兵站
心臓が痛む。
まるでノスタルジアという怪物に心を撫でられているよう。
いや、これは痛みとも不快とも言えない新しい感覚なのかもしれない。
身体が痛みに慣れようと、もっと、痛みを欲する。
身体が壊れてしまう……
この痛みよ、怪物よ、
大概にして欲しい。
このままでは兵士として失格だ。
心臓の痛みは右肩にまで広がり、
発砲の衝撃にさえも耐えられない。
このままでは兵士として失格だ。
その兵士は放課後の教室のように薄暗い孤独の部屋で一人、
苛まれるのだ。
この症状に苛まれる兵士は、
この兵士だけではなかった。
2037年──
アメリカが正体不明の生物兵器を用い、とある中東の一国を崩壊させた。
作戦開始からわずか32時間で1個師団を殲滅。
北部や東部に駐留していた旅団が無条件降伏をするも、3時間後に全員が謎の死亡を遂げた。
人口約8400万人の中、約21万人の陸軍兵士が死亡。
しかし、生物兵器を使用したにも関わらず民間人の死亡率は極めて低かった。
この事件で使われた生物兵器は、世界各国の軍事的戦略の体制を大きく変えさせることになる。
近日、その生物兵器の影響で、ロシアでクーデターが勃発した。
ロシア連邦内部の22の共和国は独立、または無法地帯と化し、残された一部の連邦がソ連を名乗り、
ソビエト連邦が復活したのだ。
世界は大きく変わった。