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647:封魔の塔

「あれは、ロリアンの遺産!?」


 頭上で輝く銀の書物を見上げ、誰に問うでもなく、ロビンズが叫ぶ。


「えぇそう! さっきの声もあれのもの!! 出せ出せって叫んでいたでしょう!?」


 グレコの返答に、頷く者は一人もいない。

 何故なら誰も、先程聞こえてきた声の言葉の意味を理解出来なかったからだ。


「グレコさんにだけ理解出来た……? つまり、さっきの声はエルフィラン語だったと!? しかし何故……?? 今あの者は、公用語を喋ったのでは!?!?」


 なるほどそういう事か!

 さっきの意味が分からない声はエルフィラン語だったわけだな!!

 でも……、インディゴの言う通りだ、何故いきなり公用語であるヴァルディア語で話し始めたんだ!?


「なんで宙に浮かんどるんじゃ!? それに、目玉まで……、生きとるんか!??」


 珍獣でも見るかのような目で、銀の書物を指差すテッチャ。


 確かに! 本のくせに、なんで浮いてんだっ!?


「まさか魔物!? しかし、あのような姿の魔物は、見た事も聞いた事もありません!!」


 マシコットが警戒した様子で叫ぶ。


 えっ!? 魔物!!? 

 ……じゃないのか、どっち!!??


「気を抜くんじゃないポ! 総員、戦闘準備!!」


 ノリリアの号令で、騎士団は皆、銀の書物に向かって杖を構え、魔導書を開いた。

 すると……


『ごちゃごちゃごちゃごちゃと……、うるさぁあーーーーーーいっ!!!!!』


 ひょおぉっ!?!?


 無いはずの口で、銀の書物が叫んだ。

 それは、耳で聞こえる音というよりも、何か思念のようなものを飛ばしている感じで、頭の中に直接響いてくる。


『これだから俗世に生きる下等種族は嫌いなのだ! 黙って我が指示に従えっ!! この薄汚い愚民共めっ!!!』


 かな~り口汚い言葉を羅列しながら、銀の書物は怒りを露わにした。

 白い光をこれでもかと全身から放ちながら、水色の一つ目を吊り上げて、眼下の俺達を睨み付けている。

 ただ……、得体の知れない怖さはあるのだが、一つ気になる事が……


 あいつ、なんかガキっぽくね?

 声が高いな~と思ってはいたのだけど、イントネーションというか、口調というか、なんとなく子供っぽい。

 いきなり大声出されてビビったけど、口調が偉そうってだけで、見た目は本だし……

 案外、大した事ない奴かも知れない。


 と、俺が油断していると……

 

「馬鹿言えっ! 得体の知れねぇ奴の指示になんかに従えっか!? おまいは何者だぁっ!!?」


 おおうっ!? どうしたカービィ!!?

 めちゃくちゃ本気モードじゃんっ!?!?


 見ると、少し離れた場所に、全身に激しく波打つ虹色の魔力のオーラを纏っている、臨戦態勢のカービィの姿が。

 何やら物凄く怒っている様で、眼光はいつにも増して鋭く、猫が威嚇しているかの如く全身の毛が逆立っている。


 あれは確か、興奮状態(トランス)ってやつじゃないのか?

 この姿のカービィを見るのは、コトコ島でギンロが悪魔ハン二にやられた時以来だが……

 急に、何故??


 その杖の先端は真っ直ぐに、宙に浮かぶ銀の書物に向けられていた。


『獣風情が我に歯向かうとは良い度胸だ! その度胸に免じて教えてやろう!! 我が名はリブロ・プラタ!!! この封魔の塔の番人、兼案内役である!!!!』


 えっ!? なんだって!!?


 銀の書物は、物凄く偉そうに胸を張って(実際には書物だし、生き物の様に身体があるわけでは無いので、この表現であっているかは分からないが……、俺にはそう見えた)、自らの名前と役割を教えてくれた。

 めちゃくちゃ偉そうだから、てっきり教えてくれないものかと思ったけど……、案外すんなり教えてくれた。


「ポポッ!? 塔の番人!!?」


「んなもん、そうですかって信じられっか! 証拠を見せろっ!!」


 銀の書物の言葉に、ノリリアは一瞬躊躇した様子を見せたものの、カービィはもはや攻撃する気満々だ。

 全身から溢れ出る虹色の魔力が止まらない。


 ……いや、何故そんなに怒ってるんだ!?

 どうしたっていうんだ!??

 いつもはもっと余裕綽々で、ヘラヘラしてるくせにっ!!??


『証拠だと? ……ならば、我に向かって魔法を行使するが良い! 我はこの塔の番人!! 貴様らの放つ魔法など、一思いに揉み消してやろう!!!』


 ぎゃっ!? こっちもこっちで挑発してきた!!?


「面白い! やってやる!! 後悔すんなよっ!!?」


 ひぃいっ!? カービィ何する気っ!!?


「どうしたのよカービィ!!!」


「カービィ!?!?」


 カービィのあまりの変貌ぶりに、叫ぶグレコとギンロ。


「カービィちゃん!? 落ち着くポッ!!」


「ノリリアさん! 危ないっ!!」


 カービィを止めようと駆け出したノリリアを、インディゴが体を張って止めた。

 何故なら、カービィの全身から発せられている魔力があまりに強大で、下手に近付くと危険なのだ。

 俺たちは誰一人として、暴走するカービィに近付けず、逆にその魔力に気圧されて、後ずさる事しか出来ない。


 そうこうしている間にも、カービィの杖の先端には、バチバチと音を立てながら、ボーリング球のような、巨大な虹色に輝く光の球が出来上がっていく。


 ……てか、あんな大きな魔力の塊みたいなの、こんな狭い場所で放って大丈夫なの?

 俺の記憶が正しければ、あれは爆破魔法を行使する時に作り出していた魔力の球と、酷似しているのだが……

え?? もしかして、大爆発するんじゃ???


 そして……


「喰らえっ! 最大級(メギストス) 魔素弾(マギア・スフィラ)!!」


 杖の先端から発射される、巨大な虹の球。

 それは真っ直ぐに、銀の書物へと向かっていって……


 やべぇっ!?

 直撃だっ!!?


 逃げも隠れもしない銀の書物に、虹の球が正面衝突すると思われた……、次の瞬間。


 シューーーン


 ………………………へ?


「なっ!?!!?」


 カービィの杖から放たれたはずの虹の球は、爆発すらせず、スッと消えて無くなってしまった。

 何か、見えないものに吸い込まれたかのように、スッと……


 呆然と立ち尽くすカービィと、その周囲。

 すると、銀の書物がプルプルと震え出した。


『くくく……、くくくくくっ……、あぁ~! はっはっはっはっはぁっ!!』


 大層愉快な様子で、高々と笑う銀の書物。


 何が……、いったい何がどうなってるんだ?

 カービィの放った球は、どこへ消えた??

 あいつが消したのか???


 俺達の間に、混乱が広がっていく。

 この状況を理解出来る者が、俺たちの中には誰もいないのだ。

 そして、そんな俺たちを見て……


『間抜け! なんて間抜けな奴らなのだっ!? こんな奴らが挑戦者だとは、先が思いやられるっ!!!』


 水色の瞳をカッと見開いて、銀の書物は叫んだ。


『ここは封魔の塔! その名の通り、この塔の中では、全ての魔法が封じられるのだ!! つまり、貴様ら魔導師がいくら魔法を行使しようとも、その全てが無効化される!!! くくく……、魔法を封じられた貴様らに、果たしてこの塔が攻略できるかな? くっ、くくくくっ……、あ~はっはっはっはっ!!!!』


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