【35】実らずの秋波数 (エッセイ・自伝)
チャットにて。
チャットのとあるメンバー飼っていたリスザル。
そいつが同じく、飼っていた猫と仲良しで、そのリスザルが喜怒哀楽を糞尿で表現してしまうもんだから、リスザルが乗っかった猫の背中が汚れたり、他にも様々な場面で糞尿で感情を発露するもんだから、困る、という話題を聞いた。
言われてみたらば、確かに身の回りの動物達の様子やら、イタチや猫の肛門付近に存在する臭腺やら、猫が母猫に尻尾をピンと上げて寄っていったり、親しい飼い主に肛門近付けて来たり、嗅がせようとしてきたり。猫同士のコミュニケーションだと、目上になる者に嗅がせたりすると言うエピソードがあったり。
確かに。
あまり、言葉を大にして公に話にすることははばかられる話題ではあるのだが。
確かに、私も理解出来る気がするのだ。
とある体験を通じて。
子供の頃、自宅近くの、未だ宅地にはなっていなくて、造成されたままで放置されていた原野の、一面雪の広い原野にて、近所に住んでいた年下の女の子と遊んでいて、夕方になった頃に。
なんの拍子にだか、突然に、年の下の妹が出来た、等という、庇護的な欲求とはまた違う別の何かが湧き上がってきたあの、今でも覚えているモヤモヤした気持ち。
そんなものを、その時に確かに感じ取って、無性にその子を背負いたくなった出来事を、不意に思い出したからだ。
夕方の、一面冬の原野でその子を背負う。
二人共に、年齢は10歳よりも下。
一桁年齢だった。
その子を背負って歩いていた時に、なんか、なにか、肛門付近がムズムズしていた体験がある。
そして、繋がるもう一つの記憶のジュークボックス。
海馬のアドヘシン。
そいつが運んできた記憶に。
大人になった頃に、何だか人生の路頭に迷っており、近所の比較的に賑やかだった駅近く、そこで真夜中にギターで歌う、そんな演奏グループの一員に加わっていた頃に、不意にやってきた見物の女の子。
何か、辛かった事が、あったのか?
「居させてください」
って、付かず離れずの距離に座り込み、俺を何だかずっと見てきた謎の女の子、恐らくは夜のライトな性接待系の女の子だろうな。
当時は夜に演奏していたりなんかすると、様々な事情を抱えていて、心の中の何処かが空虚でになってしまったみたいな女の子が、稀にやって来る事があったから。
嗚呼、また、そんな一人かな?
そう思っていた。
後になって気が付いたよ、幼い頃に背負っていた、確かにそれは、あの彼女だったのだよなぁ。
近所の真夜中だったし、考えてみたらば、面影と、根拠の良く判らない確信と。
はて?
その、『根拠の判らぬ確信』とは?
きっと、それが、フェロモンで。
昔に俺が、突然に彼女を背負いたくなってしまったあの感じ。もしかすると、俺はあの時に、彼女の発したフェロモンにあてられて、その様な、背負いたくなる、と言う、直接的には性衝動ではないにしろ、幼いながらにそいつに何かを感じ取り、あの行動をやって、そして、今もそれが、しっかりとした印象を伴って、記憶に結び付いて居たのかも知れなくて……
彼女の方は彼女で、あの、真夜中に、俺のフェロモンに気が付いて、そうやって寄ってきたのかも知れないんだよな。
だとすれば、彼女と俺は恐らくは、動物的な本能で、相性の周波数が一致しており、残念ながら、秋波数には、移行せずに。
あの時に もし 自分が寂しくて。
あの時に もし 彼女が心を打ち明けていたなら…
自惚れが強いが、だが、しかし。
可能性は、あっただろうなぁ。
そんな運命の乱数変化場面。
お互いに、人間となり薄れた本能の力故に、実らなかったのかも知れないんだよな。
だから、先述のチャット相手のペットのエピソードに、何だか理解が出来るのだ。
きっと、件のリスザルを背負っていた猫の気持ちは、
『なんか、肛門キュってなる、なんやろかな?』
で、リスザルの方も、なにかのフェロモンを出していた。
そして、お互いに相性バッチシに惹かれていたのかも知れないのだ、いや、確信しよう、惹かれあっていたんだ。
人間にもきっと、それはあるんだ、薄れては行っているけれどもさ。
誘引物質
フェロモン
激しい喜怒哀楽感情、または性的なそのアピールに、糞尿周辺はつき纏うのかも知れない、と、考えている。
激しい感情、ソイツにわりと、生き物は糞尿付き纏いがちだよね。
犬もうれションするし。
癲癇持ちの猫の尻尾付近(それは猫の性感帯)をそれとは知らずに撫でてしまったら、癲癇が発生して、ピュッと、何かを飛ばしていたし。
なんかあるとは確信していて。
きっと人間のソレも。
香水みたいに洗練されたモノではなくて。
もっと社会的にはアレなモノなのかと思お。




