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黒龍帝のファンタジア  作者: NTIO
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黒龍VS混成部隊①

「いいぜ。今度は骨があるんだろうなぁ? 」

「某の剣技! そこいらのものと一緒にすると痛い目を見るのである! ハッ! 」


 ガウェインは大剣を勢いよく振り下ろした。暴風を伴ったその一撃は岩をもバターの如く切り裂く。だがそれを恭介は素手でしかも片手で受け止める。


 ゴウッと辺りに風が吹き荒れ、地面は砕け散るが恭介はニヤリと笑みを浮かべた。ガウェインはあまりに余裕な恭介に驚愕する。


「なにっ!? 」

「いい剣技じゃないか。そんじょそこらの奴なら真っ二つだっただろうぜ。だが残念だったな。桐谷流は剣術でも槍術でもそして素手でも戦える様に、ありとあらゆるものを学ばさせられる。そして、その中には攻撃の受け流し方もあって、武器によって様々な効率的な受け流し方を身体に染み込ませるんだ。それを習得している俺にとってこの程度、屁でもない。」


 恭介はそこで言葉を切り、剣を掴んでいる手に力を込めて、押し上げていく。ガウェインはそれに対抗する様に力を込めるが、一瞬拮抗しただけで再び恭介が押し始めた。ガウェインはギリギリと手に力を込めながら、声を張り上げる。


「流石黒龍帝である! 某の力を持ってしても片手一本の力にも及ばぬとは! だがなんのこれしき、某の剣技の真骨頂はこの程度ではないのである! 風よ! 」


 するとガウェインの持っている剣に可視化できる程の魔力が迸り、緑色の膜の様なものが現れた。恭介はそれを見て、剣を握っている手から黒炎を噴き出し、飛びのく。本能がこれは危ない! と告げていたのだ。


(なんだあれは、魔法か? 剣が微妙に輝いてやがる。それに‥‥)


  恭介は自分の手のひらを見てみた。するとそこには薄っすらと切れ、血が滲んでいる手があった。その手は先ほどまで、ガウェインの剣を抑えていたものだ。剣を抑える時は、手を切らないよう、手というより指で掴んでいたというのに、だ。


(おいおい、まさかあの緑色の膜、触れてなくても切れるのか? ハハハ反則じゃねぇか。でもそれも面白い。間合いが分からないこの緊張感、滾る。)


 恭介は口元が自然と緩むのを感じながらペロっと自分の手の血を舐めた。口なか中に血の味が広がるが、恭介は何かおかしいことに気づく。


(痛みが、ない? )


 そう痛みがないのだ。傷口を舐めたのであれば通常なら、痛みとは行かなくてもなにかしら感じるものがある筈だ。それがない。まるで傷がないよう‥‥


 恭介はまさかと手に目を向ける。手はついさっきまで傷があったのが嘘のように、綺麗だった。


(まさか、回復したのか? 今の一瞬で‥‥。俺も人のこと言えないな。というかこっちの方が反則だろ。)


 天人族しか治癒能力を行使できない中で、異常と言えるまでの回復力。これだけでかなりのアドバンテージだ。それに恭介は龍気と魔力まで使えるときた。相手方にとってこれ程までに、やり辛いものはないだろう。


(まあ、向こうは18人、こっちは1人。これくらいのハンデを貰っても別にいいだろう。それになにか切り札みたいなのを隠しているようだしな。)


 恭介はいつでも対応できるように構え、どうやって黒炎を逃れたのか、少し鎧が焦げた程度のガウェインを筆頭に自分を囲んでいる先程より少し減った混成部隊に視線を走らせながら、ルオスへと意識を向ける。


(あの吸血鬼、獣人族や森精族、魔族とは全く異なる気配が、魔族としての気配と重なるように感じる。とても嫌な気配だ。なんなんだこれは。俺の知識にはこんなのないぞ。あり得るとすればこの世界の兵器か、あるいは‥‥っ! )


 恭介が考えていると、囲んでいる混成部隊を超えるように炎や、水、風、氷が雨のように降り注いで来た。


「ったく 人が考えている最中に攻撃するとはいい性格してんじゃねえか! 桐谷流 一の型 龍牙! 」


 恭介は龍牙を放つ。すると恭介の手から黒い炎が伸びて、魔法の雨と激突する。


ドゴォォォン!


 両者が放った攻撃は、激しい爆発音を辺りに響かせ、恭介が放った龍牙が魔法の雨を食い破るように空へと突き抜ける結果で終わった。恭介はそれを視界の端に入れて、じゃあ始めようかとドンッ! と駈け出す。しかしそれをガウェインと混成部隊は行かせないとばかりに各々の武器を構える。


「某が生きている以上! エフィリアの所には行かせないのである! 」

「止められるものなら、止めてみろ。ハッ! 」


 恭介は槍を構えている男へと詰め寄り拳を振るう。男は槍で拳を払い落とし、逆に恭介の胸に突きを繰り出そうとするが、恭介の拳は男の槍などもろともせずに食い破り、腹へと突き刺さった。


「ゴフっ!! 」


 ベキベキと骨が折れる音を聞きながら恭介は、拳を振り切る。男は大きく弧を描いて、吹き飛ぶ。その男はドガァァァン! と音を立てて、地面に勢いよく叩きつけられた。口から血を流して横たわっているが、生きてはいるだろう。生きては。致命傷だが。


「ライン! 」


 男が吹き飛んだのを見て、弓を構えていた女性が矢を放ち、叫んだ。それを見た恭介はもしかして彼女か? と尻尾で矢を叩き落とし、迫り来る混成部隊の面々の攻撃を翼で防ぎ、足で蹴り倒しながら考える。


(もしそうであると仮定した場合、あの男はおっさんでありながら、高校生くらいの少女を彼女に持っているという事になるな‥‥。なんだこの腹の奥から這い上がってくるような怒りは! 俺は彼女なんて人生において一度もできたことがないっていうのに! よし決めた。決めたぞ~、男は気持ち強めで殴ろう。これ絶対なっ! )


 恭介は足で男を踏みつけながら、そう理不尽な八つ当たりと言える物を決意すると、後ろから迫る気配を感じ、飛び跳ねた。するとゴウッ! と恭介が跳ねた後の空間に剣が横薙ぎに振るわれた。


「チッ! すばしっこい奴だぜ! 」


 それをやったのはまんま馬顔の男? だ。恭介はその男に対して魔族にはこんなのもいるんだと思いながら、空中回し蹴りを放つ。


「ハッ! 」

「そうはさせないよ! 風よ! 」


 蹴りが腕をクロスしてガードしている男にあと少しで突き刺さるというところで、物凄い勢いで矢が3本飛んできた。恭介は蹴りを中断し、その矢を対処する事に専念する。1本目を手で横に軌道を逸らし、それと同じように2本目、3本目と対処した。


 後ろからドゴン! と矢が出せるような音ではない、音が聞こえてきたが、これも魔法が絡んでいるのだろうと恭介は結論付ける。矢を弾く際に、薄っすらと緑色に輝いているのが見えた、恐らくあの甲冑と同系統の効果が違う、矢の速度を上げるような物だなと。


(厄介極まりないな。遠くからチクチクやられてたら、今のように邪魔されるし、いずれダメージを受けかねない。今のうちに潰しておくか。)


 そうと決めた恭介はバサッ! と1つ羽ばたき、滞空して弓、ロッドを持っている集団へと視線を向けた。

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