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【29】理由を奪われた世界の考察 (エッセイ)




先の章にて。

「理由」とはなんぞや?

と。


そして、「理由」を奪われたらどうなるのか、と。

漠然と、考えていました。


ヒントは作家、ミヒャエル・エンデ氏の

「鏡○中の鏡」に出てきた1話の中に行き当たる。


踊り手が、開幕前の緊張感の中に晒されている。

目まぐるしく思考して不安と戦っている。幕が開いたなら本番である、一切のやり直しなんて利かないシビアな世界がそこにはある。もぅ、この幕の内側、そいつが外側と繋がった瞬間に、否応無しにそんな世界に叩き込まれて仕舞う。


幕が開けばそこはもぅ、そこはいきなり、ノルマンディーの撃ち合いみたいな、視聴者側と、出演側のコイツは戦いと言う次第であり、ソイツを隔てるのは、幕一枚。そんな緊張感の世界だ。さながら、その、膜一枚が上陸艦艇の、あの、開くゲートだろうか?


その様な究極の緊張感、張り詰めたテンション中で、踊り手は「あの踊りのあの瞬間、次のこの動き」と、自らが完璧に出来るだろうか、と、何度も確認しては頭の中で反復する。


一向に幕は開かずに、踊り手の緊張感とテンションの維持が次第に困難となり、彼はストレスを抱える。もしかすると自分はこの、永遠に開かない幕の前で虐待されているのではないのか?誰かを呼んで確認してはどうか?だが、しかし、その瞬間に幕が上がる可能性について意識すると、それは不味い。


こうして、踊り手はその開かない幕の前に釘付けを強いられたままで、何度も繰り返し繰り返し頭の中での自分の動きのシミュレートを繰り返し続け、やがて、その膨大なる時間の流れの中でそのことに関する「意味」を喪失してしまうが、しかし矢張り、ずっと、開かない幕の内側にて、頭の中でのシミュレートを繰り返している……


そんな、地獄みたいなお話だ。


こう、自分なりに解釈してみると。

このお話しに出てきたソイツ。


「意味」


こいつがなんだか、「理由」と似ているなぁ、と。

この歌詞に出てくる「理由」に代入できるなぁ、と。

そうして、そんな「理由」を失うと。

きっと、人間は惰性で、動くのだと思お。


それの何がグロテスクなのか?

そいつの何がいけないのか?

具体的に挙げられない。


でも、しかし、もしもソイツのグロテスクさを判りやすく例えるのであれば、それは、自分が書いた本当の文章とコピペされて貼り付けられた文章だろうか?または、自分が描いたイラストとそれを撮影したカメラのデータ。理由を持った人間と、ソイツを喪失している人間との違いは、ほんの、それだけ。本人と鏡に写った自分との違いみたいなモノであろうかなぁ。それだけなのに、この、「意味」を喪失して、それでも頭の中で踊りの動きについて、繰り返してイメージを続けているあの踊り手の姿を想像していると、とてもグロテスクに感じるんだ、私なんぞは。


例えば人間は社会の中で、わりと惰性で生きていたりする。

わりとさ。

普段の生活。


そんで、「惰性で生きて、なにか問題でも?」ってさ。

惰性で生きる、その、グロテスクさが、

はっきりとは認知し得ない。


この事が、なおさら、理由喪失の怖さなのかもなぁ、とね。


この国の法律の中とかにも、「惰性で生きては行けない、惰性で生きた場合、怠惰裁判所に出頭し、惰性消費量に基づいた罰金をなんちゃらかんちゃら」なんてー文言も、無論、無い。


