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迷子の子猫ちゃん、犬のおまわりさん その5

 ぐったりしたナユタを連れ、夕食を済ませた後。


「よし! スタジオ行くぞ!」


 元気を取り戻したナユタは、俺たちを引き連れて夜道を歩いた。

 練習に使うスタジオは俺が中学の頃によく遊びに来ていた場所だったので、桂木に行った時と同じような「久しぶりだな」「久しぶりですね」のやり取りがあったのだが、楽器を借りてスタジオに入るところまでざっくり割愛する。


    ・・


 最後の音が減衰して、スタジオにノイズの音だけが残った。


「おう、かなり様になってきてるじゃん」

「良い感じだねー!」

「はっはっは、私にかかればこんなものよ!」

「……楽しいかも……」


 ソノカさんの一言にみんなが喜びをあらわにする。確かに、それぞれの自主練習の成果が見え始めていた。俺は腰を下ろし、息を吐く。


「ふー、疲れた……」

「若いのに情けないやつだな……。けどここまでいけるんなら、やっぱあれだなー」

「あれ、ってなんです?」

「オリジナル曲だよ」

「曲を作るのか!」


 ナユタが爛々と目を輝かせるが、オリジナル曲……。


「あの、俺コピーだけで作曲はしたことないんですけど……」

「ええー、マジー? 楽器やってて作曲したことないのが許されるのなんて小学生までだよねー」

「ソノカさんその言い方なぜかめっちゃ傷つくんですけど……」

「しょうがないなー、作曲の仕方は教えてやろう。詞は? 誰か書ける人いる?」


 みんなが一様に「自分はちょっと」という表情で顔を見合わせる。しかし俺は、すぐに思った。


「ナギちゃんが書いたらいいんじゃない?」

「え……えっ、私?」

「え、だって小――」


 言いかけたところで、ナギちゃんが文字通り飛んできて俺の口をふさぎ、その勢いで俺は床に背中を打ちつけた。俺のギターとナギちゃんのベースがぶつかって、がおんがおんという音がアンプから響き渡った。


「な、ナギが土佐ケンを押し倒しただと……!」

「きゃー、青春ー」

「楽器壊すなよー」


 それぞれ勝手なことを言ってるが、ナギちゃんに口となぜか鼻まで塞がれて死にそうなんだけどこれは殺しにきてるのかな?


「と、土佐くん、小説のことは秘密に……」


 俺は残った酸素をフル活用して首をがくがくと振った。ナギちゃんが安堵した様子で手を離してくれたので、肺いっぱいに空気を吸い込む。生きているって素晴らしい。


「で、書けるのか?」

「え、ええと……書けるとは思いますけど、良いものになるかどうかは……」

「別にプロレベルの歌詞を要求してるわけじゃないよ。音が乗っかれば最悪なんでもいい」


 この一言に、ナギちゃんの目が少しギラっとした気がした。


「できるだけ、頑張ってみます」

「よろしい。それじゃ土佐ケンはあとで私の部屋に来るように。個人レッスンだ」

「えっ」

「変な想像するなよエロガキ」

「失礼、私もしました」

「榊さんいたんだ……」

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