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舞台女優のトイレ事情

作者: 道角

斎藤恵はステージで崩れ落ちた。

悲鳴と罵声の中で。



限界まで120分

「この電車、踏切内の非常ボタン取り扱いの影響で停車しております」

(うんち漏れそう)

恵はいつも通り10分で行けると思い、家でトイレに行かなかった。今となれば後悔である。もう30分は止まっている。


「お待たせ致しました。まもなく発車します。」

横の女性を見ると顔面蒼白で股間に手をあてくねくねとしている。


「まもなく劇場前、

劇場まえぇ~」

(はやくトイレに行きたい!)

横の女性は白い顔が突然真っ赤になった。

恵の靴が水を吸い重くなった。


限界まであと100分

駅のトイレは電車から飛び降りた女性達で混雑している。明らかにジーンズに水の流れた跡のある人や猛烈な臭いで後ろの人に嫌がられている人。

(劇場の関係者用のトイレを使おう)


限界まで95分

がらがらのトイレに入ろうとした時である。

「斎藤、もう本番だぞ!」

監督が叫んだ。

「お、おトイレに行かして下さい。」

「あと10分で出番だ!早く衣装を着ろ!!」

「はい……。」

うっかりしていた。

電車がいつもより40分遅れたので、ギリギリの時間に着いていたのだった。


限界まで70分

恵は戦国時代の姫の役である。

「あなた、子供の為にも元気で帰ってくださいね。」

「もちろんだ。お前も元気でな。」

(お腹は元気何かじゃ無いのに……。)


ここから15分ほど出番が無い。

ようやくトイレにと思った時である。

「紗季さん。もう少しですよ。」

同僚の紗季がマネージャーと共にトイレに入ろうとしている。

「きゃっ」

紗季の悲鳴が聞こえる。

ブリュリュリュリュブチュッ

下痢特有の臭いと音が広がった。

トイレの入り口は紗季の排泄物で通れそうにない。通れたとしても1つしかない個室では紗季が泣いているだろう。



限界まで40分

ここから恵には5分以上の休憩は無く、終了までの一時間を我慢しなければならない。

もう恵の肛門には大きな塊が顔を出しそうな所まで来ている。


限界まで30分

「その仕事、私にやらしてください。」

「女には無理だ。恥ずかしい思いをするかも知れない」

「絶対にしません。成功させます。」

いつも通りのセリフが飛び、観客は食い入るように見つめている。


限界まで10分

もういつ出てもおかしくない状況である。

あと30分経てばいつでもトイレに行けるのだ。


限界まで3分

プスゥ~

もう何回すかしてきただろう。少しずつしかし確実に増えてきた重さに耐えきれるはずもなかった。


限界

「わ、わたく、しはまだ、死にま………」

ブリッ

「……せ、ん。」

ブリブリブリ

「駄目」小声ではあるが確実にそう言った。

ブゥリリリリリリリ

ブリュリュリュリュリュ

白い着物が茶色く変色し、女性の悲鳴、男性の罵声が響いた。

前の方に陣取っていた人達が帰るとそれに引っ張られるかのようにぞろぞろと人が帰り出した。

ブザーがなり、幕がしまって行くのを見ていた目が潤んできた。

いつの間にか共演者の姿はなく、暗いステージで一人、涙を流していた。

恵の為だけに漏らしてしまった電車の隣の女性と紗季さんスイマセンm(__)m

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