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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

デスゲームだと思ったら宇宙人の手先になってたんだが?

作者: 春猫

 デスゲームをなんとかクリアしたと思ったら、日本が世界相手に宇宙人の尖兵となって戦争をしかけてたでゴザル。

 


 何を言っている・・・・・・かというと、まあ、これが俺の経験したというか、現在進行形で更に経験している状況なんだが、まあ、なんというか、人間って「慣れる」もんなんだなぁ、というのが今の俺の感想だ。


 「出雲08出撃する!」


 「ご武運を!」


 ボカロベースに宇宙人の技術で作られた管制AIを、更に日本人が魔改造したオペ子ちゃんの声に見送られて(映像データもしっかりあって、胸揺れどころか呼吸まで再現、それどころか通信相手の声の調子や内容によっては驚いたり怒ったり笑ったりもするという実に「日本人らしい」仕様なのだな、これが)、キックペダルを蹴り、左手のジョイスティックで機体制御、右手のジョイスティックで火器管制を行いつつ空へと飛び立つ。


 日本軍の制式兵器、日本人以外誰も本気で作ろうとは思わないであろう人型二足歩行タイプ飛行メカ「翠鸞」がその名前の由来となった緑色の粒子光を翼の様に広げて蒼空へ飛び立っていく・・・ってなんで俺が傍観者視点で語っているのかは分からないというか、永久の謎というか、話の都合というか、メタネタ自重というか・・・・・・まあ、なんとなくのノリだ。


 地球人にはあと100年かけても完成させる事は難しかったであろう慣性制御を搭載した機体はGがかからない。ロボものにこだわりのある一部層はなんだか知らんが気に入らないらしい、それが。

 乗っている方にしてみればブラックアウトやらレッドアウトなんていう、命に関わるトラブルの発生も抑えてくれるのだ、文句を言うなんて事は有り得ない。

 「偉い人にはわからんのですよ!」と文句も言いたくなるが、日本人の中で偉い人でも上に宇宙人がいるんで、良くて中間管理職、実質、現場主任みたいなもんなんでだから、台詞が不適当になってしまうのが悲しいなどと俺は思うんだが、どうだろう?


 緊張感が無いって?


 そんなもんデスゲームで使い切っちまったよ、ホント。


 リアルで撃墜マーク増やす様な事をしても良くある創作とかの様に吐いたり欝ったりはしなかった。

 そういうのが苦手な連中と言うか対応出来ない層は、職務というか「都合」上、中に入らなかった人たちを除けば「中」に入ったままだ。


 あの、永遠の闘争が続くVRゲームの世界の中にな・・・。





 ◆

 ◆





 ラノベやアニメなんかで概念としては知られていたVRゲームが現実のものとなったのは、俺が一浪の末にそこそこ周囲に言い訳の出来るレベルの大学に入った年の夏休み前の事だった。

 

 フィクションみたいに一企業だけでなく、「日本」という国が全面的に国家プロジェクトとして作り上げた「と言われていた」VRゲームは、前置きも事前のワクワク感も無しに唐突に発表され、「国民に」提供された。


 後から考えれば色々とおかしな所もあったが、瞬く間に怒涛のごとく押し寄せる情報と、それに喚起された人々の盛り上がりに冷静に判断が出来る人間は少なくとも一般層では皆無に近かったろう。

 俺も周囲同様に盛り上がり、「日本人に生まれて良かった!!!」と雄叫びを上げたものである。

 いや、若かったな、ほんとに。


 まあ、若くないおっさんやら、おばちゃん、爺さん、婆さんなんかまで夢中になってしまったのだから、若さのせいというだけでも無いと自分を慰める必要も無いか・・・その後の事を考えると。


 このVRゲーム、日本国民なら誰でも一定年齢に達し、一定以上の継続プレイが可能な健康状態ならば、「無料でプレイ」出来る事が発表されていた。


 基本はRPGというファンタジーベースなんだが、釣りもヨットもクライミングもダイビングも出来れば、皆が自分の見たい位置から見れるライブコンサートやら(演算処理で自分以外は観客群集として、適当に配置されて見えるという主観ベースだった、近くに知り合いが居れば話や肩を組んだりも出来た)、一流シェフの料理やらも体験出来るとい話だったし、実際出来た、うん、腹いっぱいにならずにそれこそ飽きるまで美食を食うというのを中で大金を入手した際にやってしまった俺が言うんだから間違いない。