惰性スピード違反なんてモノも、無い。


惰性で生きると、怠惰(たいだ)らぼっち とゆー妖怪が出てきて大変である、とゆーこともない。


けれども、「理由」

そいつを失った世界。

あの、先程に例をだしたお話しの、

あの、哀れな囚われてしまった踊り手みたいに。


きっと、理由を失って、ただ社会の中に存在している。

社会の中に組み込まれて行ってしまう。

「理由」を喪失した、姿形だけを維持している。

それだけに、成り下がってしまう。

その姿は、グロテスクに感じてしまう。

自分なんかは。











または、恋愛の中の、「理由」の喪失。

これについて考えてみたら…


恋愛に於けるある種の 無償 と 盲目 かな。

クラウゼヴィッツの「戦争論」に出てきたみたいな。

ある種の相互作用・無制限性。


互いが互いの存在を意識し、

そして共鳴し、やがては次第に。

お互いに相互作用にて増幅してゆく無制限性が。




『貴方がこう思うなら、私はそれに従うわ。』

『貴女がそう思うから、僕はそいつに従う。』




延々と、二人の相互作用・無制限性で

こいつが増幅し続けた世界を考えて見る。

そんな世界の中できっと、恋愛関係の男女はしばしば、


こぉ。

意味を奪ったり奪われたりしているのかも知れない。

寝台で睦み合って、涅槃の住人みたいに。


クラウゼヴィッツの戦争論の、相互作用・無制限性。


彼我の存在。

互いは常に、互いを打倒しようとしているのではないのか?と意識し、恐れ、疑い、それ故に常に相手の打倒しようとしてくる力を上回らん、と、互いが互いを恐れる余りに、互いが身を守る、または相手をすっかりと覆滅(ふくめつ)・打倒しきって仕舞おうと意識して、次第にその対抗手段の規模は必然と、相互作用し合って、無制限にならざるを得ない。


これは何も、戦争だけに限った事ではない。

不純物を切り落とせば、2つの存在。

彼と我。

彼我(ひが)


その2つが何らかの意識をお互いに持った時の相互作用・無制限性にもピタリと違和感無く当て(はま)る、そんな優れたフラクタル性を持っている。


愛の要素。


 無償 と 盲目


それに、戦争論の、


 相互作用 と 無制限性


を加味して考えてみた世界の恐ろしさ。


イメージとして、隣り合った2つのグラス。

共鳴している。

惹かれ合っているのである。

そこに加わる、無償・盲目・相互作用・無制限性のレシピ。

増幅器(コンデンサー)を得た隣り合った2つのグラスは次第にその共鳴の度合いを無制限なモノにしてしまって、その末に粉砕されてしまうのではないのか?


ビルの持つ固有周波数と同じリズムで、ビルの中のフィットネスジムがたまたま(おこな)ってしまったフィットネス運動の周波数の偶然なる一致、結果、建物が激しく地震の如く揺れてしまったとある韓国のビルで起こった事故。


アメリカのとある橋は、その橋に吹き付けられる風がたまたま、その橋の固有周波数と近い、ちょうど良い感じの時間が続いてしまった為に崩落してしまった事故。


2つの事件ともに、鍵は固有周波数の一致と、増幅作用。

相互作用・無制限性が重なるではないか。


固有周波数の一致。

イメージとしては、ブランコ。

ちょうど、力がそちらへと向かう時にそちらの力と反発する反動を与えつづけている。漕ぎ続けるブランコは、次第にその、反動を受けて振り子運動の性質を大きく増やしてゆく。


恋愛レシピに混ぜた、無償・盲目・相互作用・無制限性。


漕ぎ続けるブランコ。

共鳴の度合いを次第に相互作用と無制限性のコンボで、増幅器(コンデンサー)効果で、ヒートアップさせる隣り合った2つのグラス。


『貴女がそう考えるなら、それに従うよ』

『貴方がそう思えるなら、それに従うわ』


更に2つの恋愛要素。


 無償 と 盲目


次第に、嗜好(しこう)の意味合いすら喪失していき思考(しこう)も失い、例えばラピスラズリ色、それが好きな彼、それを不気味に思う彼女の会話に例えてみる。




彼 『綺麗な色だ、まるで、真夏の早朝の(くら)い青さ』

彼女『そうね、深く(くら)い青さ、神秘的ね』


また、その間も真新しいままで

その、次の場面には…


彼女『こんな深い青は不快よ、まるで底知れぬ深海だわ』

彼 『そうだな、なんと恐ろしい、身体が冷えてくる様だ』




そんな、思考(しこう)嗜好(しこう)を。

まるで放棄したみたいな世界の中で。

何という至高(しこう)のグロテスクさか!


知恵の実を食べる前のアダムとイヴみたいに。

完璧に彼と彼女が一体化して理由を失い、

永久(ゆうきゅう)涅槃(ねはん)の楽園の住民の、

久遠(くおん)(むつ)み合いの世界にて見せる。

そんな。


「とろん」とした目。


それが、とても恐ろしい。

そう感じている。


なんとも、色っぽく例えたけれども。

四六時中、あんな目をしている人間が居たとしたらば…

自分にはそいつはきっと、不気味にしか見えない。


自分自身の体験。

たまに、男女の、

そーゆー事をやっていた時に感じた、

相手の目を見た時の、その


「とろん」


に。

実は自分なんかは、恐怖を抱く場合が多いんだ。

甘い時間なんだけれども。

確かに。



「ゾクッ」



っとする瞬間がそれだった。

この辺の視野・イメージが、あの、先章にてにて語った言葉を紐解いて、何か新しいお話しを生み出す手がかりとなるのかも知れなくて。


こいつの熟成を待っている次第である。



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