその女が一連の事件の黒幕か…これまた変わった事件の終わりなことだ…」


人波をかき分けて現れたのはこの辺りの同心を束ねる与力の大野 古ノ振(おおの ふるのしん)親分だ。

今日の三人の事情聴取は彼が行う予定であったのだが約束の時間に三人が来ないので迎えに行こうと外に出たら町人の通報で急いで来たというわけであった。



「大野親分…!来てくれたのか!」

「お前らが遅いから何かあったのかと思って外出たら事件というんでな…しかしお柴の嬢ちゃん今日はやけに美人さんになったじゃねぇか」

「私もよくわからないの…お雅さんもどうしてこうなったのかも…」

「まぁ自白した下手人にみたいだし此方に任せなぁ…おい連行だ!」


共にいた部下に指示を出しお雅に縄を巻いて連行するが彼女は大人しくしているところかさらにまだ懺悔しており今回以外の罪状もあることが判明し傍にいた違う同心は慌てて紙にその懺悔の罪状を書きながら奉公所へ連行して行ったのであった。


「すまんが事情聴取は予定通りさせて貰いてぇから奉行所に一緒に来ておくれよ」

「構いません、そのつもりでしたから…お柴は帰っておくかい?こんなこともあったし疲れただろうから愛助を連れて帰っても…」

「俺は大丈夫だぜ」

「私もです」


勘之助は二人の意見を聞き分かったと頷くと二人を連れて奉行所へ行くと大野親分に伝え、四人で向かった。

あんなこともあったし今日は事情聴取を受けたらすぐに帰ってゆっくり休もうと考えていたお柴と勘之助だった。



のだが、この行く道で四人はかなり疲労困憊になった。

それは…。



「俺がやりました!!あいつを殺したのは俺なんだ!あいつが、あいつが昇進するのが許せなくてさぁぁぁ!!」

「お願い私を捕まえてぇ!ありもしない話で色んな店の評判を落として楽しんでたのぉぉぉ!!」

「誘拐したんだ!清条国で苧環屋に頼まれて、大金積まれて他の店の子をさらったんだぁ!!でもそのせいでその子の親が死ぬなんて思わなかったんだよぉ!!」

「いっぱい盗んだのぉ!綺麗になりたくて…でもお金がなくて盗んだのよぉ!!」


とお雅のように泣きながら懺悔する人間の対応に追われていたのだ。

必ず懺悔する者はお柴に縋り付こうとするので勘之助と大野親分が剥がし、これ以上来ないように愛助が知り合いのおばちゃんに借りた竹の棒を振り回して威嚇し、お柴はこの状況にどうすればいいか分からずオロオロしていたが少しすると懺悔する人を同心達に捕まえやすくするため懺悔しながら暴れる彼らの頭を撫で落ち着かせていたのを繰り返していたのだ。


