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メスガキな王女をわからせた!

 ヨーツンヴァイム城を出た俺は、次に海辺の街ナシアケに向かった。


 ナシアケに着いてみると閑散としており、あちこちにヲタクとみられる屍が横たわっている。

 

 ここではつい先日まで大規模なマーケットが開かれていたらしく、これらの屍はそのマーケットでの長い待機に力尽き、薄い本の争奪戦に敗れて散っていった者たちのようだ。

 

 まさか、この中にダンジュニの王子がいるんじゃ……。

 

 そのまさかが的中した。屍の中に、ダンジュニ王家の紋章がある鎧を着たやつがいるじゃないか。

 

 こんな所で野たれ死ぬなんて何て残念なやつなんだ。けどまぁ趣味に殉じることができたなら、ヲタクとしてはある意味本望と言えるだろう。

 

 このままにもしておけないので、俺は『サオイク』という復活魔法をかけてやることにした。レベルカンストした俺にはこれくらいの魔法はお手の物だ。


「おぉ、貴殿がコドジアの王子でござるか? 拙者、ダンジュニの王子トンズラでござる! いやいや~、あちこち捜したでござるよ~!」

 

 嘘こけ、冒険そっちのけでヲタ活してたんだろうが。しかも最後には野たれ死にやがって。

 

 トンズラと名乗るダンジュニの王子は、その名の通り豚面のでっぷりとした、典型的なヲタクな容姿をしていた。


「貴殿も日本から来た氷河期とお見受けいたすが、奇遇でござるな、拙者もそうでござってな。氷河期同士、仲良くしようではござらぬか!」

 

 やっぱりこいつも俺と同じ氷河期おじさんだったかい!


 こうしてトンズラを仲間に加えた俺は、大司教の軍勢に攻められたというロスジェーネへと向かった。

 

 ロスジェーネはヒョーガキア大陸の南に位置しており、コドジアやダンジュニと同じく氷河期の勇者を祖とする王国だ。


 ロスジェーネに着くと、城はすでに陥落して廃墟と化していた。


 もしかして、トンズラ捜しで手間取り助けに行くのが遅れてしまったからなのか。


 まぁ、そこはあまり深く考えないようにしよう。


 親父によると、ロスジェーネには王女がいるらしく、そいつと協力しろとか言ってたな。


 だが、廃墟と化した城や城下町にはそれらしい人物や屍も見当たらない。

 

 そこで俺たちは、ロスジェーネ城の東、ヒッキー山脈を越えた先ににあるトゥールペタという街へ向かった。

 

 ここは大司教軍の攻撃からは免れたようで、街は至って平穏な様子である。


「ちょっと、そこの薄汚いおっさん! あんたたち、日本から来た氷河期でしょ?」

 

 街中で王女の行方を捜していると、突然一人の女の子から声をかけられた。

 

 見た感じはJCくらいの、癖のある長い赤髪が特徴の気の強そうな女の子だ。

 

 ていうか、いきなり氷河期と罵ってくるって、こいつもメスガキということか。

 

 ならば問答無用。こういうメスガキは速攻わからせるのみ。

 

 俺は《わからせ棒》を使った。


「い、いきなり何すんのよ! ちょ、や、やめっ……、そ、そんなのムリ! 絶対にいや!」

 

 俺は《わからせ棒》を使った。


「私は……、ちょ、ロスジェ…、やだ……、ジェネの……、待って……、やあああ! Ω※Σ◎Ж!? こほぉあ゛あ゛あ゛……」

 

 俺は《わからせ棒》を使った。


「あんッ♡ んあっ♡ お゛んっ♡ ん゛おッ♡ はっ♡ ひっ♡ あっ♡ もっと……、ふひっ♡ あひゅ♡ あっ♡ ん゛おッ♡ も、もっとお願~い♡ ああああああ♡」

 

 こうして俺は、突然現れた小生意気なメスガキをわからせたのだが、これまでのメスガキとは異なる何とも言えない後味の悪さのようなものを感じた。


「やや!? コドジアの王子殿よ。もしやこの小娘は、メスガキではないのではあるまいか?」

 

 え? どゆこと??

 

 俺がわからせている間、二次元にしか興味がないトンズラも何やらこのメスガキに違和感を覚えたらしい。

 

 そこでトンズラが、ダンジュニ王家に伝わる不都合な真実を映し出すという《不都合な鏡》を使ってメスガキを映しだした。


 すると目の前にいたメスガキの姿が、俺らと同世代くらいのババアになっているではないか!


 しかもよく見ると、着ている衣服にロスジェーネ王家の紋章が描かれてある。


「も、もしかして、お前ってロスジェーネの?」

「そうよ、私はロスジェーネの王女ダリンよ! 私もずっとあんたたちを捜してたの! それで、やっとそれっぽいおっさんを見かけて声をかけてみたら、いきなりひどいじゃない!」

 

 ダリンは衣服を整えながら涙交じりに叫んだ。

 

 彼女の話によると、大司教の呪いによりメスガキの姿に変えられてしまっていたのだという。


 何てこった。俺はメスガキをわからせたと思ったら、40過ぎのババアをわからせていたというわけか……。


 俺は急に激しいめまいと吐き気に襲われた。


「ちょ、何よそのリアクションは! 私だって、こんなおっさんに初めてを奪われて死にたいくらいよ! あんたにはきっちり責任取ってもらうわよ!」

「拙者、二次元にしか興味がなくて良かったでござるよ」

 

 こうして一悶着あったものの、ロスジェーネの王女も仲間に加わったのだった。

 

 ちなみに、ダリンも日本からきた氷河期なのだという。

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