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予言の子

古くより、北フランスブルターニュには一つの言い伝えがあった。

その者、古き礎に刺さる聖剣を引き抜き、聖杯を持って世を救わん。


時代はカール大帝の時代、ようやくフランス全土がカール大帝によって平定され、市民も騎士たちも一時の平和を喜んでいた。

イングランドでは、ユーサー・ペンドラゴンコンウォール伯に、念願の男子が誕生した。

名をアーサー、後に獅子王と呼ばれイングランド王になる予言の子。

同時に、ランスロット男爵家でも男子が産まれた。

この者こそ騎士の中の騎士とうたわれるようになるランスロット卿である。

アーサー王が光ならランスロット卿は影、白き獅子王に仕える黒騎士ランスロットである。

二人は兄弟同然に育ち、仲睦まじく、互いに剣と馬術の鍛錬をする仲だった。

そんなある日、コンウォール城下町にサーカス団がくると話題になっていた。

「アーサー、明日にもサーカス団がくるらしいぞ? 見に行こう」

「そうだねランスロット。父上に許可をもらってくる」

ふたりはこうして運命の日を迎えた。

サーカス団は象やライオン、サルなどの動物たちと、大道芸人たちを引き連れてやってきた。

その名をクリスチャーネサーカス団。

彼らがサーカス団をしているのは表向きの事で、裏では人さらいを生業としていた。

そのサーカス団に赤い衣装を身に纏う子供道化師あり。

その名をエドワルド・クリスチャーネ。

やがて父王アーサーに反旗を翻すことになるモードレッド卿の背後に立つ赤騎士、エドワルド・クリスチャーネ。

その正体は彼もまたこのサーカス団にさらわれたカール大帝の孫。

ここに、運命と宿命に縛られた一人の王と二人の騎士が集う。

サーカス団の公演を終えて、アーサーは少年道化師の話を聞いていた。

エドワルドは賢く、キリスト教に精通し、少年のアーサー、ランスロット両名にイエスの福音を語って聞かせた。

そして、イエスの脇腹の血を受けた聖杯伝説のことも。

「エドワルド、聖杯にはどんな力があるんだい?」

「アーサー、聖槍ロンギヌスに貫けぬものがないように、聖杯にもまた秘跡あり。神の血を受けしその聖杯からは、飲んでも酔わず、神の叡智が湧き出る血のワインが湧き出る。それを飲む限り、そのものは年を取ることがない」

「それは凄いな!」

「眉唾ものだぞ? アーサー、そんな夢物語があるものか……」

少年道化師にして人さらいの標的を選ぶ役目があるエドワルドは、アーサーの方をターゲットに選んだ。

「フランスの話を聞きたくないか? アーサー」

そう言いながらエドワルドはリュートを抱え調律を始めた。

「そろそろ俺は帰るぞ? アーサー」

「ランスロット、カール大帝の英雄譚を聴きたくないか? 僕は聴いてから帰ると父上に伝えてくれ」

「わかった、アーサー」

ランスロットは先にサーカス団の天幕を後にし、生涯の後悔となる不覚を取ることになる。

この先、三人の運命はうねりをあげて絡まり、決して切れない絆の義兄弟となることも知らずに。

コンウォールの夜に、エドワルドのリュートと弾き語りがそっとひと時の別れを告げた。

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