プロローグ 《災禍の思い出》
誤字脱字があるかとは思いますが、よろしくお願いします。
あの時、僕たちは選ばなければ生き残れなかった。
赤い。一面真っ赤な紅蓮の世界。
建物は燃え上がり倒壊し、近隣の建物へと炎が次々と燃え移り、数秒もしない内に辺りは火の海になっていく。
火の粉が飛び交い燃え上がる、そんな中、誰かが泣き叫び、呼ぶ声がする。
「いやあぁぁぁー。――……スさま、――う! お願いです……私を一人にしないで……。死なないで! 私も連れて行って下さい!」
目の前で泣きじゃくる小さな女の子を、知っていた。
――妹みたいな女の子。大事な、大事な可愛い妹。
一人にしてはいけない。そう思うのに、体が動かない。まるで冷たい鉛のようだ。温かく真っ赤な血が地面に、自分の体を中心に広がっていく。声も発することができず、指先一本すら動かせない体は重たく痛みすらもはや通り越し熱いと錯覚するほどに。だが、その重たさを振り切って、重たく閉じようとした瞼をうっすらと開こうとした。
視線を動かすと、十二、三歳ほどの少年が血だらけになって横たわっていた。
横たわった少年はピクリとも動かない。少女と少年の姿を見て、瞳の奥から何かが湧き上がった。これは悲しみか。あるいは悔しさなのか。――それも違う気がする。単純に思った。
――やっと、家族になれたと思ったのに……。
そう思うと、涙が溢れて、《ただ、生きたい》と強く願った。
燃え盛る中、一人の男がやってきた。男は願う少年の前にやってきて問う。
「生きたいか?」
少年は頷くことさえ出来なかったが、涙を流しながらも、その瞳には力強さがあった。
ただ《生きたい》という力強さが。
その力強さが伝わったのか、男は何かを差出し、今一度問った。
「では、選べ」と。
そして、少年は二度目の《選択》をした。