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54 小さな嵐


 魔物を退治し、一帯に魔物の気配がないことを確認して家の中に戻ってきたフィニス達。

 中からはニティアとゼフィリアの声が響いていた。


『だから!あんたがいなくても私とエレノアでなんとかなったわよ!』

「地中のきのこの気配も感じ取れない偉大なる妖精様が何か言ってるわね」

『ムキーーーー!!』


 玄関で立ちすくむ3人。


「何やってんだお前ら……」

「こっちも無事だったようですね」


 ボソッと呟くフィニスに、そこまで心配をしていなかったまでも、家の中も無事だったことに安堵するアルテア。

 フィニス達が戻ってきたことに気付いたゼフィリアは、フィニスの頭の上に飛び乗り、わざとらしい声をフィニスへ投げかける。


『フィニス〜!この気持ち悪いバカ魔法使いが私のことをいじめるんだよ〜!』


 その声を聞いてムッとした顔でフィニスの正面に立つニティア。


「は?!あんたが生意気なことばっかり言うからでしょ!」


 上からと正面から。キーキー聞こえる喚き声に頭が痛くなってきたフィニスが両手で両耳を塞いぐ。

 アオがそんなゼフィリアとニティアのやりとりを見ながら、2人を交互に見て笑顔で口を開いた。


「なんかゼフィリアとニティアおねぇちゃんって似てるよね!」

「『似てないわよ!!』」


 重なる2人の声に、森の中には大きな笑い声が響いていた。



翌朝


「泊めていただいてありがとうございました。それと……先ほど改めて家の周りに結界を張ったのですが……エレノアさん、どうですか?」

「ありがとうございます。だいぶ楽になりました」


 優しく笑うエレノア。そんなエレノアを見て、ルシオが一枚の手紙を差し出した。


「ここが危ないなと感じたら王都ヴォルガムにいるギルドマスター。あ、いや今は城の参謀か?まぁとにかく、俺の姉のヴェスパを尋ねてみてくれ」

「……これは?」

「もしエレノアさん達がこれを持って姉を訪ねた時は、身元の安全と生活の保証をお願いするように書いてある。姉は名前も通っているはずだから、門にいる兵にでも名前を言えばすぐに案内してくれるはずだから」


 手紙を受け取り、ベッドの上で大きく頭を下げるエレノア。


「ありがとうございます……私だけならまだしも……この子の事もあります。動けるようになりましたらルシオさんのお姉さんを訪ねてみようかと思います」

「お城に行けるの?いきたい!」

「エレノアさんが元気になったら、是非いってみてくださいね」


 アオと頭の上にいたゼフィリアがふわりとみんなの頭上へ上がる。


『さて、私も長居しすぎちゃった。そろそろ帰るわね』


 そう言い、フィニスの目の前に飛んでくると……


『今度はあの魔法使いがいないところで、いいことしましょ♡』

「何訳のわかんないこと言ってんのよ!早く帰りなさいよ!」

『はいはい』


チュッ


 ゼフィリアはニティアに視線を一度合わせ、ニヤリと笑った後、フィニスのおでこにキスした。


「んなっ!!!」

「お?」

『あはは〜まったね〜!』


 そのまま空高く上昇し、ゼフィリアは小さな光と共に消え去ってしまった。


「はぁ!!?!?」


 口をパクパクさせながらゼフィリアが消えた空を見つめるニティア。


「本当に……小さな嵐みたいな方でしたね」

「まさに風の精霊だしな……」

「完全にとばっちりなんだが……」


 エレノア達の家を出て、再び森を歩く4人。

 2日間の間、フィニスはニティアから無視され続けることになった。

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