二話:再開
AM8:52二年三組に向かって廊下を走り抜ける青年がいた。
ピシャッという勢いの良い音を立て青年は扉を開ける。
教室中の視線が一気に青年に集中する、青年は苦笑いを浮かべて席に着こうとする。
「おい、黒須お前が遅刻なんて初めてだな・・・何かあったのか?」
担任である木下響が成二に心配そうに聞く、だが成二は「いろいろありまして」と答えるだけだった。
「さて・・・さっきも説明したと思うが黒須がいなかったのでもう一度説明しておこう・・・まだ来ていないが今日中に転校生がやってくる、途中で授業に合流するかもしれないので困っていたら助けてあげるように・・・さて俺からの説明は以上だ、あぁ後五分で一限目が始まるので遅れないように」
そこまで言うと響は教室から出て行った。
「おうっ!!成二」
話が終わるなり成二に一人の青年が話し掛けてきた。
「何か用か?」
「成二が遅刻なんて在りえない事だからな」
「在りえない事って・・・俺も一応人間だぜ、失敗ぐらいする」
「ホントか?」
「あぁホントだ」
疑い深そうに青年は成二を見ていたが納得したのか離れていった。
「それにしても健司の野郎ありえないなんて酷いだろ」
ぶつぶつ言いながら成二は教科書をエナメルバックから出して授業に備えた。
一限目は物理だった、まったく分からないのに話ばかり進んでいく授業に飽き飽きしながら成二は時計をチラリと見た。
時間はAM9:15まだまだ終わりそうもない、成二はすることも無いので後ろのロッカーへ行き何故か入っている枕を取り出し机に置いて寝始めた。
成二が起きたときには、四限目の終了を知らせるチャイムが鳴っていた。
そこへ健司がやってきた、健司は殆ど強引に職員室まで成二を連れてくる。
「なんだよこんなところに呼ばれるようなこと今日はまだしてないぜ」
「その質問もどうかと思うが・・・まあいい、さっきヒビセン(響先生のあだな)が転校生らしき女の子を連れて案内してるの見たんだ」
「転校生って女の子なのかぁ・・・でもなんで俺はここに連れてこられたんだ?」
「成二は鈍いなぁ・・・いいか良く聞け転校生は二人で二人ともかなり可愛い女の子なんだ、その姿を成二にも拝ませてやる為に連れて来てやったんだ」
成二は微妙な表情を浮かべて
「なんつぅーか・・・ありがた迷惑?」
健司はその言葉を無視して職員室の扉を静かに開けて這う様に忍び込む
「いいか成二絶対に大きな声出すんじゃねぇーぞ・・・コバセンに見つかったらただじゃすまねぇーからな」
「その辺は熟知してるつぅーの」
そして女の子の話し声が聞こえる位置まで来た。
―――何だか最近聞いたような声だな?―――
成二は密かな疑問を抱きつつ進んでいった。
「ここから見えるぜ」
「何がだよ」と言いたくなる衝動を抑えて成二も覗き込む
だが女の子を見た瞬間成二は
「あっ!!」
という驚きの声を上げてしまった。
職員室内の全ての視線が成二とその下にかがんでいる健司に注がれる、
「あっ!!あなたは公園の・・・。」
女の子の一人が言葉を発するがそれを塗りつぶすようにもう一人の女の子が叫んだ。
「お前は詩歌に触ろうとした変態野郎っ!!」
この二人の女の子は公園であった詩歌と五月だった。
「誰が変態だっ!!何もしてねぇよっ!!」
「黙れ黙れっ!!その危ない視線を私たちに向けるなっ!!妊娠するだろうっ!!」
「てめぇ・・・言いたいことはそれだけか・・・。」
怒りに肩を震わせる成二
「やる気か?いいだろう公園での決着ここで付けてやる」
そう言って五月も何処からか竹刀を取り出す。
「一撃で決めてやるっ!!佐山流剣術壱の型轟!!」
五月は竹刀をしっかり握り回りにある机や椅子を巻き込みながら竹刀を振りぬいた。
女の力とは思えない力で振られた竹刀は阻むもの全てを蹴散らすかに見えた。
「効くかぁ!!」
成二の怒号とともに鈍器がぶつかり合った様な鈍い音がした、
「お前・・・人間か?」
そう呟いた五月の前には先ほどの攻撃を腕で防御していた成二の姿があった、金剛を使った成二の腕に当たった竹刀は公園の竹刀のように根元から折れていた。
「そんな物じゃ俺には傷を付けられないぜ・・・何てったって俺の体は鉄みたいに固いからな」
ここぞとばかりに五月を馬鹿にする成二だったが次に五月が取り出したものを見て驚いた、
「鉄か・・・ならこの金属バットならダメージを与えられるかもしれないな」
そう言って何処からか取り出した金属バットを振りかぶる五月、慌てて金剛を使った成二だが足にまで力を入れていなかったため吹き飛ばされる。
机に頭から突っ込む成二・・・それを笑う五月、ノックアウトしただろうと思い五月は金属バットをしまおうとする。
「つぅ・・・なかなかやるな」
