6話 休日のダブルデート?
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「......遅いな」
模擬戦からしばらくして休日に入り、想護は駅前で腕時計を見ながら壁にもたれている。
彼は今日、幼馴染みである元気と夏希、そして編入生である光凛と四人で遊ぶ約束をしている。だが、もうすでに集合時間から30分が経過する。それなのに、誰も来ていない。
「ごめんなさい永生くん!遅れちゃって......」
「あっ、麗明さん。大丈夫だ、よ......」
少し息を乱しながら走ってきた光凛の後ろには、なぜかジュースを片手にクレープを食べている元気と夏希がいた。
まだ光凛は急いで来た事が分かるが、彼女の後ろの2人は絶対に急いではなかっただろう。
「おい、お前らここに来る途中何してた?」
「ん?何もしてないけど?」
「私達が寄り道すると思ってるの?想護ひど〜い」
口をモゴモゴとさせながらそう喋る二人に想護は少しイラつきつつも、呆れた様子でため息を付き、三人の方に向き直った。
「とりあえず早くご飯食べに行こう。僕もお腹空いたし」
「え〜、俺もうお腹いっぱいなんだけど」
「私も〜」
遅れた上に寄り道をした駄目人間な2人がごちゃごちゃ言っているが、そんな2人を無視して想護は唯一まともな光凛に目線を向ける。
「麗明さんは何か食べたい物はある?」
「え〜っと、じゃあレストランに行かない?みんな好きなの選べるし」
「そうだね、じゃあ案内するよ」
そう言って、想護が先頭で近くのレストランに向かう。
初っ端から少し不安なスタートだが、まあ別に大丈夫だろう。なぜなら、今日の遊びは夏希がとりあえず何かして遊びたいと言って突然始まったものなのだから。
◇◇◇
レストランに着き、しばらくして想護と光凛の料理が運ばれる。
元気と夏希は本当にお腹がいっぱいなようで、ジュースだけ頼んで後は二人で他愛もない会話をしている。想護と光凛も必然的に二人で会話をしていた。
「麗明さんって食べ方も綺麗だよな、やっぱり育ちがいいのか?」
「まあ育ちはいい方だと思うよ。実際お父さんが社長だし」
想護は彼女の言葉を聞いて納得する。
学校での彼女の振る舞いもそうだが、身なりからして彼女はどこかの令嬢のような感じだ。なぜそんな彼女がこのメンバーと一緒に遊んでいるのかは、疑問には感じるが。
「あのさ、その......さん付けで呼ぶの止めない?なんか、落ち着かなくて」
「えっ、いいのか?呼び捨てで呼ぶ事になるけど」
「別にそれでいいよ、そっちの方が楽だし」
彼女の提案を想護は断る理由もないし、素直に聞き入れる事にした。
「じゃあ麗明はさ、なんで僕の短剣に......」
「そうじゃなくてさ......その、名前の方で......」
光凛は少しぎこちない様子でそう言う。
想護は彼女の意図が理解出来ないで少し不思議に思ったが、まあそう言うならと彼女の呼び方を変えた。
「じゃた光凛はさ、なんで僕の短剣に魔力が宿ってるって気づいたんだ?」
「えっとね、永生くんの短剣はすごく大切にされてるみたいだったから、それで......」
「なるほどな、意外と見てくれてるんだな」
この二人の会話を、前に座る元気と夏希がニヤニヤしながら見ている。
それに気づいた想護は、気持ち悪い物を見るかのような目で二人を見た。
「なにニヤついてんだお前ら」
「別に〜?」
それからしばらくして昼食も食べ終わり、四人は再び街の中を歩き出す。
無計画な外出だが、それに関しては問題ない。元気や夏希はいつも無計画で遊びに出てるし、想護もそれに慣れているのだ。
◇◇◇
あれから想護達はショッピングモールに訪れ、とりあえずショッピングを楽しむはずだったのだが、なぜか今はゲームコーナーにいる。
最初はたまたま通りかかっただけなのだが、ゲームが好きな元気と夏希がやりたいと言い出したのだ。
「なぁ、そろそろ別のとこ行かないか?もう一時間もしてるぞ......」
「待ってあと一回だけ!これが最後だから!」
「それ何回目だよ!」
光凛もさほどゲームに興味はないみたいだし、少し退屈そうにしている。
想護自身も今回はこの2人に振り回されてばかりなので、これ以上好きにされては困る訳だ。
「僕だけならまだしも、今は光凛もいるんだぞ?もうちょっと周りの事を考えて......」
「じゃあ2人でショッピングしてくればいいじゃん。私達はゲームをエンジョイしとくからさ!」
「俺も夏希とゲームしとく〜!」
想護はわがままな二人に呆れつつも、やっぱり四人で遊びに来てるのだからと説得しようとする。
だが、そんな彼の肩を彼の隣で見ていた光凛が軽く叩いた。
「2人はゲームをしてたいみたいだし、ここは私達だけでもいいんじゃないかな?私は別にそれでも大丈夫だし」
「えっ、でもいいのか?僕だけじゃ話も盛り上がらないと思うんだけど」
「いいの、ほら行くよ」
少々強引に想護を連れて行く光凛の顔は、少し楽しそうだった。想護もそんな彼女を見て、まあ楽しそうならいいかと、素直に彼女に従った。
二人と分かれてから想護と光凛はそれぞれの行きたい場所を転々としていた。
想護は主に本やゲーム類だけなのだが、光凛はアクセサリーや服やメイク用品など、女子って感じの店を回っている。
「永生くん、私に似合いそうなネックレスを選んでくれない?」
「えっ、僕でいいのか?もっとセンスのあるやつに頼んだ方がいいんじゃ......」
「ここには君しかいないでしょ?ほら、早く選んで」
想護は彼女の願いを断る理由もなく、十何個かあるネックレスを目を凝らして眺める。
ここは魔道具の店で、それも見た目と効果もどちらも最高レベルの高級店。こんな店で買い物が出来るという事は、彼女は本当にお金持ちなのだろう。
「じゃあ、これで」
「ふ〜ん、ありがとっ」
光凛は少し驚いた様子で彼が選んだネックレスを見ていたが、すぐにそれを手に取り、事前に選んでいたもう一つのネックレスを手に取って会計に持って行った。
そして会計を終えると、彼女が事前に選んでいた方のネックレスを想護に差し出した。
「これは永生くんにあげる。私からのプレゼント」
「いやいや、こんなに高いの悪いって......」
「あげたいからあげるの。それとも、私のセンスがダメダメだとでも?」
「いや、そういう訳じゃ......」
光凛は遠慮する彼の手に強引にネックレスを置き、そして彼が選んだネックレスを自分の首に着ける。
想護が選んだネックレスにはめ込まれたエメラルドグリーンに輝く宝石には、守護の魔法が組み込まれている。それは所持者に大きな危険が迫ると、それを感知して自動的に結界を張ってくれるというものだ。
「大切にするね、このネックレス」
「あ、ああ......」
想護は少し反応に困りながらも、彼女に手を引かれて歩き出す。
恥ずかしいからと彼女の手を離そうと思ったが、彼は楽しそうな彼女の横顔を見ると、そんな事をするのも気が引けた。
彼女がどうして自分なんかにプレゼントをくれるのかは分からない。だが少なくとも、彼はこの時間が嫌いではなかった。
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