気を使う男
登場人物 美奈子、横島一樹
登校時
横島は慎重になっていた。
「美奈子さんをしっかり守らないと、いつ殴られるか分からない。」
「横島く〜ん。」
「来ましたよ。慎重に慎重に。」
「何か独り言、言ってない？」
「あはは。綺麗だねって言いたかっただけだから。」
「横島君にそう言われると、体がほてっちゃう。」
(美奈子さん、イメージが崩れるような事、言うのやめて下さい)
「急に深刻になっちゃったけど、私の顔に何か付いてる？」
「いいや、見とれただけさ。」
「素敵。」
二人だけの周りから見ると寒い会話は、学校が始まるまで続いた。
下校
「今日、美奈子さんはいないみたいだな。」
「横島くん、一緒に帰ろうか。」
(しまった会っちゃった)
「またー。深刻な顔は似合わないよ。」
「まあ、いろいろあるよ。」
「何か悩み事でも？」
(何か逃げる方法を探さないと…)
「さては、勉強。」
「まあ、そんなもんだよ。」
内容が無い会話が続く二人、横島は作戦を実行に移した。
「ハグッ。」
「横島くん？」
「おー、腹がよじれそうだ。」
「大丈夫？」
「持病が出たようだ。」
横島は頭が悪かった。
これぐらいしか言えなかった。
「あたし、こんな事にも気付かないなんて、薄情ものだわ。」
美奈子も、頭を打って性格も変わっているので、横島と同レベルだった。
(今のうちに逃げるぞ！)
「動いちゃだめ。」
(なんて力だ…)
「じっとしてないと、命に関わる事なんだから。」
(持病なんて言うんじゃなかった…)
横島は自分の馬鹿さに呆れ果てた。
その後、病院にまで行くはめになり、恥ずかしい思いをしたのだった。
「横島くん、大事にいたらなくてよかった。」
言うまでもなく、美奈子は気付いてなかった。
なんとか切り抜けたが、これ以上下手に動くとまずいので、横島は普通に接する事にした。
この後、あけみと初対面する横島に、更なる試練が来ようとしていた。
