はるの月物語_3
「では……」
iPhoneの画面に映る三坂さんからのLINEメッセージを読むため、一呼吸置いたしょー先輩。
額を膝に押し付けたまま耳はしっかりしょー先輩の言葉を拾う準備万端だ。
「『夏祭りって何処の?』、って」
え。
それだけ!!?「いきなり何」的なことを言われると思ってたのに全然違う答えがきた。
勢いよく顔を上げてしょー先輩を見ると、画面を見せてくれた。顔文字、絵文字何もなしの、読まれたままのことが書いてあった。
「場所聞くってことは、少しでも行きたい気持ちはあったりして」
ベッドで寝転がっていた蒼兄も起き上がり、床に座っては首を傾げている。蒼兄の予想の返答でもなかったらしい。
「と、とりあえず返信……」
そう言ったらしょー先輩がiPhoneを渡してくれた。
長く息を吐き、大きく息を吸うと画面に目を向けて「よし」と心の中で気合をいれる。応援のつもりなのか、隣でしょー先輩がガッツポーズをしている。
三坂さんにこう返信した。
『星屋市のだよ。今日の5:00くらいからやってるらしくて(`ω´ )o』
顔文字はもう、付けるのが癖になりつつある。
絵文字、顔文字のない文だけだと相手にキツイ方に取られることがありそうで……。
三坂さんが絵文字も顔文字もつけないのは、それはそれでいい。三坂さんだし。
送信してホッとした息を吐くと ピロン と、LINEが鳴る。画面を見ると三坂さん。
早っ!!!!
『あ、その時間は塾だ。ごめん、行けない。』
「だよな、やっぱりすぐには進展しないかー」
隣から画面を覗き込んできた蒼兄が長いため息を吐きながら頭をガシガシと掻く。
そりゃあ、話したことないし、同じクラスメイトってことは分かってくれてはいるだろうけど。……ちょっと期待してしまった。
もしかすると初めて会話するきっかけ、どころか"クラスメイト"から"友達"になれたりするんじゃないか、って。
俺がなりたいのは友達じゃない、その先の関係だけど。
「あーー……」
顔を両手で隠して唸ってると、また ピロンと鳴った。
『お誘いありがとう。別の祭り行けたらいいね』
「うわあああ!!」
「うるせえ!」
蒼兄に叩かれた後頭部がジワリと痛いが、手でさすりながらもう一度LINE画面を見る。相手の顔が見えない文章だけのやり取りだけど……。
無意識に上がってしまった口角に俺は気づけず。隣で俺を見ていた2人が顔を見合って笑っていることも分からなかった。
【はるの月物語。】__end__