激落十郎、受験をする。
私は激落十郎、今年で二十八歳に成ります。
私は代々医者を多く輩出する激落家に生を享け、患者を診てその病を判断し必ず完治をさせる、誉れの父親の背中を見て育ってまいりました。
そして私もいつか父親のような立派な医者になりたいと志し、父親の診療所を継ぐことを夢見て勉学に励んでおりました。
しかし、私には勉学の才能に恵まれていなかったようなのです。
幾ら学問に精を出し、寝る間も惜しんで勉学に励んだとしても、その努力が実を結ぶことはありませんでした。
十八の歳から毎年、医学部医学科合格を目標として勉学に励んでいるにも関わらず、不名誉にも現在に至るまで合格証明書を頂けたことは一度たりとも無いのです。
私の実家に送られてくるのは毎年、不合格通知のペラ紙一枚のみで私は更に恥ずかしくなりました。
名実ともに優秀で、一族の象徴とも謳われている祖父にもこの失態は知れ渡っており、私は彼に一族の恥とまで言われてしまう始末、とても自分が惨めで情けない。
それでも、今年こそは上手くいくはずなのです。
是非私に期待を寄せてください。母上、父上、おじい様。
きっと今年こそは...
・・・
後日、山の麓で冷たくなっていた激落十浪が発見された。