六話:目覚め
健司、五月、詩歌の三人は成二を保健室まで連れてきてベットで寝かしていた。三人の表情は皆重苦しくジッとうなされる成二を見ていた。その時沈黙を破って詩歌が口を開いた。
「私の聞き間違えならいいんですが、成二君気を失う前に『滅びを知らない神々の剣』って言っていませんでした?」
「確かに言っていたな・・・。」
五月は肯定して頷いた。そして代わる様に健司が話し出す。
「滅びを知らない神々の剣、第一の神々の剣『炎天下』その力万物を破壊し万物を再生す・・・たとえ創造主さえもこの理より外れることは出来ず・・・。まさかそんな厄介なもん持ってたとはな」
健司の最後の言葉に五月は驚いた。
「まさかお前、成二の神々の剣を知らなかったのか!?」
「どうやって知れって言うんだ?だいたい俺は成二が神々の剣関係あるのは知ってたが、六つの神々の剣のうちどれに関係しているかを知ってるなんて誰にも言ってないぜ?」
「だが、お前はっ!!」
言い争いが起きそうになったところで
「二人とも黙りなさいっ!!」
と言う詩歌の声が轟いた。そのあまりの迫力に健司も五月も思わず黙ってしまう。
「ここで言い争っても何もおきないのは分かってるでしょ?」
二人は顔を見合わせコクコクと頷く、それに満足したのか詩歌は息をふぅ〜とつくと「成二君がおきるように皆で祈りましょう」と気を取り直して言った。流石の健司も「少しイライラしてたんだ、ごめんな」と言ってその場に座り込んだ、保健室にはまた静寂が戻り時計の針が進む音が時を刻んでいた。
不意に成二が寝返りをして左腕がぶらりとベットからたれる、その時ベットの鉄パイプと腕にはめてあった何かがぶつかり甲高い金属音をたてた。三人は一斉に成二の方を向き腕につけてある物を見て絶句した。
「何で、何で成二がこれを持っているんだ!?」
「畜生っ!!今まで何で気付かなかったんだっ!!」
「成二君貴方っていったい・・・。」
三種三様の言葉が保健室に響き渡るがそれも一瞬の事だった。
成二は放課後に目を覚ました、成二が起きたときに目にしたのは付きっ切りで看病をしていた三人の姿だった。成二は三人に恥ずかしそうに「迷惑かけたな」と言ってベットから立ち上がった。そして「んじゃ皆帰ろっか」と言ったが誰も返事はしない、思いのほか三人の顔色が先ほどより暗く感じられた。どうしたんだ?と声を掛けようとしたところで詩歌が成二に話し掛けてきた。
「成二君、これから私たち三人について来て欲しいところがあるの・・・来てくれる?」
「良いけど・・・。」
成二の言葉に「ありがとう」と詩歌は言った。そして成二は三人の後について行った。
学校の校門の前には一台の車が止められていた。
「この車に乗ってください」
詩歌の言葉に成二は大人しく従い車に乗り込んだ。次に詩歌が乗り込みそして五月が乗り込み最後に健司が乗り込もうとして半身乗り込んだところで車が急発進した。
「ぐはっ!!」
健司は車の外に投げ出され二、三回転したところで地面に転げ落ちた。
「運転手さんいったい何やってるんですか!?」
問いただそうと成二が運転手の顔を覗き込むと運転手の顔は女で口元は笑っていた。
「すみませんね、足が滑ってしまって」
と女は罪悪感の欠片も見せず、満足そうに言った。成二は「絶対わざとだ」と思いながらも長生きをしたいと思い何も口出ししなかった。
そして少し走ると車は神社の前に止まった。
「ここが、目的地?」
半信半疑に五月に問うと「そうだ」と短く肯定した。
そして成二は車から降りると二人に神社の中まで案内された。
「んで、ここで質問なんだがどうして俺はここに連れてこられたんだ?」
「姉さんが来るまで少し待っててください」
成二は詩歌に言われたとおり待った、すると奥の扉が開きそこから巫女の服装をした女性が歩いてきた。
「う、運転手!?」
思わず叫んでしまった成二に笑みを浮かべながら女性は自己紹介をする。
「私の名前は水野幸子、詩歌の姉です」
驚きのあまり言葉も出ない成二だったが驚きを飲み込み先ほどの質問をしてみる。
「どうして俺を呼んだんですか?」
「その前に聞きたいことがあります、あなたの腕についているその腕輪いったい何処で拾ったものなんですか?」
その質問に成二は黙ってしまう、そのまま結構な時間が流れついに成二は言葉を紡ぎだした。
「実は俺、八歳以前の記憶が無いんだ・・・その時には俺の腕にはこの腕輪がついていて、だから俺にもいつこの腕輪を手に入れたのか分からない」
その言葉に幸子少し困った顔をしたがポンと手を叩く
「記憶を取り戻したくありませんか?」
「そりゃ取り戻せるなら取り戻したいけど・・・。」
出来ないから困ってるんじゃないかと肩をすくめた成二だったが、そんな成二に幸子がいきなりお札を投げつけた。わけもわからず受け止めようとしたが思いのほか速く頭にあたった。と同時になんだが急に眠気が湧きあがり成二はそのまま眠ってしまった。
「ね、姉さんいきなり何してるんですか!?」
驚きのあまり成二に駆け寄ろうとした詩歌を幸子は手で静止させた。
「少し魔法で記憶を蘇らせてあげようと思ってね」
