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766:亀

 グレコとローズが何故、こんなにも親密な仲になったのかというと……

 

 時は少々遡り、俺とカービィ、ノリリアとローズが、クリスタル城での国王謁見を終えて、白薔薇の騎士団のギルド本部に戻って来た時の事。

 ウルテル国王に交換条件を出されたローズは、その条件を飲み、与えられた鍵の入った小箱を持って、ギルド本部まで帰ってきたのだが……、言わずもがな、めちゃくちゃ機嫌が悪かった。

 恐らく、ウルテル国王のやり方が気に食わないのだろうなと……、予想は出来たが、その心中を知る事は、俺には到底出来なかった。


 眉間に皺を寄せたまま、ギルド本部の正面扉から中に入ったローズを待っていたのが、グレコを始めとしたモッモ様御一行の待機組と、副団長の一人白熊のライネル、そして受付嬢のセーラだった。

 待機組の面々を見て、ローズは何か不服を口にするに違いないと、俺は思っていたのだが……

 グレコが、正面扉から入って来たローズを視界に捉えるや否や、開口早々、興奮気味にこう叫んだのだ。


「あなたっ! なんて可愛いのっ!? お人形みたいっ!!!」


 その目の輝き、溢れんばかりの笑顔、まるで一目惚れをした乙女のような顔付きで、グレコは真っ直ぐにローズを見ていた。

 俺は勿論、周りのみんなも、目が点になった。

 だけども、ローズは少し違っていて……


「なっ!? わっ!!? (わたくし)っ!!??」


 此方も、初めて愛の告白を受けた乙女のような、恥じらいの混じった赤面顔でそう言ったのだ。

 そうしてその後は、何やらグレコの猛アタックが始まり(?)、ローズは恥ずかしながらもグレコを受け入れて(??)、二人はめでたく結ばれたのでした(???)


 ……要はね、ローズの容姿が、グレコのストライクゾーンだったと言う事です。

 グレコは元々アンティークなお洋服が好きだから、初めて見るローズのゴスロリファッションが、一瞬で好きになっちゃったわけなんです。

 女性にとって、互いの服の趣味が合うという事は、それだけで随分と仲良くなれる要素なんだって事、初めて知りましたね、は~い。


 というわけで、その後ローズが団長である事を知ったグレコは、驚いて平謝りしていた。

 だけどもローズは、普段なら馴れ馴れしい態度を取った相手には怒りの鉄槌を下すであろうが、容姿を褒められた事がよほど嬉しかったのであろう、許すどころか、グレコとすぐにお友達になってました、ちゃんちゃん♪


 ……まぁね、うん。

 揉めなくて良かったと思うよ。

 これできっと、俺達はすんなり白薔薇の騎士団に仮入団出来るだろうから。

 でもさ……、ねぇ二人とも、そろそろお洋服の話はやめないかい?

 他にしなきゃいけない事、沢山あると思うんだけどな??


 と、俺が思っていると……


 タタタタタッ!

 カツカツカツカツ!!

 ドカドカドカドカ!!!


 三つの特徴的な足音が聞こえて来て、応接間の扉が勢いよく放たれた。


 バーーーンッ!!!!


「僕も行くっ!」

「ローーーズッ!!」

「いったいどうなってんだっ!!?」


 三者三様、大声で叫びながら入って来たのは、白薔薇の騎士団の副団長三名だ。

 上から順番に、魔物飼育部部長で、普通の人間の少年にしか見えないウィル。

 戦闘防衛部部長で、背が高くてスレンダーな体と、長くてストレートな黒髪が特徴的なジオーナ。

 魔法研究部部長で、歩く樹木のトゥエガである。

(誰か分からない人は、『寄り道・魔法王国フーガ編』をご参照ください。)