ようやく奉行所に辿り着く頃にはへとへとになっていたのである。


「今日は今までで一番の収容かもしれねぇ…」

「なんでこんなことに…」

「多分私があげた簪が原因だろう…」

「え?」


奉行所に入り一息ついたお柴に勘之助が少しすまなさそうに見ていた。

勘之助は清条国で土産を買う際に買った店にある噂があり、その噂の店でこの簪を買ったのだと告げた。

お柴は清条国とお店の言葉に近所の奥方達と話した女の人生を変える鏡のある店の話を思い出した。


「もしかして…花衣屋という店ですか?」

「あぁ、知ってるのかい?」

「花衣屋?そいつは清条国にある店なのかい?」

「はい、近所の奥方様と話していたんです…なんでも不思議な鏡がありその鏡の力で元は農民で嫁いできた大人しい女性が町一番の女商人へ変わったと…」

「そりゃあすげぇ話だな…で?その店で買ったからその簪もってかい?」


大野親分に聞かれた勘之助はそれだけじゃないと首を横に振る。


「これを買う際にその店の商人からその鏡を作った人の作品だと聞かされていたんだ…きっと何か起こるかも、ともな」

「それがさっきの何か起こるってことなのか?信じられないぜ」

「…そういえば私これを見た時と着物が変わる時も綺麗な女の人が見えたの…その時に竜胆の花は正義の花だって…悪を許さず罪を許さぬ花だって言ってた」

「あぁ俺も竜胆の着物を着た女は見えたぞ、君の肩に手を置いていて……ん?」


悪を許さず罪を許さぬ花。

罪を許さず。

罪。


「「「それだ!!」」」

「…あの懺悔する人達はやはりこの簪の力のせいということです?」

「かもしれねぇ…そんな簪なんて聞いたことねぇが…いや、待て清条国って言ったよな?」

「親分?」


大野親分は頭を軽く揉むと何か思い出したように同心の一人を呼んだ。

何か確認するように聞く大野親分に同心の一人は頷いていた。


「えぇ、俺はそう聞きましたよ」

「…なるほど清条国は今面白れぇことになってる訳か」

「大野親分?どうされました?」

「清条国には今変な話がいくつかあるんだよ」


大野親分曰く、清条国のある村で龍が出たらしくその龍がある壺に暮らし、村の青年を気に入りそのまま一緒に住んでいるらしいという話と清条国の若である月ヶ原義晴様は星を封じ込めた刀と龍を宿した刀を所持しているという噂を三人に聞かせた。


「なんです、それ…いや、お柴の簪のことも信じられないが…」

「多分それらは同じ奴が作ったんだろうなぁ…でお柴の嬢ちゃんの簪もそいつが作ったと考えると変な力にも少しではあるが説明はつく…」

「少しなんですね」

「訳わかんねぇからなぁ…しかし今回はその力で此方は助かったぜ、未解決事件が色々解決出来そうだ」


大野親分はくくっと楽し気にこのあとの聴取が楽しみだと笑うと、さて事情聴取しようぜと話題を無理矢理変えた。

この大野親分は同心になるべくしてなった男なのだ、とういうのも悪い奴の証拠を見つけるために駆け回るのが好きで、悪人を捕まえるのも好きで、誰かを守るのも好きな男なのである。


二人はこの親分が仕事好きで事件を解決しまくり、下手人を捕まえまくったために実績を上げて与力へと昇進した人と知ってるので流石根っからの奉行所の人間だと感心するが、愛助は呆れた顔をして仕事馬鹿と言ったのだった。


その証拠に大野親分は事情聴取が終わった直後に部下の岡っ引き達に三人を送る様に指示を出すと意気揚々に先ほど捕まえまくった懺悔した人達を事情聴取してくると飛び出していった。

今日の大野親分は(仕事で)夜も眠れないだろうと勘之助は苦笑したという。




義父が迎えに来て、帰る際には懺悔した人たちが出尽くしたのか何も起こらず二人は安心して家に辿り着いたことに安堵の息をついた。

そして今日の事を夕食の時に義父母に話したお柴は心配されたがもうこの家にお雅は手を出すことはないだろうと告げると義母は安心したように笑ったのでお柴も安心したように笑ったのであった。

夕飯の後に勘之助と二人で月を見ながらお茶している際にこの簪を気に入ったことを勘之助に話した。


「あの時は突然のことに驚きましたが…でもこの簪があれば罪があるものはすぐに見つかる、それはあなたのためにも皆のためになるなら私はこれをつけたいの、何より勘之助様が選んでくれた簪ですもの」

