【32】海馬の『青臭さ』繋がり (エッセイ)
青臭い、ジャガイモ煮ている真夜中から朝方にかけて、なんだか、随分と昔の記憶が蘇った。
若い頃、スーパーのバイト生活をしていたことがある。
ある日、金がなくて、給料日までは一週間くらいあって、財布の中身はもう、ギリギリで。
そんな時にその、働いていたスーパーで、ジャガイモ半額で売っていて、そいつを買って食いつないだが、それがまぁ、すんげぇ青臭さがあるんだ、お湯で茹でても、そのお湯すら臭い、無論、ジャガイモ本体も臭い。
ジャガイモには、ソラニンと言う、人間の体内で日焼けなんかすると増えてくるメラニンの従兄弟みたいな、構造がよく似ている毒が有るのだよな。そして、わりと当時には、ジャガイモの芽付近の毒は、茹でたり加熱すると分解されるから無害、だとか言われていて。今、調べてみたら、どうもジャガイモのソラニン、そいつは加熱したくらいではそうは簡単には分解しきれないらしいんだ。それでその、ソラニンに当たってどうも、自分は一時期、黄疸みたいになっていて、パートのおばちゃんにそれを指摘されたのだが、「黄疸」それが何なのかすら、当時の俺には知り得なかったのさ。
まぁ、そんな、「青臭いジャガイモ」昨日から今朝にかけて、久々にそいつを茹でて、食べてみて、案の定、
「あっ!あおくさっ!」
ってなって。
ふと、その、
『青臭さ』
で。
海馬が咄嗟に繋いできた記憶の中の懐かしい情報が、昔の駅に設置してあった、『連絡用黒板』
駅の改札前の比較的に広い場所の隅っこに、この『連絡用黒板』が昔の駅には設置されていたんだ。で待ち合わせやなんかをやっている人が、手軽に使えていた。例えば駅で待ち合わせしていた二人の一人が、
「(サチ子へ)西口の噴水の前 ミチヨ」
だとか書いておけば、連絡用黒板に書いてあるそれを『サチ子』さんが、駅にやってきてそれを目にして、待ち合わせ場所へとスムーズに行ける様になる。そうやってみんなに使われていた連絡用黒板。
今は便利な時代になったモノで、そういった細やかな連絡すら、ラインだとかのメールが、その役割をすっかりと肩代わりしている。最近は駅にはまだ、連絡用黒板は存在しているのだろうかなぁ?
何故、私の海馬が『青臭い』繋がりの候補に、この、今は懐かしき『連絡用黒板』なんぞを呼び寄せたのか?それは恐らくは、その連絡用黒板の中に書かれていたメッセージの中には、しばしば大変に甘酸っぱく、また、『青臭い』感じの、様々な人間質が織りなしたであろう、様々なポエミー成分に満ちていたメッセージが含まれていたからだろうね。
「隠れんぼはやめにしようよ? みんな何処へ行った? byなかじまみ○き」
だとか。
ネタに走るバカも居れば。
「B君、○○前で待ってる by A子」
その横に。
「B君… 待っていたのに… by C子」
等と、B君の大変な二枚目っぷりが垣間見えたり。
なんだかその様に。
駅の『連絡用黒板』には、様々な人が書いたメッセージ、その中に時として豊かに含まれていたポエミー成分。バカ要素。
不特定多数が目撃可能である、その、駅の連絡用黒板の中の独特な世界。
もしかすると、自分が未だにチャットやなんかをやるのを好んでいるのは、この様な、駅の連絡用黒板に感じていた、ポエミー成分、バカ成分を好んでいるからなのかも知れない。




