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32:守護神

小鳥のさえずりで目が覚める。

ゆっくりと体を起こして、ぐるりと辺りを見回す俺。


見慣れた……、住み慣れた俺の部屋だ。

替えの衣服や靴の他に、森で集めた植物を乾燥させたものや、その種を詰めた袋、釣り道具に、小川で釣って食べた後の魚の骨とか、拾ってきた綺麗な石とか……、とにかく、沢山のもので溢れかえっていて、兄弟たちの部屋に比べれば非常にゴチャゴチャしている。

だけど、自然と居心地のいい、俺の部屋。


窓からスーッと風が吹いて来て、薄いカーテンがサッとめくれる。

テトーンの樹の葉のツンとした香りのする、いつもの爽やかな朝だ。

ベッドから降りて、窓の外に顔を出し、俺は大きく息を吸った。


窓の向こう側に広がる光景は、いつもとは少し違っている。

畑はぐっちゃぐちゃで、向かい側にあるはずのテトーンの樹は薙ぎ倒されたままの状態だ。

宴が行われていたのであろう、広場の隅のキャンプファイヤーの跡の横には、グレコの簡易テントが張られていた。


さ~てっ! 今日から忙しくなるぞぅっ!!


大きく伸びをして、俺は笑った。








「こっちにそれ運んでぇ!」


「オッケー!!」


「おうおう、姉ちゃんは力持ちだなぁっ!?」


「頑張れぇ〜!!!」


畑の再建と、倒れたテトーンの樹の撤去作業、家を失くした一家の為の新しい家の建設などなど。

 本日は朝から大忙しで、村中が賑やかだ。


 新しい家の建設は、他のピグモル達に任せておくとして……(みんな自分の家を建てた事があるから、俺が居なくてもなんとかなる!はず!!)

 俺は、畑の再建に取り掛かっていた。


 今現在、畑は、ピグモル達にとって、なくてはならない食糧源となっている。

 昔は(俺が産まれて喋り出す前は)、村の近くに自生している野菜や果物を採取するのみで、食生活を維持していたみたいだけど……

 畑の方が計画的に作物を得る事が出来るし、何よりみんながグルメになってしまったので、畑が無い事には今後の食生活が非常に危ういのだ。

 次の冬を越す為にも、畑は早急に復興しなくてはならない!


