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黒龍帝のファンタジア  作者: NTIO
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黒龍帝VS混成部隊④

 恭介だ。恭介がニコニコと笑みを浮かべて、手を振っていたのだ。ふざけた態度だが、混成部隊の面々に衝撃を与えた。それを恭介は満足そうな顔で見て、体の前で腕をクロスする。


「桐谷流 体術 五の型 龍旋hy !? 」

「おうおう、俺を忘れてもらっちゃあ困るぜ。閃光のジオ様をよぉ。」


 龍旋百花を発動しようとしていた恭介へと向かって剣が振るわれる。恭介は一撃目を体を逸らす事で躱し、二撃目を屈んで躱す。そして、反撃に転じる。恭介はしゃがんだままの体勢から、ジオに足払いをかけた。


 当たれば足を粉々に砕けそうな威力を誇る一撃をジオは飛び上がる事で回避する。恭介は空中で腰に差していた短剣に手を伸ばしているジオを見て、笑みを浮かべた。


「空中に逃げるなんて愚策中の愚策だ。空中で動けないお前はいい的だ! 」


 恭介はジオに向かって手を翳す。するとジオはニヤリと偶然かどうかは知らないが、恭介と同じ笑みを浮かべた。そして、短剣を投擲してきた。シュン! と風切り音を鳴らして、迫る短剣を恭介は弾くまでもないと首を倒すこと事で避ける。


「無駄な抵抗だ。俺にみえみえな飛び道具は通じない。眠れ。」


 メラメラと手に黒炎を纏わせて、恭介はジオ目掛けて放とうとするが、後方に接近する気配を感じて後ろに振り向きざまに手を横薙ぎに振るう。


 ガキンッ!!


「グッ!? 」

「へぇ、俺の一撃を耐えるなんてやるじゃないか。結構強めにやったんだけどな。傷ついちゃうよ。名前教えてくれない? 魔人さん。」


 恭介は金属音を響かせて、自分の一撃を防いだイリーナを見て目を見開いた後そう言った。状況としては恭介の黒炎を濃密に纏った手をイリーナが必死に、生命力を吸われながらも押し返している状況なので、イリーナに応える余裕はない。


 イリーナは目の前で、本当に驚いたという顔をしている恭介を腹立たしい思いで、息を荒らげながら見つめる。


(この、黒龍が。人が必死になって耐えているっていうのにムカつく!! その綺麗なお顔に1発パンチ入れてやりたいわ! それにしても、魔剣ダーインスレイブを手にしたルオス様と本気を出したガウェイン、そして私を含めてこの余裕な態度。本当どうなってんのかしらね。でも、その慢心が命取りになるのよ。)


 イリーナはルオスとガウェイン、ジオ、エフィアに目線を送ってから、剣を握っている手に力を目一杯いれて吠える。


「ハァァァ!! こんの理不尽にも程があるでしょうが! 黒龍がぁぁ!! 」

「お、まだ力を残してたんだ。見た目に寄らずに馬鹿力だな。」

「煩いわね! レディにそんなこと言うものじゃないわよ! そんなんじゃ女の子にもてないわよ? 」


(でもここで死ぬんだから、関係ないでしょうけどね。)


 イリーナはそこで言葉を切り、額に汗を流し流しながらも口角を上げる。恭介の背後から、ルオス、ガウェイン、ジオが己の武器で切り掛かり、エフィアがロッドから無数の氷の槍を生み出して発射したからだ。


 イリーナは最後の力を振り絞って、恭介を抑えに掛かる。ここで逃してしまえば自分は黒炎に生命力を吸われていてもう動けない。絶対に逃さない。そういう気持ちが前面に出た気迫の行動。その行動はしかし、報われることはなかった。


 恭介と押し合っていた剣がするっと突然何の抵抗もなくなり、恭介の体を突き抜けそしてイリーナの体までもがそうなったのだ。


「え? 」


 イリーナはそう言葉を漏らすしかない。目の前には迫り来る恭介へと向かうはずだった数々の攻撃。避けることは出来ない。恭介とのやり取りで全て体力を持って行かれたのだ。そして、攻撃を仕掛けていたガウェイン達は突然恭介を突き抜けて出てきたイリーナに困惑して、慌てて攻撃を止めた。しかし、攻撃を止めることができるのは、エフィアを除いた者達だけだ。エフィアの攻撃は止まらない。


「みんな某の後ろに隠れるのである! ウォォォォ!! 」


 ガウェインは迫り来る氷の槍の嵐を見て、全員を庇うように大剣を構えた。そして氷の嵐はガウェイン達を襲う。


ズドドドド!!


