悲鳴
通路の奥から、甲高い悲鳴が聞こえた。
断末魔のような叫びだ。
テレスは、読み込めない現状を把握する為に、柱を伝い隠れながら移動する。
柱の影から、悲鳴があったその場所を覗くと、床からたらたらと流れる赤い液が見えた。
「おいガキ?英語はわかるか」
発言者は、
さっきの男と同じ格好をした兵士だ。
さっきの、鼻に絆創膏をつけた生徒の肩にボウガンの矢先を押し付け、そう言っている。
テレスは理解できた。
これは英語だ。
「許してください許してください許してください……」
脅されている生徒は、日本語でぶつぶつとつぶやく。
「使いものにならんな?」
兵士はその矢先を生徒の頭の前に移す。
テレスは咄嗟に目をそむける。
『ドンッ!』
鈍い音が耳に入る。
テレスは呼吸が荒くなり、
しゃがんで頭を抱えた。
生きていた人間が死んだのだ。
目からは無意識に涙が出ていた。
外からはいつも通りの鳥の囀りが聞こえ、
決して映画のような演出もない。
ただただ非情に過ぎる時が無情な現実を物語る。
足元に血が流れ、
テレスは怖くなりその場を立ち去ろうとした。
「待て!」
テレスの足は重くなった。
見つかったのだ。
「動くな、手を上げろ」
汗がテレスの頬をつたる。
兵士は無線を取り出し、誰かと話し始める。
『ボス、例の銀髪の少女を発見した。どうする?』