そう言って幸子は札を取り出してそれに筆で何かを書くと成二の頭に押し当てながら唱えた。
「彼の者の記憶を蘇らせて・・・。」
すると札が一瞬で燃え尽きた。
「なっ!?」
驚きの声をあげると同時に幸子はその場から飛び退く、刹那成二から白い炎が噴出し包み込んだ。
すぐに三人は神社から出る、と同時に白い炎が神社の屋根を衝き抜け神社を包み込む。
「いったい何が起きてるんだ・・・。」
「成二君は、成二君はどうなったの!?」
「二人とも何か来る、準備しなさい」
幸子の言葉に五月は真剣を構え、詩歌は札を取り出す。
そして神社から人影が現れる。
「この世界に出るのは何年ぶりだろうな・・・。」
その声は成二のものだったが口調は全く違っていた。そして人影は三人に向かって歩み寄ってきた。
その姿は成二だった、だが成二は炎に包まれているにもかかわらず何処にも焼けた形跡が無かった。
「お前はいったい誰だ?」
五月の言葉に成二の形をした者は律儀に答える。
「我が名はモア、我が主レノンに仕える白き炎の化身なり」
「では、モアとやらに問う。レノンとはいったい誰だ?」
その言葉にモアは無表情で答える。
「貴様等の前に存在するこの身体の持ち主こそレノンなり、そんなことも知らずに我を解き放ったのか?」
そう言うとモアは右腕を振り上げて勢い良く下ろす。すると背後で燃えていた白い炎が膨れ上がり津波のように三人を襲った。詩歌は札を投げて対抗しようとするが一瞬で燃え尽きてしまう、そして幸子の札も同じように燃え尽きてしまった、それを見ていた五月は真剣を投げ捨てると新しい刀を取り出した。紫色の光を放つ怪しい雰囲気の刀、反転狂月だった。
「そんな炎、切り裂いてやるっ!!」
そう言って二人の前に出ると反転狂月を振りかぶる、怪しい音を立てながら白い炎を押さえ込む反転狂月を手に五月はモアに笑みを浮かべて見せた。
「反転狂月か、中々の業物を持っているようだな。ならば我も使わせてもらうとしよう」
そう言って腕輪のついている腕を前に突き出す。
「滅びを知らない神々の剣、現れろ『炎天下』っ!!」
すると腕輪は形を変え大剣へと変わる、そしてその剣から放たれる眩い光によって辺りが真昼間のように明るくなる。
「まさか、本物の炎天下とは・・・。」
五月の顔が苦虫を噛み潰したようになる。
「ついでに我の本当の姿を見せてやろう」
そうすると白い炎が集まり龍のようになった、龍は炎天下に纏わりつくと咆哮をあげる。と同時に炎天下は振り下ろされ大地を揺らす白き炎の龍の一撃が三人に迫った。避けることも防御することももう遅い三人はもはや死ぬしか道が無かった。がその時銀色の槍を持った男、八神健司が三人の前に立ちふさがる。
「崩壊閃っ!!最大出力だっ!!」
その言葉と一緒に白い炎の龍は崩壊閃に触れたところから崩壊していく、だが崩壊させている本人さえもその熱気で皮膚が焦げていた。そしてモアの攻撃を全て受けきると同時に健司はその場に倒れこんだ。
「もはや見事としか言いようが無いな、先ほどの攻撃を受けきるとは・・・。敬意を払って苦しませずに一瞬で終わらせてやろう。」
そう言ってまたモアが炎天下を振り上げた時に五月は走っていた。
「健司が作ったこのチャンス、無駄にしてたまるかっ!!佐山流剣術壱の型轟っ!!」
渾身の一撃を放った五月だったが炎天下で受け止められてしまう、とそこに弓矢を取り出した幸子の姿があった。
「実はね、これも十六宝具なの、名を蒼天弓。貴方なら知っているわよね?」
先端に札をつけた矢は音速よりも速くモアを襲った、だがモアの人を超えた動体視力により矢を掴まれる、がその時札の効果が発揮され腕に電撃が走る。
「これで両腕は封じたわ、詩歌後は頼むわよ」
頷く詩歌の手には似つかわしくない左手用短剣が握られていた。
「その柄で思いっきり殴ってやりなさい」
幸子の言葉に走り出す詩歌だが、モアもただではやられなかった。白い炎を全て詩歌に差し向けたのだ
突然のことで反応できない詩歌だったがそこに崩壊閃が飛んできて炎を崩壊させた、後ろ重くと身体を無理矢理起こして崩壊閃を投げた健司の姿があった。もう詩歌を止めるものは無かった、詩歌は一気にモアに駆け寄ると頭を思いっきり叩いた。
「ぐっ、」
という声をあげてモアは倒れた、そしてモアが起き上がる気配は無かった。
戦いが終わり、詩歌は急いで健司の怪我の手当てをした。包帯を巻き終わると詩歌は先ほどの左手用短剣を取り出して唱える。
「癒して」
すると左手用短剣は緑色の光を放ち、健司の火傷はあっという間に目立たなくなった。
「もしかして・・・万物を癒す神々の剣、『輪廻転生』?」
「そうです、まだまだ万物を癒すってことは出来ない半人前ですけど」
とおどけながら詩歌は答えた。
「しかし、全くあんた等は問題ばっか起こして・・・。きっと他のやつ等も今回の騒動で気付いちまったぜ?」
健司の言葉に唇を噛む三人、
「結界張っといたから外への被害とか情報漏れは心配するな、とりあえずこれからのことを考えたい。俺の家まで来てくれ、神社が火事で壊れちまったからじゃしょうが無いだろ?」
そして健司は成二をおぶると三人を連れて家まで帰っていった。




