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黒き魔術は死の証  作者: 蛍火凪乃
CHAPTER1 偶然だって運命です
4/10

act1‐2 初心者にはわかりかねます

 俺、明人、秀一、クレゼールさんの4人は、自動販売機でジュースを買いつつ、お互いの暴露話をすることにした。


 類は友を呼ぶ。


 この言葉こそ的を射た言葉として相応しいのだろう。


 明鈴高校の生徒の半分以上が、魔界出身者か先祖が魔の存在らしい。


 しかも、誰かの意図ではなく、お互いに存在に気が付いていないとか。


 その中に校長も含まれているから、魔女という存在がコネになるんだとか。詳しいことは話したくなさそうにクレゼールさんが教えてくれた。


 特に、俺と明人と秀一を含む2年A組のほとんどは魔に携わる人で構成されているらしい。


 全員は面倒だから省くとして、まずは明人は狛犬らしい。アレが生体化して擬人化させられた存在とかなんとか。


 秀一も式神として召喚されて、この学校にいる主の護衛をしているとか。


 因みに、お互いの存在に気付かない理由は、それなりの力で隠蔽しているから。


「それにしても、前から魔力だけは強いとは思っていたけど、まさか死霊術師(ネクロマンサー)の素質があったとわな」


「それに、成り行きで魔女と契約とか。普通はあり得ないだろ」


 明人と秀一が思い思いのことを交互に口にした。


「なんで俺だけなんだよ? 明人も秀一も人外じゃん」


「ヒナもすでに半分は人外よ」


 クレゼールさんの一撃が棘となって急所に突き刺さる。


 俺は自然と膝を曲げ、両手を床につけ、頭を垂れる。斜め下からのアングルで見れば、きっと強い光が俺の影を強調するだろう。


「まあまあ、これから永い付き合いになるんだから。主がいる秀一はともかく俺も、深入りしても別れを惜しまなくて済む友達ができたことは嬉しいんだから」


「俺だって、主が受け継がれれば、この世界にいられるからな」


「寿命がどうこうってことじゃない」


 周囲からの視線が痛くなってきたので、立ち上がって埃を払う。


「え?」


「うそ!?」


「あら?」


 俺以外の3人が同時に同じ方向を向き、少しだけ真剣な顔つきになった。


「どうしたの?」


 その方向には絵画の掛けられた壁しかない。その絵画に七不思議の類の話はなかったはずだ。


 周囲の人も、何人かはそちらを向いている。


「はぐれ悪魔が来た」


 代表して明人が答えてくれた。


 その言葉を聞いてか、周囲の雰囲気すらもひんやりと頬を撫でる感じする。


「悪魔って今朝の?」


「そうよ。はぐれ悪魔は契約用に召喚された悪魔が未契約のまま逃亡して、人間界で奔放な生活をしているやつらのこと」


 クレゼールさんだけは何故か楽しそうに見える。


「行くぞ。明人、陽奈」


「おう」


「え? 俺も」


 明人と秀一が走り出したのを見ながらたたらを踏んでいると、クレゼールさんが俺の手を掴んできた。ちょっとだけ心拍数が上昇する。


「行くわよ」


 クレゼールさんに引っ張られて走り始めた。


***


 連れてこられた場所は校庭。部活と体育兼用のサッカーコートだ。


 サッカーコートの中心に、顔色の悪いおじさんが佇んでいて、それを取り囲むように何人かの生徒が壁を作っていた。


「どの術師もまだまだね。名前もない下級悪魔に複数人でも相手にできないなんて」


 クレゼールさんは壁を作る生徒の顔を一通り見まわしてからつまらなそうに呟いた。


 因みにあの人垣の中には明人や秀一の姿はなく、俺たちの少し先で状況を見守っている。


「どっちも動かないね」


 動かないというよりは睨み合っているだけ。ちょうど、剣士が相手の間合いに踏み込まないようにしている感じだ。


「この世界では殺人が罪だからよ。浄化に失敗したら憑代が死ぬの。浄化できる実力を持つ人は、正体を隠したがって出てこないけどね。大方、切り捨てられる下っ端に丸投げしたのよ」


 その時、人垣を作っている生徒の中の1人の女子が動いた。


 悪魔憑きおじさんの両手と両足を縛るように、光の拘束具が出現する。


 同時に、何名かの生徒が掲げた手から白くて小さい光の弾を放った。本能のようなものが嫌悪感を示すので、おそらくは聖属性の魔法だろう。


「甘いわね」


 クレゼールさんの呟きと同時に着弾した。


 砂煙がまき上がるが、その中心には立ったままの影が伺える。


「あれでどれくらいのダメージ?」


「子猫にひっかかれた程度よ。せめて2ランク上の魔術じゃないと日が暮れるわ」


 そうこう言っている間にも、悪魔憑きに光の弾が着弾する。ダメージがあるよには思えないけど。


 だからと言って、魔術を何ひとつ習得していない俺が加勢に行っても、状況が変わることはない。


「クレゼールさんは行かなくていいの?」


 そう聞いてみると、呆れたように溜め息を漏らされた。


「私は戦闘狂じゃないわ。戦いたいなら魔界にいたほうが効率が良いもの」


「そっか」


 改めて悪魔憑きおじさんを見据える。


 どうにか足掻こうと、もがこうと必死に暴れているけど、魔術による拘束で充分な身動きが取れないでいる。


「それに、遊び相手なら他にいるわ」


 クレゼールさんは手を掲げると、掌の先からバレーボール大の薄青い光の弾を放った。


 その先に居るのは、ゴールポスト付近で状況を見守っている4人組の生徒だった。内訳は男が3人で女が1人。どの顔も見たことがない。


 音もなく発射されたはずなのに、すぐに光の弾に気付き、4人ともが飛び退いた。


「クレゼールさん?」


 俺だけでなく周囲からも突然の出来事に対する戸惑いの視線が彼女へと収束する。


「あいつらも悪魔よ。中級の」


 言うと同時にどよめきが走る。


「逃げるぞ!」


 4人の生徒はバラバラの方向に走り始めた。


 その速度は人間の限界を超えている。


 明人は舌打ちをして1人を追いかけ始めた。


「陽奈! 1人1体だ」


 秀一もそれだけを言い残して、違う方向に逃げたやつを追って走り始めた。


「はい。これ」


 クレゼールさんは何もない空間から黒い魔術書を取り出すと俺に渡してきた。


 そして、完璧に受け取る前に手を離し、自分がターゲットした方向へと進んでいった。


「ちょっ! 俺、浄化の方法知らないんだけど?」


 しかし、俺の言葉が届くことはなく、渋々と残された選択肢を選ぶことにした。


 時間を稼いで、浄化の方法を知っている人が来るのを待とう。


 そういえば、残りのルートって、唯一の女子生徒が逃げた方向だった気がする。

半ゾンビ設定に苦労してます。とりあえず、脳のリミッター解除は無しにするつもりです。

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