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黒き魔術は死の証  作者: 蛍火凪乃
CHAPTER1 偶然だって運命です
6/10

act1‐4 チート的な能力があっても無能です

 今、状況はとてつもなく混乱している。


 理由は単純明解。俺がふらつきながらも立ち上がったからだ。


 皮膚が凍っているわけではないので、払えば簡単に氷の欠片が散らばる。異常な寒気が消え去り、少しだけ意識が回復した。


「えっと・・・、なんなの? キミ」


 俺を撃ってきた女子が話しかけてきた。とても不思議そうな顔で。


 悪魔は化物を見るような目つきで俺を見ている。ちょっとだけショックだ。


「んー、悪魔じゃないし、悪魔とは敵対関係にあるものです。逃げる余力なんて無いんで、先に悪魔をどうにかしてくれると助かります」


「信用できないなぁ。・・・よし、こうしよう」


 女子生徒は足元に直径10センチにも満たない円と三角形だけで構成された黄色い魔法陣を描いた。その魔法陣は見る見るうちに大きくなり、大きすぎてラインの1辺すら見えなくなってしまった。


 すると、視界の奥の方が蜃気楼の様に歪んで見えるようになった。


「チッ、結界か!」


 悪魔は唇を噛み、少しだけ苦しそうな顔をする。


 俺には何も影響がないところを見ると、対悪魔用魔術のようなものだろうか。どちらにしても、加勢が来たという事実は、俺の作戦が一応成功したということに結びつく。


「これで逃げられないよ。そっちのキミは少なくとも悪魔じゃないことは信用してあげる」


 女子はそのまま銃口を悪魔に向けて発砲した。


 悪魔は空中に魔法陣を描き、出現した氷を盾にして防ぐ。そのまま唱を詠んでいるのか、口がパクパクと開閉を繰り返している。


 それに気が付いたのか、攻撃が通らないと諦めたのかは知らないが、女子は拳銃を手から落とした。落ちた拳銃は地面に接触する前にいつの間にかに描かれていた黄色い魔法陣の中に吸い込まれていく。


 そして、足元の魔法陣が消えると同時に手元に同じ魔法陣が出現した。魔法陣からは大きな筒状の物が出現した。


 拳銃同様に白く、前後には取っ手がついていて、アニメや特撮で見ることが多いバズーカ砲の形状に近い物だ。


 そのバズーカ砲の発射口を悪魔に向ける。魔力をチャージしているのか、徐々に発光が始まり、強くなっていることがわかる。


 悪魔も詠唱に専念したのか、魔法陣が歪み、氷の盾が崩壊した。


 俺は呆然と立ち尽くす。端くれとはいえ魔術師となって初日に、こんな目に遭うとは思っていなかったし、妄想していたとしても想像以上の殺伐とした空気にあてられている。


 誰かの描く空想上の物語では、体内の魔力を感じ取るために、掌に魔力を流し込んでもらうという描写が多いけど、俺の場合は違った。今、この瞬間に感じ取れた。


 女子生徒のバズーカ砲に、悪魔の唱に感じた力が体内に在ると感じられた。いや、彼女たちの魔力に俺の魔力が共鳴するように自己主張をしてきただけかもしれない。


 内側の変化に感動はしているが、それでも俺は呆然と立ち尽くしていた。


 その永遠の数秒は、ふとしたきっかけで幕を閉じた。そう、片方の魔術が完成し、使用されたのだ。


 先に動いたのは悪魔だった。一瞬にして凍えるような冷気が空間を支配し、次いで女子生徒を囲う様に半透明の白い球体が現れた。


 少しだけ驚いた表情をした女子生徒は引き金を振り絞る。案の定、バズーカ砲からは魔力の塊がビームYの様に断続的に放たれた。


 壁に衝突した魔力砲は窮屈そうに停滞する。悪魔がギュッと拳を握るのと、壁の一部が崩壊するのはほとんど同じタイミングだった。


 魔力砲が悪魔に直撃する。球体は全方位から中心に向けて棘がいくつも伸びている。


 着弾時の爆風が巻き上げた砂煙が2人の安否確認を阻害する。ただし、結界と呼ばれた蜃気楼が幻らしく消え去った。


 本日は何度も訪れた一瞬の永遠が過ぎて、薄れた砂煙の向こうに結果が見えた。


 悪魔のほうは服が土で汚れているが無傷で横たわって目を瞑っている。女子生徒の方は、血が棘を伝って滴り落ちていた。


 これは、相打ちと捉えるべきか。漁夫の利みたいな感じになっているのだろうか。


 とかなんとか考えていると、程なくして女子生徒を覆う白い塊が崩れ落ちた。


「痛たた、危なかったなぁ」


 その中から血まみれの女子生徒が出てきた。その割に声は平坦で、袖で拭った場所に傷口は無く、破れているはずの制服にも損傷は無かった。


 血まみれ以外にも、変わった場所はある。それは、髪を縛っていたゴムが取れて、ストレートヘアになっていることだった。


 しかも、そこで見覚えの正体に気が付く。


「もしかしなくても風紀委員長ですよね?」


 そこに居たのは我らが桜鈴高校の風紀委員長である伊嶋(いしま)智晶(ちあき)先輩だった。


「あれ? 今まで気付かなかったの?」


「はい。ごめんなさい」


「素直でよろしい。ま、私だって有名人を気取る気はないんだけどね」


「はあ」


 その辺は微笑で受け流す。


 彼女が有名である由縁は、そこら辺の自由を校訓にする幻想の世界の高校よりも、この学校が自由であり、生徒の自主性を重んじる高校よりも、自主性を重んじていることにある。


 いや、流石にそれは話を飛躍させすぎた。正確には、今季の生徒会長と風紀委員長によって今の学風を手に入れたと言ったところだ。


 まず風紀委員長が、ルールを乱した生徒を徹底的に社会的抹殺を施し更生させ、有り余った余力で教師陣まで注意を促すようになった。そのため、教師の立場が危うくなる。


 そこに、現在の生徒会長が新たな反発勢力を生み出す前に生徒をまとめ上げ、おそるるべき手腕で教師に徹底的な追い打ちをかけた結果、現在の生徒運営主義高校となったのだ。


 当時、この学校に在学していた俺たち在校生はもちろんのこと、それ以降に入学してきた在校生にも、その武勇伝が伝わっていて、桜鈴高校に容姿込で知らない人はいないはずだ。


「じゃ、キミの事情を教えてもらおうか?」


 彼女の鋭い瞳は、急に警察が事情聴取してきたとき並みの恐ろしさがあった。


 警察に挨拶を抜いて話しかけられたことなんてないけど・・・。

早くもgdgdになりかけている気がする。

大学に進学して、色々と不安定になっています。

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