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69 精霊達の証言


『まずは前回の魔女の時の話だな。ゼフィリアの話も聞けるし』

『ふん!長生きしてるからって偉そうに!』


 頬を膨らませたゼフィリア。エラリスの肩に座りながら、相変わらずのぶっきらぼうな態度で話し始める。


『黒い魔女との戦い。あの戦いのことを、人間界はどんな感じで語り継がれてるのかしら?』


 じっとフィニス達を見つめるゼフィリア。勇者マニアのフィニスと言えど、魔女を倒していない英雄達の物語については詳しくは無い。魔道具屋で店主に聞いた話と、ヴォルガムの図書館で読んだ内容を思い出すかのように、ゆっくりと答え始めた。


「確か……先せ……魔法使いのジャヌス。剣士ヴァルク。戦士のグラム。僧侶ミレアと……精霊術師のエルシア。この5人で古城にある黒い魔女、ノクスと対峙。ヴァルクとミレアはその場で戦死して……魔女は姿を消す……。他のメンバーについても、その後は魔法使いジャヌスを除いて死亡……。一般的に魔女を倒していない冒険者の話は殆ど語り継がれることは無く、生き残った先生が残した手記がヴォルガムの図書館に残っているって感じだな……」

『そう……』


 不機嫌そうに爪を噛むゼフィリア。


『……これだから人間は……』


 普段明るいゼフィリアの見たこともない切なそうな顔……そんな彼女が大きく深呼吸をし、話を続けた。


「違ったのか?」

『いや、間違えてはいないと思うぞ』

『私が呼ばれた時には、既に魔女との戦いが始まっていたの……初めて見た魔女の印象は……』


"ただただ気持ち悪い"


『底が見えない真っ黒な魔力。読み取れない波長。その魔力を肌で感じるだけで身体が拒絶反応を起こすような感じ……』

「気持ち悪い……」


 その言葉を聞き、ニティアは胸元のペンダントをぎゅっと握りしめた。


『べ、別にあんたのことじゃないわよ!』

『ボク達は基本的に自分に合う魔力以外の人間は気持ち悪く感じるんだ。だから気にするなニティア』


 そんなニティアの様子を見ていたリヴァレーが、ニティアに視線を移した。


「うん、わかってる。続けて」

『と、とりあえず、呼ばれてすぐに私も戦闘に加わったの。長い戦闘の末、エルシアの精霊術とあのメガネの女。ジャヌスの魔法で魔女の動きを止めて……ヴァルクが魔女の心臓を間違いなく貫いた……』

『もっと早くに気付けていれば良かったんだけどな……』


 ゼフィリアとリヴァレーの顔が俯いていく。


「何かあったんですか?」


 胸元で撫でているリヴァレーに問いかけるアルテア。


『あぁ……それが原因でヴァルクが死んだんだよ』

「え?」


 聞いていた全員が驚きの表情に変わっていく。


『みんな油断しちゃったの。胸を貫かれて、力無く項垂れる魔女を見て……魔女を倒したって。……でも魔女は死んでいなかった……』

『急に不敵に笑ったと思いきや、次の瞬間にはヴァルクの身体が吹き飛んでいたんだ』

「……!!」

『魔法や精霊の力でつけた傷はすぐには回復しないのに、物理攻撃……剣でつけた傷は即座に回復していたのよ……』

「星見の丘の時と同じだ……」


 完全に魔女の身体を貫いたのに……全くダメージを受けている様子が無かった白髪の魔女。つい先日の丘での出来事を思い出すフィニス。


『その後すぐにエルシアから呼び出しの強制解除をさせられちゃったから、細かいことは分からないけど……』

「強制解除?」

『私たちを呼び出している間って、常に契約者は魔力を消費してるのよ。元からのその場所に精霊がいたとかなら別だけどね』

『ボクもすぐにエルシアから呼び出しの強制解除させらたから分からないけど、少なくともボクが経験した魔女戦。紅の魔女の時と同じ感じだな。物理よりも魔法の方がダメージを受けている印象。もちろん、魔女の魔力が高いから、生半可な魔法じゃダメージすら与えられないと思うけどな』

「紅の……魔女……」


 話を聞いていたカエデが小さく呟く。


「……ふむ。つまり、魔女に物理攻撃は効かず、魔法でしかダメージ与えられないということか……それは中々に厳しいのぉ……」

『使ってくる魔法は、多分魔女によって異なるからなんとも言えないな。紅の魔女の時は炎系の魔法が多かったし、黒い魔女の時は魔力を飛ばしたり、相手を蝕むような魔法が多かった気がする』

「まぁ……それでもかつての英雄達は魔女を倒したわけだし、物理じゃ無くて魔法じゃないと倒せないことが分かっただけでもありがたい情報だな。俺の槍で発動させた魔法効果はどうなんだろう……」


 手に持った槍をチラリと見るルシオ。


「少なくとも、俺の剣に宿った"振動"の効果は無かったな」

『振動?』

「あぁ。剣の魔石に込めた魔法効果の一つで、超振動させて切れ味増幅を狙った魔法なんだ」


 それを聞いてため息をつくゼフィリア。


『確かに振動自体は魔法で起こってるかもしれないけど……それはあくまで"振動する剣"による攻撃でしょ?その剣自体に強い魔力が篭っているわけじゃないからそれじゃダメージを与えられなくて当然よ』

「魔法攻撃と言っても、魔力で直接攻撃するのと、何かしらの現象……例えば炎や水を精製してそれで攻撃するのでは、前者の方が魔法ダメージは大きいからね。もちろん後者が魔法ダメージが無いってわけでは無いけど、前者に比べて魔法のダメージとしては小さくなるわ。……もちろん、普段の戦闘でそんなこと気にするような状況なんてそうそう無いけどね……」

『まぁ……私たちが話せるのはここまでかな。私たちと入れ替わりで呼び出された精霊達なら、また別の話が聞けるかもしれないけど』

「そうなると……魔女の情報と同様、精霊の情報も集めないといけませんね」


 そう言いながらリヴァレーを撫でながら見つめるアルテア。


『お互いに干渉をしないのが精霊界の掟だからな。申し訳ないけど頑張って探してくれ』

「わかっていますよ」


 リヴァレーを優しく地面に置くアルテア。身体をブルブルと振るわせた後……


『それじゃ、また何かあったら呼んでくれ』


 そう言い残し、リヴァレーは姿を消してしまった。


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