天気くん
思い付きです。盛り上がりとか無いです……。
それでも読んでやろう! という方はどうぞ。
それは、ある年の六月の日のこと。これはある場所で行われた天気たちの一時の天気を賭けた勝負だ。
「今日こそオレが勝つ! 勝負だ、サンダー!」
「ふん。俺様に勝てる訳がなかろう、サニィ!」
「あ、あの……僕は……別に」
「レイン、もう諦めて戦ってはどうかしら。貴方が嫌なら、六月だけれど私、スノウが雪を降らせますわよ?」
真っ白で何も無い空間の中お互い睨み合い、一触即発の空気を発する二人を見てオロオロする少年。そして、その少年を冷ややかに見下ろしながら闘志を燃やす女性。
最初に宣戦布告をしたサニィと呼ばれた男は、太陽のように明るい赤の髪をしているが、勝気そうな釣り目から覗く瞳はそれに反するかのようなワインレッドだ。服は白地に赤いラインの入ったジャージだ。……そう、ジャージなのだ。近くの公園でちびっ子たちと野球をしているお兄さんのような格好だ。
対してサンダーと呼ばれた男は口元を不敵に歪ませ、黄金色の瞳を雷のように煌めかせている。ふわ、と後ろでひとつに結わえられた黒髪が静かになびく。風も無いのに不自然になびく黒髪もあり、その姿はさながら魔王を体現しているようだ。――服装が眼鏡にカーディガン、ワイシャツという、本を読んでいそうな真面目君だが……。
迫力に欠ける、お兄さんの拳を真っ向から受け止め、魔王(笑)は腕を組み、男を見下すように見る。
そして、その二人を見てオロオロしながらも手を伸ばしては引っ込め、また伸ばしては引っ込め、二人の喧嘩を止めようとするレインという男の子は、空色の髪をしていて、蒼い瞳を潤ませている。ブラウスを着ていて、その右の胸元には、雨のように雫が刺繍されている。下には黒い七分丈のズボンを穿いているが、ブラウスの丈が長く、若干ワンピースのようになりかけており、本人の庇護欲をそそるような仕草なども相まって、女の子のようにも見える。
そのスノウと名乗った女は男の子を雪のように冷ややかな銀色の瞳で、光を反射するように艶めく同色の髪を軽く払いながら見下ろす。色白な肌に映える紅い小さな唇は得意げに少し弧を描いている。白い着物を着ており、紫の帯は女性らしいラインを強調し、妖艶さを漂わせる。肩近くまで着崩された衿からはたわわな果実が零れ落ちそうだ。さらに、胸の下で腕を組んでおり、どこがとは言わないが強調されている。
だが、それぞれがそれぞれの顔を見回すと、手を握りこみ声高にいっせいに言う。
「「さーいしょーはぐー、じゃーんけーん」」
そして勢い込んで手を出す。約一名おずおずとしていたが、皆の勢いに押されますます目に涙を溜めながら出す。
「「ぽん!!」」
天気をじゃんけんで決めるという運任せ極まりない方法で勝利したのは……
「ふふふ……私の勝ちですわね。さあ、雪が降りますわ」
――スノウだった。彼女は嬉しそうに上気した頬を隠しながら上を見る。だが、その空間からは何も見えない。
それでも喜び続けるスノウをみて、再戦を挑むサニィ。
「もう一回だ!」
「ふふ、また勝ちますわ」
「いや、俺様が勝つ」
「ね、ねえ……もうやめない……?」
そしてその後は、ずっとレインが勝ち続け、それでじゃんけん大会はお開きとなった。
***
「ねえママ、いまお外で雪がふったよ」
「何言ってるの、今は六月よ?」
「六月に雪……だと……!」
その雪が降った一時は、都市伝説として語り継がれたり、継がれなかったりする。
了
お粗末さまでした。