アウトオブコントロール
「君は人を殺した。君もまた、自らに殺されたのだ。」
鉄格子の外から聞こえる雨音の中、葉巻を蒸かした初老が拘束された男の前でそう呟く。憎悪に満ちた眼で、拘束された男は初老を睨む。
「こんなことが許されるとでも!?貴様ァ!カーネル!!」
それを聞くも初老は、つまらない映画でも見たような表情で、拘束された男を見下す。
「刑は刑なきを期す」
初老は男の髪をつかみ、無理矢理瞼を見開かせ、咥えていた葉巻の先をチラつかせた。男の顔は汗にまみれている。
「君の世界の半分を壊す。君はもう片方の世界の王者だ。」
2人の男が居る狭い部屋から、魂の抜ける様な悲鳴が永遠と続いた。長く、暗い夜はまだ始まったばかりだ。
……
……
FF39 FF34……
004A 0061 0063 006B……
「さあ、これで完璧だ!」
事務所のような部屋の中で、髭をのばした……といよりかは髭を放ったらかしにしている不潔な白衣の男性がキーボードを叩き歓喜の叫び声をあげる。
「またか〜……」
後ろの椅子に座り本を読んでいた銀髪の少女が、
短いその髪を掻きながらそういった。
「いやいやいや!またか〜とかいうなって!今回の研究はこれまでのくだらないお遊び研究とは訳が違うんだぞ!」
「"マルクス"叔父さんさ……人類の発展において、そんな蚊のうんちみたいな小さい規模の研究って為になると思うの?それよりこれを読みなよ。そんな研究よりグラハム数倍為になるよ!」
少女が"資本論第一巻"をマルクスなる男性に手渡した。
(パラパラとページをめくる)
「えぇ!?……これ全部外国語じゃん……」
「そう!同じ名前のマルクスでも叔父さんとは大違いのカールマルクスの資本論(ドイツ語原文)!」
「俺は英語しかわからんよ……"テレス"は中学生の癖にホント頭いいよな……俺が知ってるだけでも、ドイツ語、英語、ロシア語、 中国語 、日本語、ポーランド語、ベラルーシ語……うわああもうダメだ!テレスがどの言語を覚えているのか思い出すだけで頭がパンクしそう!!」
「まあ、ざっと37ヶ国語は話せるよ〜自慢じゃないけどね〜……ハハ(誇らしげな顔で)」
「俺の兄さんも頭良かったからな……遺伝……?」
「さあね〜」
テレスはそういうとマルクスから本を返して貰い、部屋を去った。
マルクスは頭を毟りながら眉をしかめ、パソコンの置いてある机に帰った。