その声を聞いて五月は成二を吹き飛ばした方向を見る、そこには机を蹴り飛ばして出てくる成二の姿があった。
「なっ!!無傷」
あちこち制服はボロボロだったが成二の破けた服のしたの体には傷はおろか痣一つ出来ていなかった。
「しかし金属バットまで持ってるとは計算外だったぜ・・・。」
と言った瞬間その場にいた成二の姿が一瞬にして消えて五月の背後に現れた。
「仕返しだ」
と言って成二は五月の鼻を軽く摘む、五月が怒り振り返ってみるがそこには成二の姿が無く詩歌の隣に立っていた。
「ありゃりゃ・・・成二が本気になっちまったな」
と今まで傍観していた健司が呟く
成二の使った消えるような移動法は黒須流奥義である神速
神速とは初速から最高速へ一瞬にして移る移動法で100Mを11秒前半で走る成二が使うと消えたように見えてしまうのである。
だがこれをまだ完全に習得しきれていない成二には、最高速を出すことが出来ずしかもかなりの負荷が足にかかるため長時間は使えない。
ついでに黒須流奥義は後一つありそれも神の文字が技の名前の中に入っている
「詩歌に・・・寄るなっ!!」
そう言って金属バットを突き出すが怒りによって踏み込みがずれて詩歌の方向へ金属バットが繰り出される。
「この・・・馬鹿がっ!!」
成二は怒号とともに詩歌を庇う、詩歌を庇ったせいで金剛のタイミングがずれ鈍い音とともに成二のわき腹へ金属バットの先端がめり込む。
「ッッッッッ!!!!!」
成二は声にならない絶叫をだした。
五月はすぐさま金属バットをしまい成二に駆け寄った。
「お前の体は鉄みたいに固いんじゃなかったのか!?」
「慌てててタイミングを取るのを忘れちまった。」
と虚ろな目で答える成二
「し、しっかりしろっ!!きゅ、救急車を頼むっ!!」
その声を聞いた教員の一人が壮絶な戦いから我に帰り急いで携帯で救急車を呼んだ。
「馬鹿だなぁ・・・こんなんで救急車を呼ぶなって・・・。」
そう言って五月の頭を弱々しいチョップで叩いた後成二は体を無理矢理起こし始めた。
「無理は止めろっ!!」
「そうだ成二さっきのはいくらなんでもやばい」
二人の静止を振り切って立ち上がった成二は
「平気平気」
と言ってその場に倒れた。
成二が目を覚ますとそこには涙で目の腫れた五月と缶コーヒーを飲んでいる健司とタオルを交換する詩歌の姿があった。
成二が目を覚まして最初に聞いた言葉は五月の「ごめんなさい」だった。
あの後職員室で詩歌に成二に助けられたことを聞いた五月はひたすら謝り続けていた。
「良いって良いって・・・それより三人とも学校は?」
「俺と詩歌って子は早退で良いってさ」
「私と貴方は三日間の謹慎だって」
「三日で済んでよかったよかった」
と笑って答える成二
「あぁそうだ、成二今日俺等三人この病院に泊まっていくからな」
―――・・・今こいつなんて言いやがった?―――
「えっと・・・はい?」
「だから泊まるって」
「ちょっと待てっ!!なんで泊まるんだ!?」
「俺は友達として、この二人は原因を作ったとしてだって」
「いやぁ〜許すから帰ってくれないか?」
「う〜ん・・・却下」
と言うことでこの後何度か成二が健司に抗議したが受け入れてもらうことはなかった。
その夜成二の病室では、自己紹介が行われていた。
「俺は八神健司、成二とは小学校三年の時にこいつが転校してきてからの付き合いでこいつのことなら殆ど分かる」
「私は佐山五月、詩歌とは生まれたときからの仲で友達兼護衛で一応佐山流剣術っていう剣術の継承者」
「私は水野詩歌、家業で巫女をしてます。」
「・・・。」
「おい次は成二の番だぞ?」
「仕方ないか・・・俺は黒須成二、北港高校に通う少しからだの丈夫な以外至って平凡な高校生だ」
その説明を聞いたとき五月と健司から冷ややかな視線が注がれた。
「な、なんだよ?」
「体が丈夫って言っても限度があると思うけどね・・・。」
「成二が言わないなら俺が言っても良いんだぜ?」
成二は唸るように考え込み一言付け足した。
「黒須流の継承者だ」
「じゃあさっき戦った時の技ってその黒須流の技?」
「まあな・・・始めてあった時に使って竹刀を折ったのが神威で職員室で攻撃を受け止めて竹刀を壊したのが金剛で最後に使った移動法が神速」
「質問いい?」
「何だ?」
「最後に詩歌を庇った時金剛を使わなかったのは何で?」
「金剛は一瞬しか使えない技でさっき詩歌ちゃんを庇った時は金属バットから目を離したせいでタイミングが取れなくて使えなかった。」
「なるほどねぇ・・・。」
「さてさて自己紹介も終わったところでトランプでもするか?」
そう言って健司は懐からトランプを取り出した。
「大富豪でいいよな?」
そして四人は大富豪やババ抜きやポーカーを楽しんだ後眠った。