「お柴…君がそう言ってくれるならよかった、私は君になんてもの贈ったと思ったが…そう言ってくれるなら嬉しいよ」

「ねぇ勘之助様…きっとこの簪を作った人はこの力のこと知らないんじゃないかしら」


お柴は簪を外して月の光に照らしながら語る。

この簪には不思議な力があるが恐らくそれはこの簪の製作者の意図したものではないと。

お柴はこの簪を見た時に布で作られているからかとても優しい気持ちになったことを思い出していた。


「どうしてそう思うんだい?」

「お店に並んでたのは四季を象った花の簪としてなのでしたよね?」

「あぁ、俺が行った時には夏の花はもう売れてしまっていたらしいが…他の花も美しかったよ」

「きっとこの簪を作った人は簪をつけた人が花のように美しくなって欲しいって思いながら作ったと思うの…だからあの着物に変わって、私も姿が変わったんだわ」

「じゃああの懺悔していた人達は一体…」

「恐らく竜胆の花の力が強く出てしまったんじゃないかしら…でもきっとこの花はいい子だわ、だって愛助とあの女の子が危ない時に教えてくれたんですもの」


お柴はあの時竜胆の花弁が舞い、二人が危ないと教えてくれたのだと勘之助に話す。

お柴は確信していた。あの時二人の危機を教えてくれたのはこの簪だと。

二人が救われたのはこの簪のおかげなのだと。


「ありがとう、あの時教えてくれて…それにお雅さんに刺されそうになった時に助けてくれてありがとう」

「俺からも礼を言わせてくれ妻を助けてくれてありがとう」


優しく竜胆の花の簪にお礼の口づけをしたお柴と花弁を指で優しく撫でた勘之助はふわりと香る花の香りに、顔を見合わせて笑いあった。



その後ろで二人には見えないが竜胆の着物を着た美しい女が顔を赤らめて照れ臭そうに頬を押さえながら笑っていたのであった。


《えへへ…私、この家に来てよかった、これからも頑張ろう…!》


それは褒められて嬉しそうにする少女の様な笑顔であったがその姿を見ていたのは空から照らす月だけであった。




後日。

お雅は殺人、脅迫、器物の破損、そしてあの少女は彼女が勘之助と婚約する前に出来た別の男性の子供でありそれがバレて家を勘当されており、そのことで少女を虐待していたことも明らかになったがその他にも実行はしていないがその少女に窃盗をさせたり邪魔になった人間を殺させたりとしていたことも判明しその数が両手を超える数であったため即死罪という判決がなされたという。

またあの時少女には意識を朦朧とさせる薬を服用させていたことも後ほど判明した。


その件の少女は診療所で目を覚まして元気になった後に事情を聞いた牟呂屋の女将が引き取り、これからは娘として育てると牟呂屋の夫婦と共に報告に来た。

女将さんは和ノ太が助けようとした子できっと和ノ太が生きていたら同じこと願ったはずだと引き取ることにしたらしい。

その際に喉を焼かれているためもう話せないが夫婦から教えられて字を少し覚えたらしく少し歪んだ文字で「家に落書きしたりごみを散らかしたりしてごめんなさい」と謝罪をし、勘之助とお柴は君がやりたくてやったわけじゃない、幸せにおなりなさいと優しく告げた。


その少女は空色の着物がよく似合うためお(そら)と名付けられ夫婦に可愛がられ、また彼女も恩を返すと真面目にお手伝いをよくしているという。

そして女将は愛助がよく少女の様子を見にやってくるらしく、お空も愛助が来ると笑顔になるのでいい雰囲気で今後が楽しみ!とお柴に話す女将はお空と楽しく暮らしているのか少し痩せていた顔と白かった顔色がよくなっていた。




そしてお柴は…。

牟呂屋の店先で話合う奥方達の中で愛助が駆け寄ってお柴の近くに立つと周囲に聞こえない様に小声で話し始めた。


「お柴、隣町の万事屋がなんか怪しいらしい…どうもきな臭い取引してるかもって話だ」

「≪私も似たような話聞いたよ…どうやら小さな店から不当に金を支払わせてるって話≫」

「お柴ちゃん出番だね!!怪しまれない様に私も一緒に行くわ!さぁ、悪事を暴いちゃいましょう!」


店はこっちよと奥方の一人に手を引かれ歩くお柴に愛助は親分に知らせてくるとお空と駆けて行く。

お柴とすれ違うこの町の人達は彼女を見かけると声を掛ける。


「お!今日も行くのかい!」

「竜胆のお柴の出番かい?頑張っておいで!」

「今日も罪を裁いてきておくれよ!竜胆のお柴!!」


そうあの日の出来事はこの町の人間は皆知っている。

そしてそれ以来この町に犯罪は無いのだ、何故ならお柴が罪を持つ人に近づくと自身から懺悔し奉行所に御用となるのである。これに目を付けた大野親分は試しにとお柴にきな臭い店に行かせた所…なんと店主並びにあくどい事に関与していた店員は全員号泣して懺悔したのである。


それを見た子供達は見回りしながら情報を集めだし、怪しい噂があるとお柴の所へ持って来るようになったことでお柴は色んな噂の場所に出向く事となり、必然的に縁堰の町から犯罪者が消えたのだ。

