意思を持つモノ
アイリス消失騒動から数時間、照馬はミステリアス・ファンタジー内にいた。そこで長年のフレンドのリズとともに、クエストをクリアした。その頃アイリスはファントムと今回の騒動について話していた。
こうして照馬とリズが異変を直すためにクエストに挑戦する数分前、
まさに照馬が転送された後のこと。
「そういえば、ファントムはどうしてこんなことが起きたのかっていうのは分かるの?」
アイリスは照馬に手を振って見送ったあと、このようなことを言いながらファントムに目を合わせた。
今起こっている原因はファントムが少し知っているのではないかと考えたのだ。
解決するために出てきたであろう、クエストの存在に気づいたのはファントムであるし、何せファントムは赤とんぼ(今の照馬)の願いを受けとって、世のアニメ好きなどが思う理想を、普通に生活していれば絶対に起こりえないであろうことを、彼はいとも容易くやってのけたのである。
それだけのことが出来たのであるのだから、アイリスそのようなことを考えるのは妥当である。
しかしその考え抜いた策はいとも簡単に破り去り、アイリスの予想していた答えとは180度違う回答が帰ってきた。
「それが自分にも分からなくてな… こちら側が何かしたというよりか、現実側が何かやらかしたのではないかと考えるのが妥当だろう」
しかしツッタカターで運営に対して問い合せたユーザーがいたが、運営側も分からないという返答が帰ってきたというつぶやきを見たとアイリスも反論した。その上である仮定を建てたのだった。
「例えば私が照馬のところに行ったのが原因ってこともあるの?」
その言葉をファントムに伝えたあと、言葉では威勢のいい口調だったが、その顔に浮かぶ目にはなんとも言えない哀愁が漂っていた。
「そのことも考えたのだが…アイリスがこちら側の世界からいわゆる現実世界に行ったのが約1週間前なのだ。だから1日経ってからゲーム内に反映されるというのだったら、そうも考えられる。しかし今回は1週間経っているのを見るとそれも考えにくい。私自身もその可能性があったらまず照馬の願いを聞き入れることはしないだろう。」
それを踏まえた上でファントムは考えうる一つの可能性を唱えた。
‘‘自分達の知らない存在がこの事態を引き起こしている‘‘
急にSF系のファンタジーになって、アイリスも流石に無いと思い否定しようとしたが、一瞬冷静になって考えて見ると運営側も知らない。ファントム側も知らない。となると、自分達の知らない‘‘ダレカ’’がこの自体を引き起したのだとしか考えることが出来ないのだ。
もしそれが行われていると仮定すると、ファントム以外にもこの空間を行き来することができる存在がいるということである。
事実、照馬はアイリスとファントムを媒介してこの空間に滞在することが出来ている訳であるから、出来ない話では無いのだ。
「その存在がどのような存在っていうのは分かるの?」
「それがまだ未知数でな…こんなことが起きたのは初めてだからな…また何かあったらお前達の前に出てくるかもしれないな」
とりあえず運営でもなく、ファントムでもない何かがこの状況を起こしているというところで、落としどころが決まった。この事実に驚きと恐怖が襲ってくるが、今どうこうしたところで何かが変わるわけでは無いので、次の起きたその時に確認するしか無いのである。
そんなこんなで結論が着きいたのだが、アイリスはふと興味程度にこんなことを聞いてみた。
「そういえば、何で今回私が使われているのかしら…ていうか、私はどうして向こうで生活出来るのかしら、そして何で魔法が向こうでも使えるのかしら」
ファントムならもしかしたら知っているだろうと思い、何か自分を知る足しになれば程度に聞いてみた。
「そうだな…
実際私もよくは分かって無いのだが、少し分かることを伝えるとすれば、他のキャラクターに無くて、アイリスにはあるモノがある。逆に他のキャラクターにはあってアイリスには無いモノがある。ということくらいか」
「それは一体…なんだ?」
「それは、意思があるということだ。」
ん?と一瞬アイリスは訳が分からないとでも言うように首を傾げた。確かに当たり前なこと過ぎて、アイリスがこのような態度をとるのはファントムでも想像出来た。それを踏まえた上でファントムはこう続けた。
「確かに今アイリスは人と接したり、私と接しているから気づきにくいかもしれんが、普通ゲームのキャラクターは意思を持たずにパターンで動いているのだ。身近な物で例えると、車の事故をしないようにするために、信号機が車の往来を誘導しているだろう。」
「それが意思とどう関係するんだ?」
「信号機は自分の意思で車を止めたりするかな?
