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第1章 プロローグ 『門番シグルト、左麻痺の発症』
「なんだ?左手に力がはいらないぞ?」
オーク族の門番、シグルトは朝の巡回中に突然左半身に異変に気づいた。
そういえば朝から体の不調は気になっていた。
妻にも顔色が悪いことは指摘されていたが、昨日の訓練の疲れが残っているだけだろうと軽く考えていた。
シグルトは30年間アストリアの門番として長年その職務に従事してきた。
彼は街の防衛の要であり、街の安全を守るために日夜を問わず任務を遂行していた。
しかし、その誇り高い職務も、突然の体調不良により揺らぐこととなる。
「おかしい。なにか体がおかしい。」
盾を持つ手が思うように動かなくなり、足元がふらつき始める。
彼は何とか任務を終えたが、次の日には更に症状が悪化し、盾を持ち続けることすらできなくなった。
シグルトは、自分の体に何が起こっているのか理解できず、深い絶望に包まれた。
「このままでは門番としての職務を全うできない…」
シグルトはそう思いながら、何度も自分の手を握り締めてみたが、力が入らない。
魔法による怪我ではなく、原因不明の麻痺が彼の体を蝕んでいた。