これにより彼女は竜胆のお柴として名を呼ばれるようになったのである。


「…私いつから奉行様になったのかしら」


そう独り言をこぼしながら彼女は今日の夕飯何を作ろうかと考えながら怪しい噂のある店まで行くのであった。




-------------

清条国 月川城 義晴の執務室にて


「という経緯でこの書簡が来たみたいです…」


執務室にて三九郎の部下の忍びから翡汪国の書簡が来た経緯を聞いていた月ヶ原義晴と三九郎は頭を抱えた。

三九郎の部下もなんとも言えない顔をしている。


「とんでもない力だな、その簪は…」

「今まで一番ぶっ飛んでるじゃねぇか…人の罪を暴くなんざぁ…」

「だがそういう経緯でこの書簡が来たという訳か…懺悔した罪の中にこの国の事があったなら向こうも慌てて送ってきたみたいだな」


主の元へ渡り経った数日で一つの町の治安を改善するなんてとんでもないと三九郎が零せば義晴は獣が唸るような声を出す。

三九郎はこれは宗助を褒めればいいのかまたこんなとんでもないの作りやがってと叱ればいいのか悩んでいるなとすぐに主人の思考を読むととりあえず部下を下がらせた。


「うぐぐぐぐ…」

「まぁ今回はこの簪のおかげで此方も悪い膿は潰せたと思いましょう…それよりも気になることが」

「…この国の噂が早くも翡汪国に流れていることだな?」


三九郎が頷くと義晴は傍に置いていた刃龍を手に取ると部屋を出てそのまま縁側を下りると庭へ出た。

三九郎もその後ろへ続くように出ると義晴は空を見て一言。


「探れ」

「御意に…それと宗助のいる山も守りを強化した方がいいかと」

「頼む…あいつの作るものを狙うやつがいるかもしれないしな…あいつに護衛をつけるのが一番だが…腕が立ちそうなやつは…あ、」


義晴は思いついたとぽんっと拳で手のひらを叩くと三九郎に向き直る。


「太郎を鍛えよう!あいつ力すげぇ強いし宗助の近くにいれるからいい護衛になる!」



「……………………は?」



この日、太郎の運命は本人の知らぬ所で大きく変わることとなったのであった。



-----------------------------

Wiki 天野宗助 作品


四季姫 竜胆の君

現在 警視庁本部が所有し保管している。


花簪 四季姫の系統の一つ。布で薄紫の竜胆が咲く様を象られた簪。

この簪には罪を暴く力があり、所有していた佐藤 柴はこの竜胆の君の力で一時翡汪国から罪人を消し去ったという逸話がある。

そのため現在は警視庁にて罪を暴く力を遺憾なく発揮し、容疑者の取り調べだけではなく汚職した警官の罪も吐き出させているため抑止力として有名。


稀に海外共同捜査にて使われることもあり、その度に共同した国の警察組織から竜胆の君に対して感謝の手紙が贈られる。

※199〇年にて行われた日米共同の捜査にて某国際テロ組織の幹部を取り調べる際に使われ数分も掛からずに幹部が懺悔し、全ての情報を明かさせた功績から当時の米国の防衛大臣から心の底から欲しいと懇願されたという。(当時の防衛大臣と官房長官が二人掛りで断ったことでも有名になった)



また竜胆の君は己を差すに相応しい人物を警察官や弁護士の道に進ませ、その人物が大成すると警視庁に来させて竜胆の花で着飾らせて髪に差させるという逸話から女性警察官が誕生する際に胸に竜胆の花を一輪差して祝福してもらう風習が作られたという。




現在 佐藤 柴を題材にした【竜胆のお柴】という時代劇ドラマがお昼に放送され奥様方の間で流行りブームになっている。



今回、試験的に長い話を一話のまま投稿しました。

恐らくこの文字数の話が今後も多くなる可能性が高いため、一話で全部見れるこの形式にするかもしくは文字数によりページが重くなる又は皆さんの読みやすさ次第では桜吹雪の様に前後編の二つに分けての投稿にしていくかを決めようと思います。


※もし長いようならば後日こちらの章は二つに分けて投稿しなおす予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
大変面白いです。 補足、米国は防衛大臣では無く国防長官かな。
[一言] 突然江戸時代になった
[良い点] 面白かったのにもう読まない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