 俺はテキパキとみんなに指示を出し、作業を進めていく。

 畑の周辺に散らばった苗を拾い集め、まだ使えそうなものと捨てるものとに分ける。

 その後で土を耕して、新しく畝を作り、苗を植え直して、柵を新たに設置した。

 作物の数は随分と減ってしまったが……、まぁ、節約すればなんとかなるだろう。


 グレコは、俺たちピグモルよりももちろん力持ちなので、柵の設置に一役かって出てくれた。

 ただ、薙ぎ倒されたテトーンの樹、こればっかりはどうしようもなくて、途方に暮れていると……


「我が、直そうか?」


 茂みの中からにゅっと、ガディスが現れたではないか。


「ぎゃあぁぁぁ~!?」


「いやあぁぁぁっ!!」


「化け物だぁああぁぁぁっ!!!」


 あまりに急で、あまりに巨大で恐ろしいガディスの出現に、ピグモル達は叫び声を上げて逃げ惑う。


「みっ!? みんなっ! 落ち着いてっ!!?」


 俺が必死に声を上げるも、パニックに陥ったみんなの耳には届かず……

 みんなが自力で落ち着くまで、静観するしかなかった。


「す……、すまない、重ね重ね……」


 落ち込むガディス。

 何やらガディスは、昨日、俺とグレコを小川の近くまで送った後、西の森へは帰らずに、一晩中近くに潜んでいたそうな。

 しかも、村の事が気になって気になって仕方なくて、一睡も出来なかったらしい。


 そんなにピグモルの事を心配してくれているのか〜、なんて、俺が感動していると……


「どうしてここにいるのよっ!? 駄目って言ったでしょ!!?」


 飼い犬に叱り付けるかのごときセリフで、グレコは激怒した。

「時期を見て謝罪する」という約束をしたにも関わらず、すぐさまそれを破ったガディスの態度が気に入らなかったらしい。

 ガディスはしゅんとして項垂れて、悪戯をした小さな子供みたいに怒られていた。


 しばらくして、落ち着きを取り戻したみんなに対し、このガディスこそが長年に渡ってピグモルを見守ってくれていたのだと、俺は再度説明をした。

 受け入れが早いみんなは、俺の言葉を素直に信じてくれた。

 そして、ガディスの希望もあって、薙ぎ倒されたテトーンの樹の撤去作業は、薙ぎ倒したガディス本人が行う事となった。

 見上げるほどの巨体であるガディスは、その大きな口で倒れたテトーンの樹をガブリと咥えて、さっさと他所へと運んでくれた。


 その後、改めて、ガディスはみんなに謝罪をした。

 頭を深く深く下げて、長々と謝罪の意を口にするガディス。

(その言葉が長過ぎたから、作者は割愛するようです)

 ガディスもグレコ同様、ピグモル達とは言葉が通じないようで、謝罪をしてもみんなには唸っているようにしか聞こえたなかったみたいだが……

 元来温厚で優しいピグモルたちだから、俺が通訳すると快く許して、ガディスを受け入れてくれた。


「フェンリルのガディス様、我らピグモルを長年に渡りお守りくださっていたとのこと、モッモより聞き及びました。ピグモルを代表して、長老であるこのわしが、感謝の意を表しますです。本当に、ありがとう……。そしてこれからは、あなた様を守護神として、奉ります〜」


 深々と頭を下げた長老の言葉をガディスに伝えると、「守護神」という部分がどうやらとても嬉しかったらしく、ガディスはその大きな尻尾をぶんぶんと振っていた。

 さすが犬型の魔獣……、喜び方はほぼ犬だな。


 その後、長老たっての要望でガディスは、月に一度、タイニーボアーの肉を村に届ける約束をした。

 なんというかまぁ……、うん、ガディスがそれでいいならいいよ。






 それから数日が経って……


 なんとか村の修復作業に目途が付いた頃、グレコが俺に提案してきた。


「ねぇモッモ。これから二人で、旅に出るわけだけど……。私、一度セシリアの森へ帰ろうと思うの」


「はへ? どうして??」


「うん、実はね……。これ、ムーグルにとられた時に折れちゃって」


 そう言ってグレコが差し出したのは、無残にも真っ二つに折れ曲がった弓。

 弦が切れて、持ち手の湾曲した部分がぽっきりと折れてしまっている。


「あちゃ〜……、こりゃまた、派手にやられちゃったね……」


 壊れた弓を見て、これが自分じゃなくて良かったと、俺はブルリと身震いした。


「持ち手が折れちゃうと、さすがに直しようがなくてね。弓がないと、この先旅をするにも不安だし、とりあえず里に新しいのを取りに帰ろうかなって。あと、ピグモルたちに食糧を分けてもらえるよう交渉してみようかと……。さすがに、この有様じゃ心配でしょ?」


 畑を指さして苦笑いをするグレコ。

 うむ、それは俺もかなり心配していたんだ。

 なんとか畑は元通りにしたものの、苗の数が格段に減ったし、その苗だってしばらく土から離れていたから、すぐ枯れて駄目になってしまうかも知れない。

 何より、畑の作業一式を取り仕切っていた俺が旅に出るから、このままだと不安で仕方がなかったのだ。


「わかった! じゃあ……、うん、僕も一緒に行くよ!! 食糧を分けてもらえるなら、ちゃんとお礼を言いたいしね」


 ニッコリと笑う俺。

 だけど……


「えっ!? ……一緒に来るの?」


 一瞬だけど、グレコの表情が曇った。


「え? うん。……駄目かな??」


 何か、問題でも……???


「あ……、ううん。ううん、いいよ! 大丈夫大丈夫!! 何でも無いから、気にしないでっ!!! さっさと弓取って、食糧もらって、旅に出よ。はははは~」


 なんだか少し、グレコの様子が変な感じもするが……

 この時の俺は、それほど気には留めなかった。


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