 

 このVR専用の機体というか筐体が必要であり、普通に買おうと思えば戦車や戦闘機レベルのお金だという話で、実際に「技術を寄越せ」と言ってきた諸外国にはその価格で「リバースエンジニアリングなんか出来るもんならやってみやがれ」とブラックボックスも何もなしで売りつけ、それが国民へのVR提供の資金にプラスされたなんていう話も後で(つまりはゲームからの脱出後)聞いた。

 色々な種明かし後の話だから実に性格が悪いなぁと苦笑いするしかなかったものである。

 宇宙人による完全オーバースペックのVR機、そう、既にこの時点で日本政府は宇宙人と接触済みで、宇宙人主体、日本人協力による「兵士促成シミュレーション」としての側面がこのVRゲームには組み込まれていたのだった。

 「なんだってー!!!」と叫び声を上げる様な人たちにすら想定不可能な荒唐無稽の、だがこれが現実という「ある意味、巻き込まれる側の一般人で俺ラッキーだったんじゃね?」と思わされてしまうような状況が当時の日本では起こっていたのだそうだ。


 元々が地球人類はSFで良くある宇宙人による兵士的ユニット開発の為の遺伝子改造という事が行われた結果の産物だったそうで、「収穫」に来た宇宙人のお眼鏡に適ったのが日本人だったという結末。

 ミリオタなんかが「アメリカ人の将軍、ドイツ人の参謀、日本人の兵士の最強軍隊」とか言ってたが、宇宙人が欲しいのは将軍でも参謀でも無いわけで、そう考えると日本人が選別されたのは理に適っている。

 キリスト教やらイスラム教なんかの宗教選別も無く、ゆるい宗教観とそれなりにシビアな倫理感を持っている点も宇宙人にとっては都合のいい事だったそうだ。

 大幅な再調整が必要なく「使える」兵士。


 対「日本以外」というこのチュートリアルラストステージが終わると、実際に宇宙人の組織に「兵士」として日本人が組み込まれていく事になる。

 兵士にするにはボケ過ぎてた平和主義も、仮想「デスゲーム」・・・うん、条件満たさないとログアウト出来ないだけで、ゲームの死≠現実の死だったそうだ、ただ、「改善不能な質の悪い兵士」と看做されたクリア以外のログアウト者は「捨て駒」や「特攻兵器」逝きだったって話なんで、ゲーム自体に殺す仕組みがあるよりもっとえげつないだけだって話だとも言えるのが、なんともやり切れない話ではあるが、デスゲームだと明らかになった直後、一定期間後の強制ログアウトまで、一部の暴走した連中が「やってた事」を考えると「自業自得」だとも言えるわけで、そういう事は単に思考ゲームとしては頭に過ぎるが「中」を経験した後だと別になんとも思わない。

 捨て駒が必要な事態ならば、「そういう連中」から優先的に割り振られるべきだという意味で当然の事だとは思うが。やり切れないと先ほど言ったのはいわゆる日本人的外面偽善というやつだ。ほら、あるだろう、本心では決して思って無くても、その場ではそれが望ましかったりして、そういった事を言ってしまうって経験が?

 

 まあ、そういった裏の思惑やらなんやらを知らぬまま、俺たちは当日を迎えたわけだ。



 前々から「工事が多いなぁ、また税金の無駄遣いかよ!」と思っていた周囲の公共施設や公共性の高い建物の改装工事。

 これが国民それぞれがVR機に接続出来る環境を作り、提供するものだと明らかになるとネット掲示板やらつぶやきやらに「政府GJ!」の嵐が吹き荒れた。

 金持ちやら大手企業やらなんかは自前のVR設備を持つところもあったが、発表にはなったものの販売ルートやら仕様やらは知らされず、それでいてVRゲームの内容や面白さは伝わってくるという「餓えた」状態にもたらされたその情報。

 「本当に、誰でも『無料』で出来るんだ・・・」政党やら社会やら大人やらから騙され続けてきたと感じる人間が多かったからこその爆発だったとも言える(結果、違う意味で騙されてたのは、もうなんて言っていいやらなんだが・・・)。


 

