うちのアマビエ
シャワーを浴びていると、風呂桶の中からアマビエが出て来た。
アマビエというのは昔から日本にいる海の妖怪で、豊作や疫病を予言したという。
また、アマビエを絵に描いて持っていると、はやり病いから守ってくれるそうだ。
大きさは50センチくらい、髪が長く、くちばしがあって、体はウロコに覆われている。
海の生き物だが足が3本ある。
4年前、海水浴に行った時、海辺で死にかけていたのを助けてからうちに住み着いているのだ。
「ああ、いい湯だなぁ」
風呂の中にプカプカ浮かびながら天井を見つめて言っている。
「妖怪っていうのは、ずいぶんのんびりしたものだな」
ヒゲを剃りながら話しかけると、
「いやいや、今年はおいらの仲間は新型コロナで引っ張りダコだったんだ。おいらも、みぶさんに拾われなければ、あちこちから呼び出されてたかも知れないな」
確かに、コロナの終息を祈って、全国でアマビエのイラストコンテストが開かれたり、フィギアやぬいぐるみなどのグッズが売り出されたりしていた。
「お前もアマビエなら、世の中の為に神通力でコロナを退散させてやったらどうだ?」
「いや、こうして長く人間と暮らしてるから、神通力がどれくらい残ってるかわからないんだ」
「情けない奴だな。じゃ、ひとつ試してみないか?」
「なんだい?」
「11月30日のラジオでお前のことを紹介してやる。そのラジオを聴いた人の健康を、コロナや他の病気から守ってみろ」
アマビエはしばらく風呂の中に潜っていたが、顔を出してプハーっとお湯を吐いた後、
「わかった。11月30日のラジオだな。それくらいの神通力は残ってるさ」
ということでラジオをお聞きの皆さん、信じるか信じないかはあなた次第です。