 氷の槍はガウェインの大剣を、鎧を削っていく。だが、それでもガウェインは膝をつかないで耐える。それを後ろでガウェインに庇われている面々はギリっと歯噛みして見ていた。


「畜生ふざけやがって! 」

「クソ、またこれか! どうなっているのじゃ! 突然消えよってからに! 」

「はぁはぁ、突然よ。突然消えたわ。」


 ルオス、ジオ、イリーナはガウェインが氷の槍を防いでいる間に、何とか原因を探そうと辺りを注意深く探る。しかし、先程と同様何も見当たらない。そう、何も。混成部隊の面々でさえも。


「ね、え。私の気のせい、かしら。誰もいないんだけど。」

「いいや、気のせいじゃねえ。気づかねぇ間に、気配が途絶えやがった。まるで黒龍みてぇーにな。」

「これは‥‥血の匂いじゃ。血の匂いがする‥‥。」


 ルオスは目を瞑りながら、スンスンと鼻を鳴らして、そう言った。それにジオはハッとなって、耳と鼻を忙しなく動かす。そして徐々に顔色が悪くなっていく。額には冷や汗が浮かび、何を思ったのか地面を強く殴りつけた。


「ルオス様の言う通りだ‥‥。微かに本当に微かに、血の匂いがしやがる。獣人族である俺が気づかねぇくらいに匂いが薄い。しかも、あちこちから剣戟の音と悲鳴、チッ! あと黒龍の声が聞こえて来やがるぜ‥‥。」

「「「っ!? 」」」

「それは本当であるか!? ジオ! 」


 ルオス達が、声も出ないとばかりに口元を抑えていると、最後の氷の槍防ぎきったガウェインがガシャンッ! と膝をついてジオに尋ねた。ジオはそれに頷いて答える。


「ああ、本当だ。聞き間違えはねぇ。確実にこれは黒龍の声だ。何で見えねぇのかは知らねぇが、ここで今も戦闘が‥‥いや、どうやら終わったようだぜ。」


 ジオがピクッと耳を動かして、そう告げると突然空間が歪んで1人の女性が飛び出してきた。その女性は手にロッドを持っており、そのロッドを前に構えていることと、服が焦げているところを見るに、今しがたまで戦闘をしていたのだろう。


 その女性は勢いよく地面に叩きつけられて、ルオス達のところまで転がっていく。そして、カランとロッドを音を立てて落として止まった。イリーナはその女性を見て慌てて駆け寄る。


「エフィア!? どうしたの!? 何があったの!? 」


 その女性、エフィアはイリーナの呼びかけに、閉じていた目をゆっくりと開け、途切れ途切れに話し始める。


「黒龍に攻撃したと思ったら、お前達と黒龍が突然消えて、気づいたら周りに私と4名以外は誰もいなくなっていた。カハッ! フゥフゥ、そして黒龍が現れて‥‥」

「俺に撃破された。」


 エフィアが話している途中に、再び空間が歪みそこから恭介が現れた。その手にはボロボロに傷ついた男性を掴んでおり、ズルズルと引きずっている。恭介はそれをポイッと投げて、ニヤリと口元に笑みを浮かべた。


「っ!? 貴様ァァァ!! 」

「イリーナ落ち着くのである! 今ここで飛び出して行ってもさっきと同じなのである! 」


 それを見たイリーナは体に力が入らないのを、気にせずに恭介に飛びかかった。ガウェインは剣を片手に、恭介に向かうイリーナを羽交締めで止めた。しかし、イリーナはどこにそんな力を隠していたんだというくらいの力で、ガウェインを振り解こうとする。


 ガウェインとイリーナのそんなやり取りを見て、恭介は敵の前で何やってんだよと、ため息を吐いてからバシン! と尻尾で地面を叩き、口を開く。


「その首無しの言う通りだ。俺が桐谷流 体術 二の型 幻龍を発動している限り、俺を捉えることは出来ない。まあ、これの対処法は2つあるんが、わざわざ教えてやる義理もない。さて、続きと行こうか、と言いたいところだけど。」


 恭介は言葉を切り、翼を広げて羽ばたき、空中に飛び上がる。その恭介の体は先程より一層、黒炎を噴き出していた。もはや黒い太陽と言っていいほどに黒炎が広がった所で、恭介は両手を広げる。


「その前に、全力で戦ってくれたことに敬意を評して、俺の”黒龍帝”としての全力を見せてやる。《龍化》」


 ピカッ! と恭介の体から目も開けていられないほどの光量が発せられ、ルオス達は目を手で覆う。そして、次に目を開いたときにはーーー


ーーー世界は黒い炎に包まれた。

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