第36話 禁忌術式【共鳴する墓標】起動
義手の拘束ボルトが弾け飛ぶ。
高熱の蒸気。黒い蔓が空間を侵食し、陽光を歪め、煤を黒い稲妻へと変える。
「……一日は、持たせるぞ」
血の滲むような声。
「あとは……頼んだぞ、皆」
異形の義手を地面に突き立てる。
「——我が身を杭とし、世界を繋ぎ止める! 【共鳴する墓標】、起動ッ!!」
雷鳴となって轟く声。
「退けッ、偽りの神の光よ!!」
漆黒の衝撃波が大地を駆けた。
「聖櫃」の光の奔流を正面から飲み込み、「漆黒の金剛石」のような絶対障壁へと作り変える。
「な、なんだ、あの闇は……!?」
聖騎士たちが叫ぶ。突撃が止まる。
大陸全土の呪いが若き王という「杭」に収束し、魔導兵器を無効化する「静寂の領域」が生まれたのだ。
◇ ◇ ◇
強烈な反動で、鼻や耳から血が溢れる。
意識がホワイトアウトする寸前、アラリックの腕に倒れ込む。
義手が沈黙し、急速に体温を奪っていく。
「……陛下ッ!!」
アラリックの叫び。
だが若き王は、薄れゆく意識で確かに見た。
ベリサリウスが大斧を振り上げ、先陣を切る姿。
ヴォルカスが兵士たちを鼓舞し、導く姿。
そして——。
義肢を軋ませながら、魔導騎士レオンが突き進む姿。
「聖歌」を敵を滅ぼす「破壊の詠唱」へと変えて。
カイルは南の海を見据え、ヴァインは民衆の中へ。
リオラとエリンは、若き王の守護者となった。
深い、終わりのない眠りへ。
◇ ◇ ◇
レムリア史上最も長く、最も熱い一日の始まり。
若き王が眠る間、側近たちは鬼神のごとく戦った。
アラリックは剣を振るい続ける。
「陛下は必ず目覚める! それまで一歩も下がらん! 陛下の背中を守り抜け!」
ベリサリウスは大斧で粉砕する。
「俺の人生で最も楽しい戦いだ! 冥土の土産に、聖騎士の首をもらっていくぞ!」
ヴォルカスは鉄槌のような突撃を繰り返す。
「我らは公王の千本腕! 一本たりとも折れはせん!」
レオンは蒼い稲妻となり、メフィストは狂気じみた笑いで弾丸を射出する。
カイルは伝書鳩を飛ばし、ヴァインは民衆に希望を語り続ける。
「我らの王は、大陸すべての闇を背負って戦っておられる! 我らも戦うのだ!」
民衆が立ち上がる。老人も子供も。
石を運び、矢を作り、食糧を運ぶ。
リオラとエリンは暗殺者を葬り去る。
「陛下……必ず目覚めてください。この国は、あなたを待っています」
◇ ◇ ◇
永遠とも思える二十四時間が過ぎる。
レムリア軍は限界を超え、教皇国の「聖戦軍」も消耗していた。
「静寂の領域」が聖櫃の力を削いでいたのだ。
そして——。
南の水平線から、重厚な角笛の音。
「援軍だ! 援軍が来たぞ!!」
カイルの叫び。
自由都市連合の「傭兵艦隊」と「最新鋭の火薬兵器」が到着した。
ドォン! ドォン! ドォン!!
大砲が火を噴く。形勢逆転。
聖なる加護を失い、物理火力の前に無防備となった聖戦軍は、撤退の鐘を鳴らした。
地を揺るがす歓声。
「勝った……! 我らは勝ったぞ!!」
アラリックは血まみれの剣を掲げた。
泥だらけの頬を涙が伝う。
「陛下……我らは、守り抜きました。……やり遂げましたぞ」
声は震え、誇りに満ちていた。
黒煙の晴れ間から、朝日が差し込み始めていた。
お読みいただきありがとうございます!
もし「面白そう!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、
広告の下にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆(投稿)の励みになります!
ブックマークもぜひポチッとお願いします。




