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34:お喋り

「いい? 一度だけ説明するから、よ~く聞いてね!? ふぅ……。今から話す事は、私たちブラッドエルフに伝わっている、この世界の成り立ちに関する事よ」


 グレコの真剣な眼差しに、俺はゴクリと生唾を飲み込む。


「この世界には、全知全能の神に選ばれし十二人の【神王(しんおう)】と呼ばれる者が存在するの。モッモのような、時の神の使者とはまた違った、全く別の存在よ。彼らは与えられた神の力を使って、それぞれの国を治めるように命じられている。ただ、それがどこに存在する国なのかは、はっきりとは分かっていないわ。分かっているのは三つだけ。一つ目は、このワコーディン大陸から西に位置する島に存在する、世界樹が根ざす国、【ヨラバ帝国】。もう一つは、空に浮かぶ国、【天空王国マドーラ】。そして最後の一つが、【精霊国バハントム】。光王レイアは、その精霊国の国王。すなわち光王レイアとは、全知全能の神に定められた、神王の一人なのよ」


 ほ……、ほほう……、難しいな。

 なんだ? あれか?? 

 要は、めちゃくちゃ凄い人に助けられたのか、俺は???


「そんな偉い人が、どうして僕なんかを……?」


「そんなの知らないわよ」


 あ……、そ、そうですよね、はい……


「時の神が選んだ使者だからであろう。それも、光王自らが命を助けに出向くほどの、この世界にとってかけがえのない存在……。モッモよ、お主はそういう存在であるのだ」


 ほ……、ほほう……、物々しいな。

 ガディスにそう言われると、なんだか背筋が伸びる思いです、シャキーン!


「問題は……、精霊国バハントムがどこにあるのか、なのよねぇ……」


 はぁ〜っと、重い溜息をつくグレコ。


「え? 場所が分からないの??」


 国の名前は分かっているのに???


「精霊国バハントムは、その名の通り、この世界に存在する精霊たちが暮らす国。と言っても、精霊たちは、各々の国を別々の場所に持っている故、バハントムという国は、その多種多様な精霊たちの中でも、物好きな者たちがわざわざ好き好んで移り住んでいると聞いた事がある。光王の人徳ゆえか、はたまた環境が良いのか、そればかりは我にはわからぬが……」


 ふむ……、変わり者の精霊達が暮らす国か……

 全然分からんけど、なんとなく面白そうな国だな。


「とにかく、その精霊たちが住む国がどこにあるかなんて、私たちのような下界に暮らす種族に分かるわけがないのよ。精霊は高位なる存在、決して侮る事勿れ、卑下する事勿れ、さもなくば災い起こらん……、ってね。精霊召喚師なんて名乗る者も、世の中には沢山いるみたいだけど……、どう考えても、精霊の方が優れた存在なのよね。だいたい、彼らがどういう生き物で、どうして自然を操る力を持っているのかとか、どうして召喚できるのかとか……、何も分かっていないんだから」


「なるほどねぇ~」


 精霊って、そんなに凄い存在だったんだな。

 呼んだら来てくれるから(呼んでいなくても勝手に来ている事の方が今のところ多いけど……)、こっちの方が偉いんだって、勝手に思っていた部分があったけど……、そうじゃないんだなぁ〜。


「風の噂では、ここより遥か南の【パーラ・ドット大陸】に、精霊国バハントムが存在すると、聞いた事があるがな……」


 ガディスの言葉に、世界地図に視線を落とす俺。

 パーラ・ドット大陸というのは、俺たちが今いるこのワコーディーン大陸の、ちょうどこの森がある半島から真っ直ぐ南に降りて、小さな諸島群を超えて、さらに南に位置する大陸だ。


「パーラ・ドット大陸って、確か……、大陸のほとんどが砂漠、なのよね?」


 グレコが明らかに嫌そうな顔になる。


 砂漠かぁ……、そういや俺は、産まれてから一度も砂を見た事がないな、土ばっかりで。

 小川の川底にあるのは砂か? いや、砂利だなあれは。


「とにかくまぁ、光王に会うためにはその、精霊国バハントムに行かないといけない……、ってことだよね?」


 俺の質問に、グレコは深く頷く。


「でもさ、どうしてみんな、違う人に見えたんだろう? ほら、僕はその、光王を見たときに母ちゃんだと思ったし、グレコは父ちゃんだと思ったんでしょ?? ガディスは……、なんか、女の人の名前を呼んでたよね???」


 俺の問い掛けに、ガディスの耳がピクリと震えた。


「モッモ……。あれは、忘れてくれ。さもなくば我は、お主の要望を聞き捨て、全速力で走る事にするぞ?」


 ギロリと俺を睨む、ガディスの鋭い眼光。


「ひっ!? ごめんなさいっ!! 忘れますっ!!!」


 慌てて忘れようとする俺。


「うむ、賢明だ」


 ガディスはしれっとそう言うと、視線を前へと戻した。


 なんだなんだガディス!?

 探られたくない過去でもあるのか、おいっ!??


「光王レイアはね、文字通り、光の王なのよ。その実態は光の精霊だと言われているわ。そして、光王の真の姿を知る者はいない……。どんなに高名な精霊召喚師でも、光の精霊は召喚出来ないのよ。たとえ偶然どこかで出会えたとしても、光王の姿を見た者はみんな、自分の最も尊敬する者に見えるのだそうよ」


 ほほう、なるほどなるほど。

 だから俺は、母ちゃんに見えたのか……、納得納得。


「光の精霊かぁ……。あ、名前はないの? ほら、風の精霊はシルフでしょ?? 火の精霊はサラマンダーだし。光の精霊は???」


「名前はないのよ。なぜって……、光の精霊は光王レイアただ一人だから。光はその全てが一つの光なの。つまり、この世に存在するありとあらゆる光は全て、光王レイアだと考えられている。だから、光の精霊にわざわざ名前をつける必要がなかったんでしょうね。そもそも、召喚出来た者がいないから……、十二人の神王の一柱である光王に名前を付けるなんて、以ての外! 畏れ多い!! という事なんでしょうね」


 ほ、ほほう……、なんだかほんと、凄い人に助けて貰っちゃったんだな俺ってばよ。

 しかしながら、何故俺なんぞを……?

 時の神の使者だから、であろうか……??


 俺が首を捻っていると……


「さぁ、お喋りはそこまでにしようぞ。もう目の前が、セシリアの森だ」


 ガディスの言葉に、俺は視線を前に向ける。

 そこには、くねくねと曲がった黒い樹に、(いばら)(つた)がそこかしこに広がる、薄気味悪い森が現れた。


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