 俺も近くの区役所に併設されたVR施設に事前に送られてきた葉書(携帯のメールでも可になってたがせっかく送られてきたもんだし)と身分証明(の免許証)を持って、既に出来ていた列に並び(並ぶのに飽きたのかアホみたいに喚いてたDQNがこの時点で警備に来ていた警察官に排除されたが、あいつ特攻兵器の第一陣送りだったんじゃね?)、窓口で受付を受けVR機器に関する説明を受け、SF的という陳腐な言葉でしか説明出来ない(とは言っても現実でこれまで見たことのない素材、形状のものを他にどう言えと?)VRベッドに横たわり、ゲームへとログインした。


 このログイン時に既に時間加速が起こっており、ここで加速によるズレから来る「VR酔い」を起こして気持ち悪くなった人もかなりいた様でログイン時のスタート地点である広場(ここにもコンサートと同じ技術が使われていて、主観での見た目より多くの人間がその場に居たらしい、ま、実数で7,000万人以上だったって話だから、普通に処理してたら高校生クイズのスタジアム○×クイズより酷い状態になってだろうし、ある意味必然か)にへたり込んだり、座ったままだったりする人たちの姿も見受けられた。

 中で俺が過ごした時間は15年、外に出た時の経過時間は4ヶ月だった。


 外見は性別以外いじれる為(とは言っても体型面でいじり過ぎると「歩く」レベルでも訓練が必要になってしまう為、あまり体型はいじり過ぎないよう事前の説明だけでなく、ログイン時の外見調整ガイダンスでも説明されてた)、俺くらいあっさりと入った人間(元の自分ベースにプチ整形プラス美容院レベル)は少なかったようで、最初の説明までは客観的に見ればかなり待たされたんだが、ステータス画面やら視界の傍らにあるアイコンやらを見ていた俺はそれほど時間経過は感じなかった。

 はしゃいでるヤツ、自分を「作って」クールにしているが口元がにやけているヤツ、良く分からない感じでぼーっとしているヤツ、元が中高年か老人なのか若い肉体を試す様に動かしてはニヨニヨしてるヤツ、色んなヤツが居た。こちらの視界と向こうの視界で見えている人間が違うなんて事も珍しく無かったようだから、こっちは見えていてもあちらからは見えていなかったヤツも居た事だろう。



 そして始まった「自称」デスゲーム。

 今は俺の生活に馴染み深い存在になっているオペ子ちゃんのお披露目でもあった。

 思えば酷い役割を与えられたものである。

 まあ、自分がやらせる立場だったら、中身に自分が入って説明する気にはなれないだろうから、理解は出来るんだが、こうして身近な存在となった彼女にそういう事をさせた当時の政府、運営サイドには今でも憤りを感じちゃったりする事も無くも無い。


 怒号が直ちに湧き上がる程は周囲のオタ率、DQN率が高くなかったらしく、呆然とはしている人間は多かったものの、それを演出と思って普通にゲームを始めるものや、「まあ、取り敢えず色々やってみてそれから考えよう」と思考放棄をするヤツなんかも居て、まあ、最後のは俺なんだが、パニックには何故かならなかった。

 

 確かにログアウトは出来なかったが、フィールドに出て雑魚いモンスター(国民的RPGの文法に従ったプルプルゼリー系だった)を倒し、金と経験値を得て、スキルを試す為に次のモンスターに向かい、攻撃を受けてから「そう言えば回復アイテムとか買ってなかった!」と慌てて町に戻り、復帰後の最初の戦闘で攻撃を食らって買ったばかりの回復薬を飲んで「なんでバナナ味?」とハテナマークを浮かべ、気持ちいいくらいいい手応えの攻撃が出来たと思ったらクリティカルヒットだった事に喜んでる内に経験値が貯まって初のレベルアップとなった。

 

 うん、「デスゲーム、なにそれ食えるの?」的に楽しんでました。

 俺と同じヤツは結構居た。

 周りはまた同じ様に調節されてたから一定数しか見えなかったけど、実際には周囲に数万人単位の人が居たんじゃないかな?


 最初の内は人型、人に近い形状のモンスターは出てこなかった。

 その辺りは徐々に慣れていくように作られてたんだろう。

 頭身が違うゴブリンや、違う生き物の要素の入ったライカンスロープ、スケールの違う巨人や小人、亜人同士の戦争に巻き込まれるなんていうイベントもあったし、盗賊やら邪教団などの完全な人間タイプも進行に従って登場してきたが、その頃には躊躇したり悩んだりはしなくなっていた。

 攻撃が決まる、相手を倒す、その辺が「気持ちよく」作られていたせいもある。

 コンボや派生コンボなんかも「コツ」を掴めば比較的簡単に出たし。

 技術面では宇宙人の技術なんだろうが、その辺のゲーム性は日本人のゲームが良く分かってる人間が作ったのが中で感じられた。


 進むにつれて強大になっていく敵、大規模な戦闘は戦争レベルに、そうして突如として理不尽なまでに凶悪に強いモンスターが登場した時、ゲームの中の封印が解けた。


 機械の神、古代の超兵士にして超兵器「翠鸞」の登場である。


 「あれ?」と思った人、うん、その引っかかりは分かる。

 現実で日本が使ってる機体がなんでVRに出るんだって事だろ?


