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誰かの願いが叶うころ その7

「ショートコント、“魔法少女”。……うはははは、この街を破壊してみんなから悲しみパワーを吸い取ってやる~」

「そこまでよ!」

「む! なんだ貴様は!」

「ボクは魔法少女マジカルミミミだよ! みんなを悲しませたりなんかさせない!」

「魔法少女マジカルミミミだと!?」

「勝負よ! マジカルステーッキ!」

「面白い! 魔法勝負といくか!」

「マジカルミラクルク~ルクル~! 撲☆殺!」

「使い方間違っとるやないか~い!」

「う~……」「ジンボ!」


 舞台上ではミミミちゃんとシド君が割と真面目にコントをしていた。


「な、なんか仕上がってるぞ土佐ケン……」

「あの二人からはぼんやりと将来人気者になれる空気を感じたんだ……どうやら賭けに出て正解だったらしい」


 それにしてもリスクの高い賭けだった。


 二〇一二年十月。謳歌学園フェスはなんとか開催にこぎつけた。

 校庭には割としっかりとしたステージが用意され、校舎の前には榊さんのスーパーから出店してきた屋台が並んでいる。

 宣伝の効果があったのかなかったのかはわからないが、近所の子供たちやその親がそれなりに遊びに来てくれていた。

 俺とナユタは朝からそこかしこで発生するトラブルに追われていたが、昼頃になってようやく解放され、焼きそばを食べながら校庭で舞台を眺めていたのだった。


「はあー、美味かった! よし、校内を見回るぞ土佐ケン!」

「お前遊びたいだけだろ」

「な、なにを言う! それぞれの出し物がちゃんと安全に行われているか、確認するのも実行委員の役目だろう!」

「そりゃそうなんだけどさ……。んじゃ一回から見ていくか」

「わーい! ……あっ」

「……」


    ・・


 一階。食堂のフリーマーケットスペース。

 謳歌学園の生徒が作った小物や衣服、アクセサリーの他、同人誌や手作りの絵本なんかも売られていた。

 人はまばらだったものの、自分で作ったものを販売できるイベントの一つとして根付いてくれると嬉しいのだが……。


 一階。理科室。


「はーい、ここに二種類のガスがありますね」


 山田先生は今日も謎のハイテクヘルメットを装着したまま、加工された低い声に若干ビビっている子供たちを前に実験らしきことをしていた。


「こちらがヘリウムガス。ちょっと君おいで」

「えっ、俺ですか……」


 なぜか突然指名された俺は、山田先生の隣に立った。


「ここにヘリウムガスを溜めたビニール袋があります。これを被って」

「ええ……」


 果てしなく不安だったが、俺は頭からそれを被った。


「なにか喋ってみて」

「な、なにかってなんですか」


 あっ。めっちゃ声高くなってる。子供たちがゲラゲラと笑い出した。

そうか、子供たちだと声あんまり変わらないのか。


「それじゃ、そこの君も来てください」

「お、なんだなんだ!」


 今度はナユタも呼ばれ、黒板の前に立たされた。


「ヘリウムガスは軽い気体なので、空気よりも早く振動することで声が高くなります。では空気よりも重いクリプトンガスではどうでしょうか」


 山田先生がナユタにビニール袋を被せた。


「あーあー。おお、低くなったぞ!」


 ナユタの澄んだ声が突然山田先生の声のようになって、子供たちはお腹を抱えて笑い転げた。


    ・・


「実験楽しかったな!」

「ああ、思いの外ちゃんと実験してて安心したわ……。ちびっこたちに向けてバズーカ撃ったりしてたらどうしようかと……。ん」


 ブレザーのポケットに入れていたスマホが振動して、着信を告げる。見ると南雲さんからだった。


「もしもし? どうしました?」

『あ、土佐君? 大変なの! サトル君の実家からお義父さんたちと一緒に向かおうとしてたところだったんだけど、その……』

「え、大丈夫ですか? まさか事故に巻き込まれたとか……」

『その……信じてもらえないかもしれないんだけど、駅の近くにあった小学校が“消えちゃった”の……。周囲の建物とか線路も一緒に……』

「……え? 消えた?」

『うん……。崩れたとか爆発したとかじゃなくて、消えたの……跡形もなく……』

「なんですかその映画みたいな……。原因はわかってないんですか?」

『跡地に一人だけ女の子が残されてたみたいで、今警察がその子に事情を聞いてるみたい』

「んー、考えてもしょうがないですね……。それで、こっちにはこれそうなんですか?」

『点検とかのために全線止まっちゃってて、新幹線はダメみたい。今タクシーを呼んだとこなんだけど、新潟からだから結構かかっちゃうかも……』

「新潟!? な、なんでそんなところに……」

『せっかくのお祭りだから家族みんなで行こうと思って……新幹線なら二時間くらい着くから、余裕だと思ってたの……』

「車だとどれくらいかかるんですか?」

『多分、五、六時間は……』

「六時間……」


 もう昼の二時を回ってる。ってことは……。


「ライブに間に合わない……ですね」

『どうしよう~……』


 こっちの台詞です南雲さん。

冒頭のショートコントはミミミの作者である神橋つむぎさんに書いていただきました!

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