プロローグ:合格した青年
俺こと飯田克人は、数年前に両親を殺された。その時には既に、警察は機能していなかったと思う。
当時小学6年だった俺は、学校に防弾チョッキを着ていくのが当たり前となっていた。週に2回は習い事となっていた射撃訓練。ただ銃を撃つのはあまり得意ではなく、ましてや人に弾を撃ちこむと言ったことは出来そうにないと嘆いていたのを覚えている。
それがどういうわけか、今じゃ出かける時は当たり前のように拳銃を携行し、家に戻っても風呂に入る時やトイレに行く時、さらには寝る時もすぐ近くに置いておくようにしている。
ほぼ毎日射撃訓練場に通い、最近では愛用しているハンドガンの《Five-seveN》で20メートル先にある30センチの的に全弾を命中させられるほどにまでなっていた。
そして今日、自室のポストに一通の封筒が入っていた。これが実は今後の人生を大きく左右するものと言っても過言ではない。
克人はそっと封筒を開けると、中に入っている紙をじっと見た。
《飯田克人 一次(筆記)試験、二次(実技)試験 合格》
合格の文字を見た瞬間、克人は両手を挙げて喜んだ。東京にある克人の志望校に合格したのだ。
これで、今後の人生における1つの大きな目標に、また一歩近づいた。
そしてこの瞬間が、ある意味で絶望的に鬼畜な人生の始まりだと言っても過言ではなかった。
克人はそのことに恐怖しながらも、合格した時の大きな喜びに、しばし浸っていた。