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彼女と彼女と彼

「ア、アナタね!」


小川は冬子の方に詰め寄りながら右腕を上げ、そのまま勢いよく振り下ろそうとした。


「やめろ、小川」


俺は小川の右腕を掴み何とか阻止する。


小川は俺の方を一瞬驚いた顔で見るが、スグに表情を満面の笑みへ変えた。


可愛い…確かに小川の今の笑った顔は可愛い。けど、どうしてお前の目は濁っているんだ。冬子も小川も、どうしてお前たちの目はこうも濁っている。恐い、コワイよ、お前たちのその目が。


「ごめんね、冬木君。そうだよね、暴力はイケナイよね。下手したら停学になっちゃうもんね、そしたら冬木君に会えなくなっちゃうかもしれないよね。ありがとう、私のこと、止めてくれて」


「あぁ……」


別に小川のコトを思って止めたわけではないのだが、小川がそう思っているのならそれでいいだろう。これ以上、冬子とめんどくさいコトを起こされては堪らないし。


俺は掴んでいる小川の腕を放そうとした。しかし、小川は俺の腕を自らの腕に絡めてき、俺の手を小川の頬に当ててきた。


「小川……何をしているんだ?」


「冬木君の手、大きくて暖かいね。それに良い匂い…小さい頃のこと思い出すなぁ。ねぇ…舐めてもいい?」


舐める…俺の手を舐めるというのか。やめてくれよ……小川。そんなコトをしたら冬子に何を言われるか怖いだろ。あぁ…冬子の奴、俺のコトを睨んできてやがる。


俺は小川に腕を離すように言おうとしたが、先に冬子の方から言ってきた。


「小川さん、その手を離して。春が汚れるわ」


冬子の奴が腕組みをしながら、小川に対して冷たく言い放つ。


「ふふっ、嫉妬?雪風さん。冬木君…うんうん、春君、私と春君の仲の良さに嫉妬しちゃったの?ふふっ、まぁ良いわ、そろそろ下校の時間だからね。春君、また明日ね」


小川は俺の腕を放し、教室のドアに向かって歩いていった。


「そうだ、春君」


小川は俺の方に振り返ると、とびっきりの笑顔と濁っためでこう言った。


「私のことは小川じゃなくて、藍子って呼んでほしいな。だって、私は春君って下の名前で呼んでいるんだし。それに、さっきの告白の返事、良い返事してくれるっていったでしょ?だったら、小川だなんて名字で呼ばないで、藍子って呼んでほしいな。いいでしょ、いいよね、呼んでくれるよね、春君」


「わっ、わかった。藍子さん」


「『さん』は要らないよ」


「わかった、藍子」


俺が小川、いや、藍子をそう呼ぶと満足したのか何度も「うんうん」と首を上下に振っている。


「それじゃあね、春君」


今度こそ、藍子は教室から出て行くかと思ったが冬子の奴に余計なことをいいやがった。


「そうだ、雪風さん。私の『好き』は軽々しくないよ。アナタの方こそ『軽い』んじゃないかな?」


くそ、最後に余計なことを言ってくれやがる。


冬子の奴、絶対にキレているよな…アイツの顔を見るのが怖いよ。


俺は冬子の顔を見た。


あれ、何でアイツは笑っていやがる。濁った笑みでもなく、なんで、ただただ普通に笑っているんだ?


「えぇ、そうね。『軽く』ないわよね。ごめんなさいね。でも、私の『好き』は『軽く』ないわよ。『深い』のよ」


冬子の言葉に藍子は一瞬冬子を睨むがスグに顔を戻し、「じゃあね、春君」と言って、今度こそ教室を出たのであった。


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