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世界を救い、そして滅ぼした魔女ニティア  作者: 月白
第2章〜 ギルドと白い影
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50 旅立ちの依頼


 王都へ戻ってきた全員が絶句していた。


 王都の門をくぐると、所々家が倒壊。奥に見える城に関しては、至る所が崩れ落ちていた。


「何があったんだ……」


 戻ってきた全員が同じことを思っていただろう。少し遅れ、城壁の中へ入ってきたヴェスパ達もこの光景を見て唖然とする。


「おい!何があった!」


 咄嗟に動くヴェスパ。


「白い魔族達が……城を……」

「!?」


 その言葉を聞いたヴェスパ。少し考えた後、フィニス達の方に身体を向けた。


「フィニスとニティア。お前ら王や兵士達と面識あるだろ。城に行って様子を見て来い!」

「お、おう!」


 フィニスが咄嗟に返事をする。


「わ、わかった!」


 一眠りし、少し魔力が回復したニティアも同様に手を挙げて応えた。


「アルテア!お前も一緒に行け!何かあった時の治療を頼む!」

「は、はい!」

「ルシオ、着いていって情報を整理して来い」

「あいよ」

「他に動ける奴は散って怪我人の治療や情報を集めて来い!急げ!」


 動ける他のメンバーに指示を出し、動き始める城下ギルドのメンバー達。

 フィニス達もそのテキパキした動きに釣られ、足早にその場を離れていった。



「ニティア様!フィニス様!」


 城の入り口に辿り着いたフィニス達に、1人の兵士が話しかけてきた。


「図書館の兵士さん!」


 ニティアがその兵士に気付き声を上げると、4人が立ち止まる。


「一体どうしたんだ?!」


 フィニスが駆け寄ってきた兵士に尋ねる。兵士もこの状況に混乱しているのであろう、アルテアに落ち着くように諭されながらも、ゆっくりと口を開く。


「皆が戦場へ向かい、城の警備が薄くなったところに……白い魔族が2体……」

「2体も!?」


 驚くルシオ。


「直接城を狙っていたからなのか……城下町の方にはあまり興味を示さず、街の方には思いの外被害は出ていないという報告を受けていますが……それでもやはり国民にも被害は出ております……」

「それに、警備が手薄とはいえ……王様直下の王国騎士や王国魔導士がいたのにも関わらず……白い双剣の魔族一体に壊滅させられたと……」

「白い双剣……あいつか……」


 フィニスが小さく呟いた。


 兵士には聞こえなかったのか、続けて話を進めていく。


「そしてそのまま、王族や貴族……そして……国王も……」

「そんな……王様が……」


 口を手で覆い、大きく目を見開くアルテア。兵士も俯き、握り拳に力が入っている。


「城にいた王族達はもう……」


 そう言い、ゆっくりと歩き始める兵士。その後ろをついていくルシオとアルテアとニティア。その場で所々崩れている城を見上げるフィニスに気づいたニティアが、フィニスに声をかける。


「どうしたの?」

「……いや……なんでもない」


 そう呟いたあと、みんなの後に続いて歩き始めていった。



 兵士の言っていた通り、城下町に関しては、建物などの損壊が一部ありはしたが、人的被害はそれほど出ていなかった。


 そして何よりも驚いたことが、王の代わりに臨時の代表となった人物。


 貴族の子供ではないと言う理由で王族に迫害され、城の外で街の人たちと共に働いていた王の末子。

 この末子が無事であったため、今は国の臨時の代表として玉座に着くことになったのだが……国民達との距離も近く、現場のことも知っている。臨時とはいえ、国代表にいきなり選ばれたにも関わらず、城の内外問わず皆に慕われていた。


 復興が着々と進んでいく中、ヴェスパがまとめた情報を報告するために、みんなをギルドに集めた。


「皆、お疲れ様」


 そう言って全員を座らせるヴェスパ。


「まずはここまでの経緯だ」


 座ったことを確認したヴェスパが、ゆっくりと話し始めた。


「まず、私たちが戦場に向かい、この王都を出て間も無く、2体の白い魔族が上空に出現したらしい。その内の一体は、おそらくお前らが遺跡で対峙した双剣の魔族だろうな」

「………」


 黙り込む3人と、少しだけ首を傾げるアルテア。


「しかし、魔族達は出現した時だけ、街への攻撃をしたらしいが、すぐにその双剣の魔族に止められて城へ向かったらしい……」

「ん?止める?」

「詳しくは分からんが、上空で攻撃をしていた魔族に、その双剣の魔族が剣を向けたりしていたそうだ。その後、街へ攻撃をしていた魔族が攻撃を止め、城へ向かったと……」

「一体何を考えていたのでしょう……」

「そして、あとは俺たちが聞いた通り、城の中で王族や国王直下の騎士や魔導士、そして貴族達が殺され、魔族達はいなくなったと……」


 話した後に大きなため息をするルシオ。その言葉に頷きながらも、ヴェスパが話を続けた。


「だが、少し気になることがあってな」

「ん?気になること?」


 フィニスが伏せていた視線をヴェスパに移す。


「臨時とはいえ、今の王位についた末子。あいつは優秀だ。でも変に思わなかったか?」

「何か変なこと……強いて言うなら、臨時とはいえ王位にいきなり着いたことに反発する人がいなかったとか……?」

「そうだ。誰もいないんだよ」


 そのヴェスパの言葉に全然ピンと来ず、目が点になっているフィニス。


「王位っていうのは予め順番がついている者なんだ。王の長男が1位。次男が2位みたいにな。そこに、その王位継承権を持った人物の思想に賛同する貴族がその後ろ盾になり、派閥が生まれる」

