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それぞれのcolors

更新遅れて申し訳ありません。もっと早くできるように精進していきます。

さて、連載についてですが、この連載に限りこれから一話2000字程度に統一しようと思います。身勝手で申し訳ありませんが、よろしくお願い致します。


「ふぅ、疲れた・・・・・・。旅の準備って大変なのね。」


 私―フィーナ―はまだ旅立っていなかった。本音を言うと早くヒール王国を離れたかったが、何の準備もないまま無計画に突き進む私ではない。そうして私は、しばらくの間旅費を稼ぐことにした。最低限の生活を捨て去ってきたのだから当然のことだ。幸いヒール王国には、旅人はもてなすというしきたりがあるので、衣食住には困らなかった。とある町外れの民家、そこに私はいた。貧しいながらも温かい家庭、それが私の印象だった。家には一人の幼い女の子がいて、旅の資金を稼ぐために住み込みで働く私の疲労を癒してくれた。

 私はこの環境に幸せを感じていた。王宮にいたのでは絶対に成り得なかったこの立場が、一生続けばいいと思っていた。

 しかし、そういうわけにはいかない。

 お父様が私を探しているという噂は、遠く離れたこの町にもすぐに拡がって来た。きっと血眼になって私のことを捜索しているだろう。それ故、なおさらこの家に長居することはできない。目の前にある穢れのない少女の笑顔を守るためにも、私はここを離れなければならないのだ。

 目標資金までもう少し・・・・・・。


「私の居場所はここじゃない。」


 苦悩の末絞り出した言葉を、私は自分に言い聞かせた。だが、私はこの時気が付いていなかった。自分の裏側で相反な感情が暴れ回っていることに・・・・・・。





 窓を閉めた途端、謎の声は聞こえなくなった。同時に、いつの間にかそよ風もやんでいた。しかし、それは私を上書きしたようだった。


「何なのよ一体・・・・・・。」


 私の決意は変わっていなかった。ある一部分を除いて・・・・・・。

 それは、貫き通す意志の硬さだった。さっきと同じように、運命を受け入れるという決断は残っている。しかし、まるで絵画から色が消えるようにその気概がごっそりと無くなっていたのだ。だからといって、運命に抗う感情が出てくるわけでもない。そう、私に残ったのは自己存在を知覚できない虚無感のみだった。

 私は感情を組み合わせて編み出された自己の結末に絶望しながら、答えの出ないであろう問いを繰り返し呟いていた。


「ふふふ・・・・・・私の人生って何なんだろう?」


 ベッドに手をつく。


「フィーナ・・・・・・存在を確立できているあなたが羨ましい。私には、今のあなたは光色に見える。私は…まだ鈍色のままなのよ。あなたは、鈍色にも届かない存在だったじゃない。それなのに、なんで私を追い越していけたの?本当は…今頃私が輝いているはずだったのに!」


 妬みと同等の言葉を発しながら、私は手に力を込めた。

 コン、コン。

 その時、不意に扉をたたく音が聞こえた。


「どうぞ。」


 気弱な姿は見せたくないと思い、体裁を整える。


「失礼します。シャイ様・・・・・・説明はあとで致しますのですぐにこちらに来てください!」


 入ってきた侍女は、ひどく慌てているようだった。できれば何もしたくなかったが、非常事態だと思い、侍女に促されるままに部屋を出る。焦っているのか、侍女は自然と早足になる。扉の前に着き、彼女が告げる。


「シャイ様、これから見えるのは現実です。ちゃんと・・・・・・それに向き合ってください。」


 私が通されたのは、お父様の部屋だった。私はその光景を見て唖然とした。

王家に伝わるカーペット、元々は純白のはずが中央部分だけ真紅に染められている。そこには人だかりができていた。その上に存在しているモノ・・・・・・。

 それは無惨にも引き裂かれたお父様の躯だった。





 「国王が殺された。」



 そのことは、看守たちのやり取りからすぐ俺の耳に入ってきた。俺は、王宮が混乱に陥っている今が、千載一遇のチャンスだと思い、動揺している看守に声をかける。


「そこのお前、俺は国王の元近侍だ。もしかしたら、なぜ国王が殺されたのか何かわかるかもしれない。俺を今すぐここから出せ!」

「は、はい。分かりました今開けます。」


 まだまだ新入りに近しい様子の看守は、俺の剣幕に加え、動揺しているのも相俟って牢獄の扉を開けた。

 その瞬間、俺はその看守を薙ぎ払い、王宮の出口へ向かって駆けた。全員国王の所へ集まっているのか、王宮内には誰もいない。俺はフル加速する。やっと王宮の出口が見えてきた、もう少し!

 この時、俺は浮かれていた。最後の最後まで気を抜くべきではなかった。意識していればその事態は避けれていたものだったのだ。

 出口のすぐ手前で、突如俺の視界が黒くなった。それは、視覚的、意識的のどちらかの意味ではない。双方が俺を襲ってきたのだ。

 初めに、視覚的な黒が僕の空間を覆った。次いで、何かの音が聞こえて来る・・・・・・それはまるで、人類が感じ得る不快感を全て凝縮したようなものだった。それに顔を顰めているうちに、今度は意識的な黒が僕を覆う。背後から鈍痛を感じつつ、僕は途切れつつある意識が少しでもリンクしている間に考える。


 「何者かが僕を襲った。でも・・・・・・なぜ?」


 それだけが僕が認識できた事実であった。

 そうして僕は静かに目を閉じた・・・・・・。


 様々なことがあったヒール王国の夜が明ける。朝陽に照らされる王宮の門に残っていたのは、涅色の物質のみだった・・・・・・。



 









 





最後までお読みいただきありがとうございました。それぞれが居場所を求め、その場所で立場を確立させていく。新しい人間関係に出会ったとき、皆さんもこんな経験があるのではないでしょうか?

物語はまだまだ続いていきます。評価や感想をいただけたらすごくうれしいです。受験生なので更新が遅くなりがちですが、温かく見守っていただければ幸いです。

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