「国王からクエストが出たんでしょっ!? 僕もパーラ・ドット大陸に行きたいっ!!!」


 目をキラキラさせながら、嬉々とした様子で叫ぶウィル。


「行方不明となっている臣下三名の名は判明しているのかっ!? まさかと思うが……、ネヴァンの名は無かろうなっ!!?」


 今日もめちゃくちゃ怒っているジオーナ。


「俺も詳細が知りたい。ジム仲間のグレイが、先月からジムに来ていないんだ。筋トレをサボる様な奴じゃ無いはずなのに……」


 深刻そうな様子ながらも、何言ってんのか意味不明なトゥエガ。


 するとローズは……


「あら、あなた達。まだ起きていたの?」


 グレコとのお喋りが弾んでいたおかげか、めちゃくちゃ上機嫌な様子で、そんな事を口走った。

 その緊張感の無い様に、三人は更にヒートアップ。


「お願い団長っ! 僕も遠征隊に加えてっ!! サボンヌ公国に行きたいんだっ!!!」


 何を言い出すんだよウィル。

 あんたみたいなお子様を、連れて行くわけないでしょうが。


「ローズ! クエストの詳細を教えろっ!! 行方不明者は誰だっ!? 場合によっては、私も遠征隊に加わるっ!!!」


 えぇえっ!?

 それはやめてよジオーナさんっ!!?

 毎日怯えて暮らさなきゃならないじゃないかっ!!??


「俺も同意見だ。行方不明者がグレイならば、助けに行くっ!」


 トゥエガまでっ!?

 何っ、何なのっ!!?

 何がどうなってんのっ!!??


 すると、少し遅れて部屋に入って来たノリリアが……


「みっ!? みんな落ち着いてポッ!!? まだあたちも団長も、クエストの詳細を聞いていないポねっ! 誰が行方不明者なのかも知らないポよっ!! たぶん、もうすぐ詳細が……、あっ!?!?」


 そう言ったノリリアの真横には、いつの間にか、見慣れぬ御老人が立っている。

  

 んあ? なんだあの格好??

 亀???

 亀なのか????


 そう、ノリリアの横に立つ御老人は、ほぼ亀である。

 背中に巨大な甲羅を背負い、複雑な紋様の入ったローブを身に纏って、頭には学者の様な帽子を被っている。

 皺皺のお顔には賢そうな丸眼鏡をかけ、手には一本の羊皮紙を持っていた。


「ガラパゴ老師様っ!? いつからそこに居たポッ!!?」


 気味悪そうに驚くノリリア。

 だけど、ガラパゴ老師と呼ばれた亀は、ノリリアの言葉なんて聞こえていないかのように、トロンとした目でこう言った。


「あ~……、失礼するよ。ウルテル国王閣下より、白薔薇の騎士団に向けて、正式にクエストが下った。今ここで、クエストの受理を賜りたい。詳細はここに書いてある通りだ」


 非常にゆっくりとした喋り方、非常にゆっくりとした動きで、羊皮紙をノリリアに手渡す亀。

 恐る恐るそれを受け取り、中を開くノリリア。

 そして、カッ!と目を見開いたかと思うと、その表情は青くなった。


「何と書かれているっ!? ノリリア、行方不明者は誰だっ!!?」


 怒鳴るジオーナ。

 するとノリリアは、悲痛な声でこう言った。


「ゆ、行方不明者は……。国王の第一臣下であり、国王軍第一軍隊長であるグレイ・ファンガル氏と、第三臣下であり、国王軍第二軍隊長であるネヴァン・カーリアン氏。そして、国王第七臣下であり、魔法学界魔法生物室室長のアスファル・トデット……、この、三名ポよ……」


 ノリリアの言葉に、ジオーナはギリリと歯を食い縛り、トゥエガは目を閉じて天井を仰ぎ見た。

 そして……


「は? アスファル?? ……え、なんでだ???」


 そう言ったのはカービィだ。

 此方は、これまでに見た事が無い様な、全く感情の無い、唖然とした表情をしている。


「ポポ、カービィちゃん……。アスファルは、サボンヌ公国に向かい、その後連絡が途絶えたと……、そう書いてあるポよ」


 小刻みに震えるノリリア。

 その言葉に、カービィはゴクリと生唾を飲み込んだ。

 ギュッと握り締めた二つの小さな拳を、プルプルと震わせながら……


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