 この翠鸞、宇宙人が彼らの戦争に使っているものとほぼ同じものなんだ。

 VR中での操縦システムは現実と同じ、それだけでなくVR中でのパーソナルデータが吸い出され、俺みたいに現実に復帰して戦場に出ている人間の機体にはそのデータが組み込まれている。


 シミュレータと補助AI作成を本人にまったく意識させないままクリアさせてしまってるんだな、流石宇宙人。

 ゲーム中の翠鸞は搭乗者のスキルや能力によって全く別物と言っていい性能を持つ様になる。

 近接職は直接攻撃主体の格闘戦機に、魔法職、射撃、投擲武器使いは遠距離攻撃主体の射撃戦機になるってわけだ。


 俺はというと、戦士→剣士→ソードランナー(単騎で敵陣を横断して情報を伝達する伝令兵という設定で、全身鎧、重鎧装備不可、武器も剣か刀オンリー)という転職をしていた為、機動格闘戦機体になっている。


 

 更に、今、現実で行われている、日本主観で見ればチュートリアルとしか言い様の無い無双気味な戦争。

 日本人には戦死者が居ない。

 機体や艦体、車体に「意識」は乗っているが「肉体」は乗っていない為だ。

 これは宇宙戦争でも同じ事になるらしい。

 つまり、VR技術とこの遠隔操縦システムは密接な関係にあるという事だ。

 動かすものが仮想体であるか現実の偽体であるかだけの違い。

 さっき出陣した俺は外見的には量産型の偽体なので、他の同僚と外見的にはサイズ(現実の体に準拠してた方がやはり「動かしやすい」らしい)の差異はあってもよっぽど親しい相手以外は個別認識出来ないレベルなのだったりする。慣れてくるとちょっと距離あっても、それどころか機体に乗った状態でも「なんとなく」相手が誰か分かる様になるんだがな。


 話が戻るが、この翠鸞の登場によってVRゲーム内の格差が一気に拡大した。

 と同時に上を目指す層と現状の「日常」に甘んじる者がはっきりと区別された。

 体操(訓練)して牛乳飲んで(メシ食って)出撃してとルーデル並の生活を送る者も居れば、9時5時じゃないけど、サラリーマン的に決まった仕事をこなす者も居るといった感じで、俺がログアウトする頃には両者の棲み分けが完全に済んで居て、交流もあまり無くなっていた。


 上を目指せば俺の様にさして能力が無くてもログアウト出来るのだから、上位層及びそれを目指す層がどんどん減っていって、最終的にはあの中は日常系非現実に生きる者ばかりになるのだろう。


  チュートリアルのこの戦争が終わると地球は保養惑星として再開発される事になっているが、その時になってもVRから出てこない層は、まるで墓場の様に、あるいは奇怪なモニュメントの様にずらりと並んだ生命維持装置付きのVRベッドに横たわったまま生涯を終えるに違いない。


 俺の事を「なんでこんな時に笑って戦えるの!? おかしい、狂ってる!」と罵り、それでいて俺を含む戦闘組に大規模戦闘の際には守られる事を何の疑問も持たず、雑魚モンスターとの戦闘すら避け続けた俺の元カノも含めて・・・・・・。




有りがち要素の詰め合わせパック作品でした^^;

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[一言] 続きが欲しいかな。
[良い点] 地球動物園説、VRゲーム、戦争と、ベターな設定の寄せ集めなのに何故かシュールな匂いがする。 きっとこれはB級映画の匂い。 [気になる点] 短編である以上仕方ないですが、もう少し掘り下げ…
[一言] 世相や時代が変われば常識や倫理観も変わるわけで、中世初期のヨーロッパなんて、異人種や異民族は奴隷にしてもOk(脅威度の高い国の民族は別)、異教徒は殺してもOk、どんなに能力が高くても異人種は…
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