誰かの願いが叶うころ その2
放課後、生徒会室。
「えーと、じゃあ文化祭実行委員会を始めたいと思います。うっかり実行委員長になってしまった土佐です」
「よっ!」
ナユタの煽りでなぜか拍手が生まれる。恥ずかしい。
「そして私が! 副委員長を務める皇ナユタである!」
すっかり謳歌学園のマスコットキャラと化したナユタに、黄色い声援が飛んだ。
ナギちゃんに南雲さん、榊さんの三人は強引にナユタが巻き込んだのだが、それ以外にも何人か自発的に挙手してくれた人がいたのだ。そりゃナユタのテンションも上がる。
ちなみに桜庭先生とソノカさんにも同席してもらった。
「えーと、自分のやりたいことを発表する前に、皆さんが文化祭でやってみたいことってなにかあります?」
すぐに手を挙げてくれたのは、俺たち以外で最初に立候補してくれた、南雲さんと同じくらいの歳の女性だった。
「どうぞ」
「あの、私趣味でパッチワークやってるんですけど、そういう雑貨とか小物を売るフリーマーケットみたいなものはできますか?」
「いいですね。ナギちゃん、ホワイトボードに書いてもらってもいい?」
「うん、わかった」
「はい」
「はい。ソノカさん」
「わかってると思うけど、ライブはやるぞ。お前ら以外にもかなり形になってきたグループがあるからな」
「それはもちろんです」
「あの、俺たちもやってみたいことが……」
「お、どうぞどうぞ」
ナギちゃんの素晴らしく綺麗な字で、続々と挙がった候補が書かれていく。さすがに自ら実行委員になっただけあって、みんなそれぞれやりたいことがあったようだ。
一通りの意見を聞いて、ホワイトボードに並んだ文字を眺める。
フリーマーケット、ライブ、コント、ダンス、コスプレコンテスト、屋台。
「うん、大丈夫だな……」
「大丈夫ってなにがだ?」
「ナギちゃん、ちょっとペン貸して」
「あ、うん」
ナギちゃんからペンを受け取った俺は、それまでに挙がった候補を大きく丸で囲み、空いているスペースへ線を引っ張った。そして我ながら下手くそな字を書きこんでいく。
「これまでに挙がったものをすべてひっくるめて、フェスをやりましょう。その名も“謳歌学園フェス”」
「そのままだな」
「他に思いつかなかったんだよ……。まあネーミングはさておき、できることはすべてやりたいと思ってます。しかもこれらのいくつかは、近隣の住民や学校、お店なんかにも協力をお願いできる点が重要なんだ。今いる謳歌学園の生徒だけじゃ、この学校全体を使った大きなイベントにはできないと思うから」
「おお、考えてるじゃないか土佐ケン……!」
「伊達に立候補してないぜ」
「キャラ変わってるぞ土佐」
「……」
ソノカさんに突っ込まれて軽く赤面したが、気にしたら負けだ俺。本題を話そう。
「お、おほん。実は、謳歌学園は今結構経営難に陥ってます。ってこれ勝手に言っていいのかわからんけど……」
「構わん、事実だからな」
ナユタが飄々と言ってくれたので、続けることにする。
「真面目な話、謳歌学園は早くも存続の危機に瀕してます。だけどこれが上手くいけば、多少の収益も生まれるだろうし、名も売れると思うんだ。謳歌学園がこの土地になじめば、今後長くやっていけるんじゃないかな……」
「とっ、土佐ケン……! お前そこまで考えて!」
「か、勘違いするなよ! 俺はフェスやったら楽しそうだなって思っただけだからな!」
「ツンデレかよ」
ソノカさんほんともう勘弁してください。




