愛は有償~無償の愛なんてないらしい~
思いつきで書いてみた作品です。
退屈しのぎにどうぞ。
もしもし。私だけど、今どこにいる?
今日も残業で遅くなる?
,,,あぁ、やっぱり答えなくていいわ。
嘘が下手ね、笹木なつみさんの家でしょう。
4月に入ってきたばかりの新人さんよね。
熱心に教育しているうちに関係を持ってしまって、
えっ?誤解だって?
それで誤魔化せるとでも?
隠し事をするなら、スマホにロックくらいかけた方が良いわ。
せめて無造作に机に置きっぱなしにしないことね。
調べて下さいって言ってるようなものよ。
まあ、私に嘘ついて浮気するのが楽しかったんでしょ。
なつみさんも私に嫌がらせしたかっただけみたいだし。
ご丁寧に電話までくれたわよ。
『たかしさんとお付き合いしている。
笹木なつみです。
奥さん、別れてくれませんか?』って
別れたくない、許してくれって?
私なら許してくれると思って言ってるんでしょ。
知ってる?愛は有償なのよ。
無償の愛なんてないわ。
私も最近気がついたのよ。
あなたが私を愛してくれたから、
愛し続けることが出来た。
あなたの心が私から離れて私を見なくなって、
あぁ、もう無理だって気づいたの。
もう今更よ、離婚届けは家に置いてあるから。
あなたのご両親への報告、私からしておくわね。
あなたに任せたらいつになってもしないでしょ。
さようなら、たかし。
愛していたわ。
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「なんでこんなことに,,,。」
今さら頭を抱えても遅かった。
さやかのからの電話のあと、急いで家に帰ると
もぬけの殻だった。
机上には、既にさやかの名前が書かれた離婚届けと
-今度から、弁護士を通して下さい-
と書かれた小さなメモ、弁護士の名刺だけが置かれていた。
なつみのことは、別にそんなに好きじゃなかった。
それよりも、さやかに嘘をついて浮気している背徳感がバレるかもというスリルがたまらなかった。
さやかは、俺と一緒。
小さい時からずっと、そう思っていたから、
なにか非日常なことを望んでいたのかもしれない。
ひとつ年上ののさやかは、いつも俺と遊んでくれた。
家が近所で親同士も仲が良かったから、
遊んであげてと、よく言われたんだと思う。
名前を呼ぶとニコニコして『なーに?』
と嬉しそうに聞いてきた。
大きくなってから少し疎遠になりかけたけど、
大学で再会してからは、よく会うようになった。
成長したさやかは大人っぽく、
さらに綺麗になっていてとても驚いた。
大きくなっても優しいところはそのままで、
いつも『しょうがないわね。』と笑ってくれた。
今度のことも心のどこかで許してくれると思っていた。
「これから、どうしよう。」
考えてもわかるわけがない。
既に手遅れなのだ。
「愛は有償か、
今更気づいたって遅いよな。」
さやかだけを見ていたら、違っていたのかもしれない。
たかしは、寂しい部屋で一人、絶望とするのだった。
お読みいただきありがとうございました。