もし信号機が嫌いな車が来たらずっとその車を止めっぱなしにするところを見たことがある?」
「見たこと無いし、そんなことあったら私達まで困ってしまうな」
「ということは、信号機はあるタイミングでしか動いていないということになる。即ちパターンで動いているんだ。これを踏まえてキャラクターを見てみると…」
そう言うとファントムは指をかざす。するととある2人の剣士がダンジョンの中を縦横無尽に駆け巡っていた。
その姿はどこかで見たことのある顔立ちだった。
照馬である。
よく見ているとその横に敵キャラが居て今交戦中出会った。しかしその戦闘を見てみると、どう見ても照馬達の方が強いことは明白であった。
「もしこの状況だったら、アイリスはどうする?」
「私だったら、これから先も長いから体力を温存するために、一旦逃げたりす…」
「そういうことなんだよ」
言葉が途中で遮られたという怒りよりも、ファントムがその言葉を言ったことが一瞬理解出来なくて戸惑ってしまった。
「アイリスはそのように作戦など考えることが出来るが、彼らたちはそのような事が出来ない。ただ突っ込んで倒されていく運命なのだ。」
「つまりは、パターンで動いているってことね…」
「そういうことだ。残酷なことだが、彼らはそれに抗うことが出来ない。そこがアイリスとの決定的な違う点だ。それ故意思が持てるし、自分で物事を決めれる。逆に弱点というのは、自分で何かしようと思わないと何も出来ないということだ。パターンが組み込まれて無いのだから。」
「まあパターン化されてるということは、自分の嫌なこともしなければならないのだ。 例えばアイリス自身が、自分の手で照馬を殺めることだってあるかもしれないのだ。」
それを聞いただけでアイリスは向こう側の存在ではなくて良かったと心底安心したと同時に、自由に出来ることの恐怖も覚えたのだった。
「その自由とアイリスの意思が合わさった時、とても凄いことが起きる気がするのだ。それも私自身をも飲み込んでしまうほどの。それがいつか世界を変えてしまうものかもしれない。その瞬間を少しでも見てみたいものだがな。」
「私の意思と…自由…」
そのようなことを言われてアイリスのことが少しずつ分かってきたところで、突然空間が歪み出した。一瞬アイリスはファントムと運営以外の‘‘ダレカ’’が来たと思い炎を身構えたが、ファントムはいつものような穏やかな口調で言った。
「ご主人様が帰ってきたぞ。出迎えするのに炎を手に収めといていいのか?」
一瞬この炎をファントムにぶん投げてやろうかと思ったが、照馬が帰ってきた瞬間にファントムが燃え盛っている光景を見せるのは、流石に照馬に申し訳ないと思い炎を空中に分散させ、今から帰ってくるご主人様に向けて、精一杯の労いの言葉を言おうと心に決めた。
世界変えてしまうような事象が起こった時、アイリスの意思と自由の力が不可欠だということはまだ彼女は知らない──
どもども こんにちは、こんばんは。はやぶさです。
本編の解説に行こうと思いますが、その前にいつも通りの雑談を笑。もはや恒例行事ですね。
突然ですが、今回の更新で「空想ゲート」が1周年になりました!(*゜▽゜ノノ゛☆パチパチ☆♪
とは言ったものの、まさかの11話更新という…月に1回更新もしてないというまさかの大失態…
ここからちょっとずつ無理しない程度にやってこうと思います。また応援お願いしますm(_ _)m
そこで、試運転してた週一更新を一旦切り上げてまた新しく案をねってきます。
いや、あの…どうしても小説を書く上で義務感しか出ないというか…何というか楽しくないというか…それじゃあいい物も出来ませんし、作品にも悪影響が出るかと…チ───(´-ω-`)───ン
ということで、更新する時はTwitterにて連絡しますので、Twitterを要チェックですよ!
では、本編の解説を。今回はアイリスとファントムの会話が多かったですねー
書いていた時に思ったのですが、当たり前のことに気づくって簡単なようで難しいんだなって思いました。人に言われて気づくこともあるわけで、そんな時に自分の知らないところが分かるのって新鮮でいいなって思います。まぁそれが良いことなのか悪いことなのかは置いといてですね笑
さて、次回はいつになるか分からないけれど、久々の日常回です!やったぜ
また愉快な彼らが出てきますよ。やっぱり彼らがいないと空想ゲートって感じじゃないです笑
では、今回もここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m これからも応援よろしくお願いします!
それではこの辺で