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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
序章〜 暖炉の火と紅茶の匂い
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9 黒炎の果て


砂煙が徐々に薄れていく。


 その中にあるひとつの影は……片膝をついて立っていた。


「……まだまだ……甘いんじゃない……?」


 左腕と右太もも、そして腹部は黒く焼け焦げ、左目からは血が流れていた。


『死に損ないが』


 ふらつきながら立ち上がるフィニス。


「魔族の魔法も……所詮はこんなもんか……」


 ゆっくりと右手で剣を持ち、剣先を魔族の胸元に見えるコアに向ける。


(……ん?)


『見え透いた挑発だ。だが……こっちもいい加減イライラしてきた。その挑発……乗ってやるよ』


 杖をかざす魔族。フィニスはゆっくりと体勢を低くし、再度狭くなった視界の中で相手のコアを凝視した。


(コアが……欠けてる?それに……なんだ?黒い霧?)


 魔族の胸元にある赤黒いコアの端が欠けており、その場所が白く濁っていた。

 さらにその欠けた部分からは黒いモヤが溢れ出ている。


(……よく分からねーけど……多分そういうことだろ!)


 魔族が構えを変えた。魔法が発動される。

 この溜めの魔法は避けられない……おそらく大規模の魔法だ。

 それにこの身体……今から飛びかかっても間に合わないだろう。

 だが……


「……こっちはそれを狙ってんだよ!」


 持っていた剣をコア目掛けて投げるフィニス。


『!!』


 発動を中断し、杖で剣を弾く魔族。


 その剣を空中で左手でキャッチし……


 そのまま相手に切り掛かる。



「……大丈夫?」


 横たわるフィニスを覗き込むニティア。その横ではジャヌスが回復魔法をフィニスにかけていた。


「やりすぎ……じゃないですかねニティアさん……」


 息も絶え絶えに答えるフィニス。それに笑いながらジャヌスも口を開いた。


「ですが、だいぶ避けられるようになっていましたね。後半はニティア、ムキになって出力上げてましたから」

「……は?」


 視線を逸らすニティア。


「ですが、貴方にとってはコレが魔法を使う相手との基本的な戦い方です。しっかりと身につけてくださいね」

「うっす……」


 回復魔法をかけ終わり、ジャヌスが2人を交互に見て話し始める。


「そして、魔族と戦うことがあったら、これは覚えておいてください。魔族は、魔女がいる以上、魔力が永遠に供給され続けます」

「ということは、魔力の枯渇は望めないってことですか?」


 ニティアが即座に反応する。


「基本的には……。ですが、短期決戦であれば別です」


 首を傾げるフィニス。


「大量の魔法や大規模の魔法を使った魔族の魔力は、そんな一瞬で回復はしません。だから」

「魔力をわざと使わせて、弱体化させるって事ですね」

「その通りです」

「でもその前にそんな大規模の魔法使われたらキツくない?」


 ジャヌスは優しく微笑んだ。


「使わせなければいいんですよ。大規模の魔法を」



(そう言えば誰かさんも言ってたしな!)


ガキーン!


(迷路は歩くだけで力を使うって)


 フィニスの剣が相手の杖で弾かれていた。


『剣を握る力も残っていない雑魚が。終わりだ……小僧』


 中断していた魔法を再開したのだろう。杖からは黒い炎が立ち上っていた。


「……お前さ。だいぶ魔力消費してるんじゃない?」


 フィニスの身体に隠れていた右手には、小さなナイフが一本。


『っ!!キサマっ!』


「終わるのはてめーだよ!!」


 そのまま右手に持ったナイフを、コアの欠けている部分に突き刺す。


ピキッ


 コアのヒビが一気に広がり……


パキン


 魔族のコアが弾けた。


『ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!!』


 魔族の身体から黒い炎が立ち上がる。


『この俺が……!こんなガキに……!』


 徐々に崩壊していく魔族の身体。

 フィニスは朦朧とする意識の中、魔族の最後を見ていた。


『ノクス様さえ……生きていれば…………』


 黒い炎がだんだん小さくなってゆく。


『白髪の……魔……め………』


 魔族が燃え尽きると共に、フィニスの意識もなくなり、その場に倒れ込んだ。

 

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