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入学式:入り口から始まるまでの出来事

 粛清部隊第一育成高校。これが正式名称らしいが、普段は霧原高校という名前で隠しとおしている。2キロ四方の大きな敷地内に、訓練施設がたくさん並んでいる。本当の校舎は地下にあるが、この高校の実態を知らない一般人は、銃声の鳴り響く建物を校舎だと思い込んでいる。

 校舎内から銃声が鳴り響くのは日常茶飯事で、今更驚きもしない。ただ、この高校は毎日鳴っているので、少しうるさい程度にしか思っていないはずだ。

 そして、2031年4月7日。今年は340人が入学することになった。そしてその中に、当然ながら克人の姿もあった。

 黒いブレザーを着た克人は、まず正門をくぐり抜けると、目の前にコンクリートで出来た大きな壁を見て驚く。合格通知と共に入っていた学校の案内によれば、内部の様子を悟られない為に設置されたものらしい。

 案内の看板に従い、左に曲がって少し進むと、地下へと降りる階段があった。まるでダンジョンにあるような階段に、克人は少し立ち止まった。


「お、君もこの階段を降りるの躊躇ってるのか」


 不意に後ろから声をかけられ、びっくりした。だが、ゆっくりと振り返ると、同じブレザーを着た男だった。


「誰だ?」

「おっと、自己紹介を忘れてたな。俺の名前は志藤佐久磨だ。佐久磨でいい」

「俺は飯田克人。俺も克人でいい」

「よろしくな」

「あぁ」


 互いに握手したところで、克人は階段を下りていった。


◆◇◆◇◆


 案内が示している方向へと進んでいくと、難なく入学式の行われる場所へと辿りついた。

 体育館のような場所に、パイプ椅子が並べられている。何故か教師らしき人は1人もいない。生徒と教師以外はこの学校へは入れないので、保護者の姿も当然なく、飾りなどもない殺風景な場所と化していた。


「うわ……ここで入学式かよ」


 そうぼやいたのは、横にいる佐久磨だ。克人も同意見だったが、別に何を言ってもどうにかなるわけではないので、とりあえず座る場所を確認する。

 入り口には大きな張り紙。そしてそこに大きく書いてあった。


《入室した順に、左前から詰めて座るように》


 これを見た瞬間、さすがに克人も溜息が出た。佐久磨に関しては、今にも発狂しそうな感じだ。

 だがそれも束の間、とりあえず座るしかないので前の方に行って席に座ると、隣には驚くほど綺麗な女子が座っていた。胸は程良く膨らんでおり、白い肌が露出した太腿からは妙な色気が出ているように思える。


「あら、2人は知り合いなの?」


 その女子がいきなり話しかけてきて少しびっくりしたが、克人は冷静に受け答える。


「いや、さっきそこで会ったばっかだ」


 心臓の鼓動が感じ取れるほどに暴れ回ってる。だが表には出さないように努力する。少なくとも、横で「Oh……」と連呼している佐久磨のようにはなりたくない。

 だが、彼女は少し笑った。そして、こう言った。


「緊張は隠さなくても分かるものよ。それに隠すようなものでも無い。恥ずかしくないわよ」


 だけどさすがに……と、彼女は佐久磨の事をちらっと見て噴き出しそうになっている。一方の佐久間はというと、既に放心状態となっていた。

 克人は少しだけ警戒した。まるで頭の中を覗くようにして言い当てられたことを、不快だとは思っていなかったが、少しだけ危ないとは思った。


「そうか、すまない」

「別に謝らなくてもいいのよ。そう言えば自己紹介を忘れてたわね、私は椎名亜里沙。よろしく」

「俺は飯田克人だ。そしてこっちは志藤佐久磨。さっき会ったばっかだけど、面白くて絡みやすいやつだ。こんな奴だが仲良くしてやってくれ」

「こんな奴はねぇだろ」


 ふと横を向くと、先ほどまで放心状態だった佐久磨が至って普通の状態に戻っていた。


「確かに面白そうね。よろしく」


 そう言って視線を合わせられた佐久間は、またも放心状態に陥りそうになるが、そうはならなかった。代わりに、息が荒くなり、目を見開いている状態(=錯乱状態?)に陥った。


「あ……あの…!ここ、座っても………いいですか?」


 どうぞ。と佐久磨の代わりに答える克人。するとその女子は、静かに椅子に座った。

 その女子は亜里沙とはまた別の美人さが出ている。ストレートな黒髪はさらさらとしており、凛とした顔立ちをさらに強調している。制服をきっちりと着こなしてるとこを見ると、普段の生活でもしっかりしているようなイメージだった。ただ、胸がでかい。ブレザーに収まりきってるのが凄いくらいの、はち切れそうな巨乳は、清楚なお嬢様と言うイメージとのギャップによって殺人的な破壊力を秘めている。


「ぶはッ!」


 不意に佐久磨からそんな音が聞こえた。見れば、鼻から大量の血を出してる。


「きゃ!……大丈夫ですか?」


 さっと布ハンカチを取り出したその女子は、テキパキと鼻血を拭いていく。

 唖然としていた亜里沙と克人が気付いた時には、鼻に詰め物をした佐久磨の顔があった。


◆◇◆◇◆


 神崎沙織。これがその清楚で育ちの良さそうな女子の名前だった。

 改まって言われたため、亜里沙と克人は「はぁ」としか言いようが無かった。一方の佐久磨は、自己紹介が終わった後に礼を言い、驚くべきことにアドレス交換も行ってしまった。


「手早いな」


 克人が苦笑しながらそう言うと、佐久磨は親指を立てながら「アドレス交換は基本中の基本だ」と言いだした。


「あなたたち面白そうね。私もアドレス交換してもらってもいいかしら」


 そして亜里沙も携帯端末を取り出したので、4人はそれぞれ電話番号とアドレスを交換した。

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