表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ぼく、白えんぴつ

作者: WAIai

「ーいらない」

ぽんと捨てられて、白えんぴつは悲しくなります。

「たーくん、何でぼくはいらないの?」

「色がつかないし。おもしろくない」

たーくんは4歳の男の子で24色の色えんぴつを使ってぬり絵をしています。

白えんぴつは言います。

「たしかにぼく、紙と同じ色だもんね」

「つまんない。だからいらないの」

子どもは素直だけれど、時にざんこくなことを言います。

白えんぴつは悲しそうな顔で言います。

「ぼくも使ってよ。何でもいいから」

「いやだ。お前なんかしまってやる」

そう言うと、たーくんはケースの中に白えんぴつを入れました。使っていないので、ほかのえんぴつに比べると、全然減っていません。

「またいらないって言われた」

「白はな…。使い方が分からないよな」

ほかの色えんぴつに馬鹿にされています。

「何でぼくだけ…。ひどいや!!」

白えんぴつは蓋のしまったケースの中で悔しがります。自分も赤や黄みたいに派手な色なら良かったのにと思っています。

「ぼくだけのけものだ! 神様のいじわる」

涙をふくと、白えんぴつは目を閉じました。やることといえば、寝ること以外にありません。

「また寝てるよ」

「だから駄目なんだよ。俺たちみたいに細くならないなんて、かっこ悪いの」

悪口が聞こえても、白えんぴつは無視をすることにしました。

ー誰かぼくを使ってくれないかな。

このままではケースの中で太ったまま終わりそうです。

ー何で白色なんてあるんだろう?

自分で自分を呪いました。白色なんてなければ、皆と仲良くなれたのかもしれないのです。

ーいいや、寝よ。

白えんぴつは寝ることで良い夢を見ようと思いました。しかし、一向に眠れません。

そのうち、白えんぴつのケースが開きました。ワクワクしましたが、たーくんが取ったのは、

「赤にしよ!!」

目立つ赤色でした。白えんぴつはがっかりして目をつむります。

「たーくん、ご飯!!」

「はーい」

ママに呼ばれて、たーくんは色えんぴつをケースの中にしまい始めます。皆、嬉しそうに帰ってくるのに、白えんぴつだけがポツンとしています。

ー次こそは。

期待しますが、たーくんは行ってしまいました。ケースの蓋は開いたままです。

ー何を塗っているんだろう?

白えんぴつは起き上がり、たーくんの絵を見ます。どうやら、ヒーローもののイラストを描いているようです。ピンクや黄などが使われてて、派手です。

ーぼく、やっぱりいらないみたい。

気づいた白えんぴつは、外へ出ることを決意しました。このままここにいても、仕方ないからです。

ーぼくを使ってくれる人を探すのだ。

コロコロと転がりながら、ケースから出て、部屋を出ます。すると、廊下でママと会いました。

「また片付けてない!!」

ママは怒ったように言うと、白えんぴつを拾いました。慌てたのは白えんぴつです。

ーママ、放してよ。

ママはたーくんの部屋に戻そうとしますが、たーくんが言います。

「白えんぴつなら、いらないよ。つまらないし」

「ぜいたくを言わないの。白えんぴつだって、使い方があるんだから」

白えんぴつはおやっと思いました。ママはアイディアがあるみたいです。たーくんも興味津々になっています。

「白えんぴつはね」

ママはたーくんの部屋にあった画用紙を手に取ります。画用紙は色がついていてキレイです。ママは黒い紙を出すと、白えんぴつを使います。簡単なお花の絵ですが、キレイに白色が描けています。

「こうやって使うのよ」

「ふーん、なるほど。今度、ぼくもやってみよ」

たーくんは白えんぴつを受け取ると、大事にケースの中にしまいました。悪口を言っていたえんぴつたちも驚いたように黙っています。

ーこうやって使うんだ。

白えんぴつも自分の存在価値が分かった気がして、思わず泣きました。ママに感謝です。

「たーくん、ほら、行くわよ」

「はーい」

たーくんは答えた後、白えんぴつに謝ります。

「ごめんね、今度使うから」

謝られて、白えんぴつは嬉しくなりました。これからが楽しみです。

「悪かったな、馬鹿にして」

ほかの色えんぴつたちも謝ってくれます。白えんぴつは嬉しくなって言います。

「ぼくも仲間に入れてくれる?」

「もちろん」

ケースの中で色えんぴつたちは明るくなりました。もう誰も白えんぴつの悪口を言いません。

ー良かった!!

白えんぴつはニコリと笑うと、安心してケースの中で暮らしました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