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第13話 猫は、ソーセージの食べ方も悩ましい

挿絵を差し替えて再掲

挿絵(By みてみん)


「旦那様がお待ちですから、急ぎますわね!」


別室では、数名が総がかりでテキパキと仕事を進め、

あっという間に、私の着替えや化粧が終わった。


「さあ、奥様、ラピスラズリの服をお披露目しましょう。

きっと、旦那様に喜んでいただけますわ。」


部屋に戻ると、シリウスも老紳士も見当たらない。


が、すぐに、奥の方から「奥様がお戻りのようです。」という声と、

コツ、コツと美しい足音が聞こえる。


「リヒトさん?」


という声と共にスッと現れたのは…

黒いゆったりとした庶民服に身を包んだシリウス。

私のラピス・ラズリと同じ生地の腰巻をしている。


思わず、私もMadam(マダム)たちも息を飲んだ。

私は慌てて顔を隠す。


ただ、美しい…

簡素な庶民服でも、シリウスが着れば素晴らしい仕立てのドレスのよう。


私のラピス・ラズリのお披露目どころではない…


コツ、コツと近付いてくる音がする。


「顔を見せてください。」


そっと手を握られたが、「見せない!」と抵抗する。


「奥様、私共のためにも、どうかお顔を開けてくださいまし?」


Madam(マダム)の声に、しぶしぶ手の力を緩める。


「ああ…リヒトさん…」


と言ったまま、シリウスが黙ったので、

怖くなってソロソロとシリウスを見上げると、

シリウスが真っ赤になって目を逸らしている。


「やっぱり…似合わな…」


「あの…」


シリウスは、顔を赤くしたまま、鼻の頭を掻いて、

オーナーとMadam(マダム)の方を振り向いて言った。


「あまりにも似合っていて…まともに見られないんです…

ああ、僕、このお店に来て良かった。」


オーナーとMadam(マダム)が顔を歪めながら、礼をした。

涙を堪えているようだ。


シリウスは私に言った。


「さあ、お祭りに行きましょう。まだまだ休日を楽しまなくては。」


***********


まだ日は高く、子供たちも色々な出店で騒いでいる。


リヒトさんは周りを見渡して、いかにもワクワクして僕に言う。


「お腹が減っていると全部おいしそうに見える!」


とりあえず、手近にあった棒付きソーセージを買って、近くの石段に腰かける。


僕がモリモリと食べ始めると、リヒトさんは食べずに僕を見ている。


「どうしましたか?」


「エッ!?…ごめんなさい…」


と慌ててソーセージを口にくわえたが、うまく食べられずに悪戦苦闘している。

噛もうとしたり、ペロペロ舐めたり、吸おうとしたり…


既に食べ終わった僕だが、思いがけないその光景に、

胸の…いや、別の部分の動悸を押さえるのに必死だ。


「ちょっと、シリウス、み、見てないで、こ、これどうすれば…食べれるの…?」

「も、もっと、思い切り、か…嚙みちぎれば…」


リヒトさんは、なんとかソーセージをカプリと口にくわえて、思い切り噛みちぎる…


「すごくおいしい!肉汁がしたたってくる!」


と、端から出てくる肉汁を、かわいい舌でペロリと舐める頃には、

もう、僕は前傾姿勢から動けなくなっていた。


「どうしたの?」


「…いや、大丈夫です。ここは、気合で…」


何とか背筋を伸ばしてリヒトさんを見ると、

一生懸命、ソーセージを喉の奥までくわえて食べようとしている。


僕は、再び前傾姿勢で動けなくなった。


*************


と、その僕の前髪に、そっとリヒトさんが触れる。


「髪型が…ほら、3年前に会ったときみたい。前髪の分け目がなくて…フワフワしていて…」


「こ、子供みたいですか…?」


ちょっと僕はむくれそうになったが、


「そういう意味じゃない。」


リヒトさんは夕日色の瞳でじっと僕を見る。


「これもかっこいいなって…」


「エエッ?」


僕は拍子抜けしたような声を上げてしまった。


「なんですか、もう、リヒトさんは…

僕は、まだ、リヒトさんをまともに見られないのに!」


「やっぱり、ダメよね…」


僕は、リヒトさんに向き直って、

彼女の食べ残しのソーセージを取り上げると一噛みで食べきった。


「リヒトさん、こっちを向いて。」


片側に寄せて結われた黒い髪、

小さな青いイヤリング、

細いネックレス、

鎖骨のすぐ下を真っすぐ横切って、彼女の首や鎖骨の美しさを際立たせるラピス・ラズリの襟元。


そのままスカートの端までラピス・ラズリの生地が続いていて、

リヒトさんの知的な雰囲気やほっそりした体つきを上品に彩っている。


「綺麗です。」


僕は、それ以上言葉が出なくなって、

ただ彼女を見つめて、この姿を焼き付けようとした。


そのとき、瞼の裏に、一番最初…

大神殿の謁見の間で、天井まで飛び上がって僕を襲ってきた、

リヒトさんの姿が蘇った。


僕が一瞬茫然としていると、リヒトさんが「【封殺】をかけて?」という。


猫の天神(フェリステンプル)で一度かけたが、

僕はずっとリヒトさんの隣にいるし、

僕を襲ってしまいそうで怖くなるのだろう。


僕はリヒトさんを抱き寄せると、

額の刻印に彼女の額をつけて、【封殺】をかける。


【封殺】が終わると、リヒトさんは嬉しそうに笑った。


「ああ、これでしばらく安心!」


僕は、息苦しくなった。

なぜか、また、この小鳥のような猫族(リヒトさん)が、

僕の手から飛び立ってしまいそうに思ったから。


僕は、なすすべもなく、そのまま彼女を抱き締めた。

十二支と神鼠は猫に「こい」


第Ⅰ章(人生の 最後のページで 見えるもの):https://ncode.syosetu.com/n5418ls/

第Ⅱ章(禁忌の竜):https://ncode.syosetu.com/n3802lt/

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