「それがどうかしたのか?」

「普通ならば、誰かが王位に着く。もしくは着こうとするとなると、その思想を良しとしない貴族達が反発したり、裏で手を引いて降ろそうとしたりするくらいドロドロなんだよ。王族達っていうのは。でもそれが全くと言っていいほど無いんだ」

「別にそれはいいことなんじゃ無いの?スムーズにことが進むわけだし」


 ニティアが首を傾げながらヴェスパに言う。


「ああ。いいことなんだ。だからおかしいんだよ。今回殺された貴族達のほとんどが、死んだ王……または、それに近い激しい思想を持った王族の派閥だった貴族達なんだよ。穏便派や戦争を好まない貴族達への被害は少なかったんだ」

「だから生き残ってる貴族達も今の王位についてる末子の思想に反発しないで応援してるわけか」

「その通りだ」


 状況が少しずつ飲み込めてきたフィニス。


「つまり、魔族達がこの国にとって都合の悪いトップ層を排除したってことか……?」


 そのフィニスの言葉に、頷くヴェスパ。


「あの戦場でもそうだったんだ。魔女にやられたのは前線で戦おうとしていた兵達。もしくは、あの戦争における軍師や大隊長。王に近い近衛兵……」

「……」

「あんな力があったんだ。おそらく全滅させようと思えば出来たはず。それにも関わらず、半分以上を殺さないでいたんだ。もちろん魔女に斬りかかったフィニス。お前も含めてな」

「……」


 フィニスの顔を見るニティア。


「もちろん、二つの国の戦力を一瞬で壊滅させた魔女だ。世界中に白髪の魔女の存在が広まるだろう」

「そりゃそうだ」


 ルシオがため息混じりに苦笑いをする。

 しばらく沈黙が続いた後、フィニスがゆっくりと口を開いた。


「どんな結果であっても、村を……国を……人々を襲ったあいつをこのままにしてはおけない」

「フィニス……」


 フィニスを見つめるニティア。


「今の俺の力じゃ全然無理だって分かってる。でもこのまま放っては置けない。俺みたいに……故郷を滅ぼされる人をこれ以上増やさせたくない」


 その話を聞いてふっと笑うヴェスパ


「図書館でもこれ以上の有益な情報が得られるわけでも無さそうだし。むしろ白い魔女が公式に認められたのならば、これから新しく手に入る情報の方が多そうだし。だからこんな状況ですまないがヴェスパ。俺は……」


バン!


 そんなフィニスの言葉を遮り、一枚の紙をテーブルに叩きつけるヴェスパ


「国からの依頼だ。白い魔女を撃退した戦士フィニスと大魔導士ニティア」

「は?」

「え?」

「戦場でただ1人、恐怖で全員が動けない中、魔女に斬りかかったフィニス。そして、魔女に匹敵する魔法で魔女に傷を付けたニティア。その結果、魔女はその場から撤退した……。あれだけの人にその姿を見られてたんだから、そう言う噂が流れても仕方がないわな(笑)」


 ルシオが笑う。


「そんな2人に、白い魔女の調査依頼だ。国からの通行証も出ている。これがあれば……まぁ他国でも不当な扱いはされることは無いだろう」

「ヴェスパさん……フィニスをその気にさせる為に、わざと謎めかしくなるように話しました?」


 小さく笑いながら、アルテアがヴェスパに尋ねる


「さぁ、何のことかな?そう言うアルテア。お前も……もちろんお前が良ければだが、2人に付いて行って欲しい」

「私も?!」

「それじゃ〜俺もアルテアちゃんを守る為に行かなきゃな!!」

「それはもう確定事項だ。お前は強制的に行け。って言うか出て行け」

「え?何それ酷くない?それに……」


 焦った様子でヴェスパを見るルシオ。


「あ?私の事を心配してんのか?」


 そんな様子にヴェスパは大きく笑った。


「私も私で戦場での指揮や動きが評価されたんだろうな。国に参謀として働いてくれってスカウトされてんだよ。どのみちこの状況じゃ、ギルドの仕事だって国の復興が優先になるだろうからな」

「すごっ」

「だから、このギルドはしばらく休止になる。ここにお前らがいても宝の持ち腐れって事だ。各々がやるべき事をやった方がいいだろ」


 そう言って笑うヴェスパ。それに釣られ、全員がそれぞれ視線を合わせて小さく笑った。


 フィニス、ルシオ、アルテア、そしてニティア。


 世界を救う4人の旅立ちが……


 ここから始まった。

お読みいただきありがとうございます!


ここまでで、第二章の王都篇が終了となります!


話のストック数が無くなってきてしまったため、投稿が毎日ではなく、数日おきに1話の投稿へと、一時的にペースを落とさせていただきます!


代わりに活動報告にて、せかニティの設定を投稿していきますので、暫くそちらをお読みいただいてお待ちくださればと思います♡


次回からはいよいよ、白髪の魔女の謎に迫る冒険篇です。ぜひ楽しみにしていてくださいね!

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