スカベンジャー
優雅達はジープで市街地まで移動した。
散乱する腐肉。
アスファルトに染み込む血液。
パサパサに乾いた血だらけの軍装。
それを着ている少し肉がついた遺体。
この中東の一国で、一体何があったのか。
惨劇を物語るその風景を見て、
優雅は漠然とつっ立っていた。
優雅が口を開く。
「生物兵器……」
エリックが、急に優雅の顔に目出し帽を被せた。
「ここらへんは危険なんです、気を付けてください。こんなものでは心の足しくらいにしかなりませんが……」
「ありがとう」
優雅は、エリックが被せてくれた目出し帽を自分の見やすいようにずらす。
すると、目の前に7歳程の、
裸の少年が……
少年が構えるライフルはAK47Ⅲ……?
いや、56式歩槍だ。
56式は、ロシア製ライフルの中国コピーで、一見すると全く見分けがつかない。
優雅は持ち前の視力でその刻印を見切った。
その瞬間、
エリックがアサルトライフルを構え引き金に指をかける。
「待って!」
優雅が声を上げるも、遅かった。
エリックの指が完全に曲がると共に、閃光と銃声が鳴り響く。
裸の少年は糸を切られた操り人形のように崩れる。
「彼はアメリカに雇われた少年兵です」
「私がやらなければ私達は死んでいた。それが軍人としての私の義務だ。彼がもし銃を構えなければ、私は撃てなかった 」
「申し訳ない、ですが慣れてください。アメリカは私達ソ連が国際社会での批判を恐れ子供を撃てないと思い、少年兵を雇っているのです。」
「これは……そんな祖国から請け負った、汚れ仕事だ。私達にしかできないんです」
そう、エリックが熱く語る。
すると、後ろで少年兵に銃を構えていたエゴールが騒ぎ出した。