【41】ぴょーん! (エッセイ・自伝)
ポエム調で書いた前述の「【39】腕白質」
あれで思い出した一人の昔に遊んだ遊び仲間を今、猛烈に思い出してしまっている。
多分、彼は普通の人間とは何か少し違っていた。
いや、まぁ。
人間は実際に様々であり、全く同じと言うことは無くて、きっと一人一人違っているのだし、だとすれば、「他の人と同じ」事なんて何一つ無いだろう。しかしながら、今思えば、確かに、運動や、言動や、感じ方、どれをとっても、何だか違っていたのである。
世の中の人間なんかは、ソイツに関して、平たく「ハンデ」を抱えている、と言うだろうか?
今はもう、お互いに会っては居ない間柄なのだが、今思うと、彼は、現代の何かとどんどんと世知辛くなってきて、社会全体が「アホに寛容」だった時代とその範囲がどんどんと国の余裕の無さと比例するみたいに狭まってきた、こんな今の社会に於いて、もしかすると、苦労が耐えないのかも知れない。
元気でやっていて欲しい。
我々が、小学生の時に、ファミリーコンピ○ータが発売された。
今思うと、我々がグループを作っていた腕白小僧グループは、何かと遊びに飢えていた好奇心旺盛さが特徴で、しかしながら、反面に於いては集中力と思考力は不足気味で、そして幾分、多動的であった様に思える。
野球をしたかと思えば、集中力が尽きて、すかさず別の遊びに変わる、的なグループであった様に思うのだが…あの、テレビゲーム。その真新しい遊戯の圧倒的世界の刺激のなんと凄い事なのだろうかなぁ。
多動的グループな我々、驚嘆すべき集中力で以って、いつまでもいつまでも、テレビゲームに張り付いていた時期があって、その初期に彼が見せた動きが何か…とても面白くて、みんなで笑った事を思い出したのだ。
彼は明らかに、ファミリーコンピ○ータのソフト、ドンキ○コングにもぅ、尋常ではない集中力と、無我の境地っぷりを発揮していたのである。
彼が操るマ○オ。
彼が操作しており、マリ○をAボタンにてジャンプさせる度に、彼の無意識は次第に、身体を立ち上がらせて行き、やがて、彼が○リオをジャンプさせる度に、彼は頭をこぉ…上に。
ぴょーん ぴょーん
ぴょーん ぴょーん と。
やり始めたのであるから、これはたまらなく可笑しい。
みんなで、その後に冷静になってきた彼にそいつを指摘し、そうやってみんなで笑ったのだっけ。
子供の脳内は、あれは結構目まぐるしく、もう、コーフン状態や何かになれば、未だ刺激に慣れきってはおらずに、そんな新鮮なる脳細胞の受容体の蕾に、わりと容赦が無い量の脳内麻薬なんかが流れ込んだりしてきて、きっと、子供の脳内は、違法なる薬物なんて用いなくとも、わりとトリップの粋に達する事が出来るのだと思う。
後の話になるのだが、ファミリーコンピ○ータで大人気となった人気ソフト、ドラゴン使命の続編、竜クエスト2、ソイツが出た時の、あの、当時の大興奮の思いでを、未だに手に取るみたいにして思い出せている。きっと、膨大で様々な脳内麻薬、そいつがあの時に、沢山出ていたのだろう、と思っている。
その日はもぅ、朝起きた時から様子が違っていて、兎に角、学校の授業、ソイツが一刻も早く終了する事を願い続け、そして、全ての授業が終わり、さようならの合図の前に差し掛かれば、それはもう、なんか喧嘩の前の、さぁ、相手をどうやってぶちのめしてやろうか、的な、心地良いテンションにまで跳ね上がっており、そっから、マラソンランナーみたいに、さようならの合図とともにもう、全力ダッシュ。ヤバイ、落ち着け、と、幾分走りのペースを落とすも、とてもマラソン大会では出してはいなかった本気の走りで、帰路の途中にあった、ソフトを予約していた駄菓子屋へと、走りに走っていたのだった。
途中、こちらに向かって駆け足の、一年年長のお兄さんが走ってきた。
以前、学校の催しの中で、学年を跨いだ年上と交流する企画の中で、班毎に交流した時の、それは年上のお兄さんであり、その、ダッシュする様子に、何だか非常にその時の今の自分と同じ様な、何処か尋常ではない、そんなオーラを感じた俺はそのお兄さんに声をかけたんだ。つまりは、その様な小さなエピソードすら、こうして、今の俺の中に残っているのである。
「○○君もドラゴン使命2?」
「……うん、今からやるとこだよ。」
その短切なやり取りだけ。
なのに、今でもはっきりと覚えているんだ。
つまりはそれだけ、自分のあの当時のあの日の脳内麻薬の放出量は半端ではなかったに違いないのだろう。
話をもどそう。
あの、ドンキ○コングに夢中になっていた、アイツ。
きっと、アイツは、その、ドラゴン使命2の時の俺なんかまるでメじゃない、そんくらいに半端無い興奮と無我の境地の粋に達していたのだと思うんだ。
そして、そんなに物事を楽しめるヤツのその、才能。
それはきっと、「普通のレベル」とはなんか違っており、その世界へと達する事が可能な、そんな彼の世界の中に。
飛び込んで、覗いてみたいなぁ、と。
素直に。
素直に、羨ましいと思えたのだ。




